上司と部下、二人の関係
「渋谷さん!なんでこんなこともできないんですか!」
「これはシンプルにすいません」
僕は早朝から年下の女上司に怒られていた。屈辱感は全くない。なぜなら、
「渋谷さんも28なんだから小学生の漢字くらい間違えずに書いてください!」
怒られている内容が幼稚すぎるためだ。
なんだか、一周まわって興奮してきたな。年下の上司に自分の無学さを罵られて。新たな性癖を発見したかもしれない。自己成長!
僕が性的な感情になってることも気づかずに、女上司・目黒は怒り続ける。
「これは氷!木はこう書くんです!」
と言いながら女上司・目黒はボールペンで大きく木を書く。何回も、何回も書く。あまりに書きすぎて、紙が真っ黒になってしまった。
そんな僕たちの元に社長・恵比寿がやってきて、
「なになに、なんだこのカオスは」
と言いながら僕たちに視線を合わせた。
「僕が些細なミスをして怒られてただけだよ」
と僕が言った途端、女上司・目黒は僕を睨みつけて、
「些細ってなんですか!こんなの、社会人としてありえないですよ!信じられない!」
これは100:0でこっちが悪いな……。なんか発狂させちゃったのも申し訳ないし。怒られている内容も完全にこっちが悪いし。
と僕は反省した表情をする。僕は昔から、反省した表情をするのが得意だ。なぜだか分からないが、昔から怒られてばっかりだった。親に怒られ、教師に怒られ、全く話したこともない道ですれ違った人にも怒られた。
怒られる体質なのかもしれない。
低血圧・低体温・高怒られ。
語呂が悪すぎる。そもそも僕は低血圧じゃない。朝はスッキリ起きるし、しっかり朝ごはんも作る。そしてキッチリ遅刻する。
社会人としての能力が足りない!
とりあえず、この場合は素直に謝罪するのが一番だ。
僕はプリプリと怒っている女上司・目黒の方を向き、深々と頭を下げる。
「ごめんなさい」
「まあ、渋谷さんもこれから気をつけてくれればいいですよ」
社長・恵比寿は僕に問いかける。
「あれだったら、目黒以外の社員に指導やってもらう?人間関係って合う合わないがあるから、我慢することないよ」
「いや。これは完全に僕が悪かったことだから。むしろ怒ってくれて助かってる。これからも女上司・目黒に教えてもらうよ」
女上司・目黒は驚いた表情で僕の顔を見る。
「え?渋谷さん、今なんていいました?」
「これは完全に僕が悪かったから?」
「いや、その後です」
「これからも女上司・目黒に教えてもらう?」
「それ!なんで私のこと女上司・目黒って呼んでるんですか?」
「え?女上司だから?」
「それ、気に入ったんで今後もそれで呼んでください」
女上司・目黒は満面の笑みだった。僕は怒られることを覚悟していた。媚びない姿勢が成功を生むこともあるんだな。
その後も、上機嫌の女上司・目黒に仕事を教えてもらい、すっごい怒られた。
メモ:どんなに気に入られても、仕事ができないと怒られる。
前回の更新から2年くらい経ってしまいました。書くスタイルすっごい変わっててビックリです。リハビリ感覚で書きます。




