ロスカットさんって血とか通ってなさそう 株式天海
文章書くのは好きだよ!
黒髪の美女が水面を歩く。
ふくよかさとは縁遠いだろう美女ではあるが、沈むことも無いようだ。裸足を濡らすこともない。水は誰かの資本であり、彼女には何の権利も無い。触れているように見えることはあっても、彼女と水の関係は果てしなく遠い。彼女がどう触れても、水面に波紋は現れない。長い髪が水面に触れても、例え水中に入ったとしても、嵩も波も現れない。例え水面を蹴っても、水は空中を移動して再び海に帰るだけである。
海。どこまでも澄んだ海。生き物の気配は無い。波の無いどこまでも平坦に続く海。深みは見えない。どこまでもどこまでも暗く、その海はどこまでもどこまでも澄んだ、暗黒の海であった。
空。高く、白い空。まるで全てが雲の様だ。どこまでもどこまでも続く空。透明で真っ白な空。高さに果ては無く。果ての見えないほど厚い空。鳥もなく、風もない。望めば触れられるが、手を伸ばしても果てしなく届かない空。
何よりも暗くどこまでも澄んだ海と、何よりも明るくどこまでも澄んだ空。
波も風も無い。動きの死んだ澄んだ世界。
海から水を掬い取る。掌の上に暗さを失った水は、ただただ透明で静謐な存在だ。しばらく見つめていると透り抜けて帰っていった。
ふぅ、と感嘆のため息が漏れる。
動きのないこの空白の時間。最高だ。平坦な海と平坦な空。
水が水を求める世界。水が水を求めるからこの世界の海は何処までも深く、空は何処までも高くなった。それは素敵なことだ。とてもとても素敵なことだ。
いつか世界が抱えきれないほどの水が溢れるとしても。それもとても素敵なこと。
水の世界を讃美していると定刻近づいて来たようだ。ふと空を仰ぎ見ると純白の大小様々な鍾乳石が空から垂れ下がっている。
呼応するように、海からも大小様々な漆黒の槍が競り上がってきた。
世界に風と波が帰ってきた。
昨日の、正確には彼らの昨日と私の昨日は違うかもしれないが、その続きが始まるのだ。静止していた時間にも影響されて、槍と鍾乳石が伸びてくる。
水たちはその意思によって、正確には所有者である人々の心理によるのだが、居場所を求めて動き回る。畝る。海の嵩がそこここで上下し、波を伴わない揺れを作り出す。
昨日の存在しない槍が競りあがり、果てなく高い対なる鍾乳石が空の彼方に見える。昨日がないことを好む水達が大挙してやってくる。嵩が上がり、嵩が上がったことに気づいた水達がさらに嵩を上げる。
流れがなければ波は生じない、けれど、大挙しすぎればやはり波も風も生じないのだ。分かっていても止まらない。
今日も狂気が渦巻き始めた。彼女自身も狂気を感じて、定刻が来たことを知る。
ドッっと槍から、もしくは鍾乳石から水が溢れ、まるで磁石に引き寄せられるかのように向かい合いぶつかり合って世界に波動を作る。
空から雪崩落ちる水と海から競り上がる水。
上下対称の水の竜巻が数十、数百と生まれた。
先刻までの死んだ世界とはうって変って、竜巻は稲光に水飛沫、突風を伴った轟音まで撒き散らす。死んだ世界は終わり、本来あるべき姿が現れたのだ。
今日の戦が始まった。
死んだ世界では終われなかった死者達に会いに行こう。
いつもの赤黒刺突剣を持って波紋に向かう。
今日はまだ、始まったばかりだ。
小説書くのは1日2時間まで!
書きたい登場人物まで全然たどり着かなかったどころか、荒野にもたどり着かなかったよ!






