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第一話 セクシャライザー、大地に勃つ! 1

 キミは、「ヒーロー」を知っているだろうか?




 まあ、知らないということはないだろう。

 五人五色の戦隊だとか、バイクに乗る改造人間だとか、はたまた光の巨人だとか。


 おそらく、なにがしかの形で一度は目にしたことがあるはずだ。



 ヒーローも、そしてその変身者も。



 ヒーローってのは大体、怪力だったり超能力だったり、空を飛んだり炎を吐いたり、俗に言うスーパーパワー的なものを持っている。


 すごいのである。


 つおいのである。



 でも、それでおしまいワーイハッピーな訳がない。

 皆さんご存知の通り、そりゃもちろん代償とかもあるわけで。


 それがまだ日常生活に不便だーとか、パワーを使いすぎておなか減ったーだとかならまだ良い。

 力の反動で死ぬかもーとか代償に自分の記憶がーとか、大概のやつがかなり洒落にならんのだ。



 それにだ。





「大いなる力には大いなる責任がホニャララ」ってやつだ。伴っちゃうらしい。





 力のない市民だとか大切な人だとか世界だとかを守る義務ってのが発生するんだと。オマケにそれに対しての苦悩だか恐怖だかのドラマまでついてきちゃうんですって奥さん、お買い得ですよ!


 今ならおまけに、悪の組織やらマスコミやらに正体を探られたり貶められたりするリスクまでついてきちゃう!




 そんなヒーローに、なりたいか?

 俺はなりたくない。断じて。




 そもそも、漫画とかアニメでのヒーローになるきっかけも大概が感情論とかその場のノリ的なアレなのだ。

 こう、できらぁ!みたいな。


 そんな感じでやった事って大体途中で投げ出すか惰性でやるだけで、ノリでヒーローやってる奴なんて悪の結社とかに対しても失礼である。


 目的を持ってる奴をノリで邪魔する奴とかクソ極まりない。



 つまり、ヒーローになるようなやつなんてただのバカかお人よしか、もしくはその両方に決まっているのである。


 だから俺はヒーローなんかにはなってたまるもんか。絶対に。









 そう考えていた。




 その時までは。










 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ある晴れた日の昼下がり。


 平均的男子学生の鑑である俺こと下根佑(しもねたすく)は、今日も日課であるエロ本探し(フィールドワーク)に精を出していた。


「そろそろここも潮時か……」

 冷たい河川敷の風に吹かれ、ぽつりと呟く。

 最近、ここの収穫量は目に見えて減っている。

 理由は明白だ。

 若者の紙媒体離れである。


 元来、アダルティーな書籍というものは、非常に取り扱いが難しいものである。

 それがなぜかはこれを読んでいる男子諸君ならわかってもらえるであろう。

 君がもし、女の子だったのならば……まあ、わかってくれ。お願いします。


 というか、女の子だった場合は、素直に興奮する。

 こう、なんか、女の子にエッチな話とかするっていうシチュエーションは素晴らしいものだと思うんだ。

 別に普段はなんともおもっていないクラスの女子が友達とちょっとエッチな話をしてたりすると、俄然その子に興味が沸いてくるというか、逆に女の子からエッチな話をされたりするとドギマギするけどどこまでさらけ出して大丈夫なんだろうかとかこうなんというかその……





 エッチな女の子って、いいよね!





 ……失礼、話を戻そう。

 つまり、エロ本というものは購入、もしくは拾得した際に知人に遭遇するというリスクがあり、それを回避しても今度は家族に見つかってしまうという大きな危険性が存在する。

 特に、隠しておいた秘蔵のお宝が、自分の部屋の机の上にそっと置かれていたときのあのやるせない絶望感は、言い表せないほどのものである。


 何であんなに親ってエロ本見つけるのうまいんだろうな。

 ほんと、マジで。


 それに比べ、データというものは素晴らしいものだ。

 今や、インターネッツの発展により、何のリスクもなく簡単に手に入れることができ、なおかつ無償で様々なエロスに触れられるのだから。

 技術の進歩というものは本当にすごい。

 つまり、ニトログリセリン並に取り扱いが難しい紙媒体なんてものはナンセンス、これからはデータの時代だ。エロ本なんてのは廃れ行く文化なんだよ!



 …否、断じて否である。

 そんなわけがあるかバッキャロウめ!

 紙には紙の良さってもんがあんだろうがよ!

 たしかに、エロ本は手に入れにくいし管理だって大変かもしれない。

 だからこそ、大切に大切に、我が子の如く愛していくもんじゃあないのか?


 手軽に手に入れられる、それも決して悪いことじゃない。

 ただ、苦労して手に入れた宝にこそ価値がある。

 価値がある宝だからこそ管理にも使用にも手間がかかる。

 その手間だって無ければないで味気ないものだ。

 親の目から隠れながらこっそりとムフフなことをするスリル、背徳感。

 それはなによりも強烈なスパイスなんだ。


 データを否定するわけじゃない。

 ただ、紙には紙の良さがある。

 それを知る人が増えれば、世界はもっと平和になるはずさ。








 ラブ&ピース。

 エロは世界を救う。








「寒っ!」


 いかんいかん、行き過ぎた妄想がだいぶトリップしていたようだ。

 そんなことを考えていたって、もうあの河川敷は戻ってこないのだから。


「ここも、昔は豊かな台地だったんだ……」


 俺の独り言は、冷たく、少し湿った風に乗り、寂しげに消え去った。

 始まりがあれば、終わりがある。

 だが、終わらない終わりなんてものはない。

 この場所も、いつかまた少年たちのオアシスとして繁栄することだろう。


「またな」


 俺の、感謝と労い、そして尊敬の意を持った言葉に、河川敷の水面がぽちゃん、と返事をしてくれたような気がした。


 名残惜しいが、いつまでも哀しみを引きずってはいられない。

 皆、少年のままではいられないのだから。


 前を向いて歩いていこう。


 俺は、心の涙を拭き、夢への一歩を踏み出す。









「さあ、次の狩場だ!」









 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 路地裏というものはどうしてこうもエロ本が捨てられているものだろうか。




 一説によると、人目のあるところでは捨てづらいからだとか、実は路地裏にはエロ本の神がいて、それに対するお供えだとか、はたまた邪神降臨の儀式だと言われていたりする。


 個人的にはエロ本の神説を推したいところである。


 なぜかって?だってエロ本の神とか絶対エロい女の人に決まっているからだ。

 エロ本を贄に呼び出される邪神とかもド変態極まりないド痴女であろう。

 断じてエロ本好きのおっさんなどではない。

 おっさんの方が可能性が高くとも俺は夢に賭ける。

 それが漢ってもんだ。




 話が逸れに逸れた。

 どうにも俺は話を逸脱させる才能があったらしい。

 そんなものあったって嬉しくもなんともないが。

 そんなものより透視能力とか透明化能力とか時間停止納涼とかが欲しい。

 理由は言わずもがな。

 非常に夢のある話であるし、実際にそのような能力はあるかもしれないのが素晴らしい。

 だって何してもバレないんだからいるかもしれないんだもん。

 聞いたところによるとアダルティなビデオに登場するそれらの能力使いの九割は偽物らしいが。

 犬は時間停止に強いんだって。


 とか詮もないことを考えながら、完全に効率化されたいつものルートを辿る。

 河川敷は不作だったり、あってもズダボロで読めないものだったりすることが多いものの、極稀にものすごい品がドロップすることがある。アーティファクト級の奴が。

 それに対してこの路地裏は、安定した供給を望めるフィールドである。だが、その分ありきたりな品が多く、またダブりやすい。通好みのマニアックな品などはかなり望み薄なのである。

 場所によって収穫できるものが違い、季節によって収穫量が変動したりとかなり大変ではあるが、そこがフィールドワーク(エロ本探し)の楽しいところでもあるのだ。

 是非、男子諸君にはこの楽しさを知ってもらいたい。



 その時。






 ふ、と。



 違和感。





 気づいたそれは、俺の首筋にゾクゾクと突き刺さった。







 見当たらないのだ。






 …一冊も。





 まさか、そんなことはと俺の頭の中にエコーのように響き渡る。



 様々な可能性がシナプスを駆け巡る。




 新たな狩人(ハンター)の襲来。



 紙媒体の根絶。



 人類の滅亡。







 違和感の正体は、そのどれでもなかった。






 でも、こんなこと、予想できる筈がない。










 燃え盛る炎のようなマント。







 まるで正義の権化の様なマスク。







 そして、血に染まった様な、いや、滴るほどの紅い血に染まったスーツ。













 ヒーローが、ぶっ倒れていたのだ。






のんびり、ゆったり、まった〜りやっていきます。

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