1話
「「きゃー!!」」
今日もまた、女性社員達の熱い視線を集めている男が居る。
私と同期の超エリート社員、南野楓。彼だけいつも大きな仕事を任されるのに…私なんて誰にでも出来る簡単な仕事しかやらせてくれない。
お茶出したりコピーを頼まれたり…
女子達も毎日飽きもせずキャーキャー騒いじゃってさ…あんな眼鏡野郎の一体何処がいいのよ…
「あ…」
お茶を煎れながら南野楓を睨み付けていたら、視線がバチッと重なってしまう。
最悪…あんな奴と目が合うなんて…今日は朝から気分悪くなりそう。
「はい…どうぞ」
滅茶苦茶不服に思いながらも、南野楓におずおずとお茶を差し出す。
仕事だから仕方なくやってるだけだから!本当は嫌だけど…他の社員の目もあるし平等にお茶配らなきゃ…
「ありがとう、結城さん」
「別に…仕事だから」
「……どうして俺にだけ冷たいの?」
「え…」
「俺、君に何かした?俺と目が合うと、いつも不機嫌そうに視線逸らすよね。他の人には笑いかけるのに」
「そんな事ない!あんた、自意識過剰なんじゃないの!」
感情的になっていた私は此処が会社の中だという事も忘れ、つい大きな声で叫んでしまった。
最悪…
最悪、最悪…!
南野楓なんて大嫌い!!
「感じ悪〜、あの態度何なのよ。南野さんが可哀想!」
「ちょっと可愛いからって、調子乗ってんじゃない?部長に色目使って、今の楽な仕事やらせてもらってるって噂だし〜」
「うわ〜、実力で大きな仕事任されてる南野さんとは天と地の差ね!」
…ほらね。彼の取り巻き達が私を見てコソコソ悪口を言ってる。いつもいつも、彼だけ味方されるんだ。
同じ女からしてみたら…南野楓はカッコ良くて仕事も出来て…おまけに優しくてさ…理想の王子様なんだろうな。
あ…別に今のは彼を褒めた訳じゃないから!これは一般的な意見だけで…私はちっともそんな事思ってない。