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花蓮な女神の夢想反響(トラウムローゼ)  作者: 志倉加賀
一章 ≪魔物の世界≫
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第五話

「ちょっといいかしら」

 前回のあらすじ

 怖いお嬢様系女子にからまれた。ってじゃなくて、

「な、なんでしょうか」

 なんで私はこんなにビビっているのだろうか、昔はこういう女子に「お前、生理臭せぇ!」って言ってたのが嘘みたいじゃないか。ちなみにそれは相手の生理周期を完全に把握した上の発言だから余計まずかった。そうだ、鏡谷さんの生理しゅう、

「聞いてるの!」

「は、はひ」

 怖い! 女怖い! ちょっと黙ってただけなのに何でこんなに怒ってんの! オコなの?生理なの?

「……とりあえず副委員長就任おめでとう」

 お前のせいでな、お前のせいでやりたくもない仕事をするハメになった。やるんなら図書委員とか保健委員とかの方が楽なのにぃぃ。

「そこでね、一つお願いがあるの」

 何このえっちぃ展開。もしかして告白?なら私の答えはたった一つ、ふざけ、

「…本当に聞いてるの?」

 そろそろ相手の発言に過剰に脳内で反応するのはやめよう。流石にいちいち話が止まるのは私もめんどくさい。

「聞いてるよ、何?」

 少し強気に出てみるもやっぱりやめる。そんな私の葛藤を気にも停めずに鏡谷は言う。

「月曜の『試験』について細かい事、知ってる?」

 い、いや、と私は答える。実際知らないし。

「そう、月曜の試験はね、いわゆる称号が手に入るの」

 ああ、はいはい。それね。ちょっとちょっと相槌を打ちながら私は聞く。

「私も駒かい事は知らないんだけどね、どうやら個人戦でクラスで一番ポイントを稼いだ生徒と活躍した生徒、MVPって奴が称号を得られるみたいなの」

 MVP、モスト ヴァリュアブル プレイヤーの略だったっけ?なるほど、つまりはクラスで二人くらい称号がもらえるのか。で、それがなにか?

「わからない?」

 わからない。

「私は称号がほしいの。だってそれがあれば、色々と便利だもん。例えば就職とか」

「へぇ」

 そりゃ頑張ってほしいね。で?別に私は就職とか興味無いんだよね。

「まだわからないの?」

 鏡谷は言う。

「私のポイント稼ぎを手伝ってほしいの」

 ふぅぅん、結構ダサい目的ですねって言ってほしいんだろうか。まあ、違うだろうか。っていうか居眠りしてるような奴に出来ると思ってるのだろうか?こいつ人を見る目、0じゃね?

「手伝ってくれるよね?」

 なんか脅迫してる。なんでだよ。あ、でも、

「わ、わかりました」

 もしやったら私に称号がつく確率がほぼ零になるんじゃね?じゃあやらなきゃ!鏡谷さん、いや鏡谷さま!

「そう、よかった、じゃあ月曜日ね」

 鏡谷はそう言うと振り向き、歩いていった。

「………」

 ビビった~。いきなり何言われるのかと思ったら脅迫か、先生に言ったら停学くらいにはできるかな?まあ、しないけど。



 脅迫が終わり、遼へ帰路に着こうとした時、

「あ」

 一人の少女が紙を見ながら困っているようだ。

 見覚えのある顔だ。ってああ、あの人か、

「獅子理気茉莉だっけ?」

 なんか凄い名前だから憶えていた。あと、後ろに担いでいる楽器で。

 するとこちらに気付いたらしく、こっちに近づいてくる。

「ねえ、入学式って…」

「終わったよ」

 ガーン、と茉莉はその場に崩れ落ちる。

「どうしよう、無遅刻無欠席って面接の時、自慢げに言ったのに~」

 それは…駄目だな。一日目からそんな様子じゃあ…でも私は居眠りしてたし人の事は言えないな。

 そういえば私、面接の時、なんて言ったんだっけ?

 まあいいやと考えそうになった頭を元に戻し、私は茉莉に言う。

「まあ、いいんじゃない?私も微妙に遅刻みたいなものだったし、とりあえずは先生に言ったら?双先生って言う人がいるんだけど、その人に言ったらいいと思うよ」

 言うと、茉莉は泣き目になって、

「ほ、ほんと?ありがとぉぉ」と私に抱き着く。

 そこから二人は噴水前で少し話すと、

「本当にありがとう、夜空に会えて本当によかったよ」

 なんどもお礼を言う茉莉に「いいっていいって」と返す。

 その後、適当に職員室の場所を(分からないけど勘で)教え、別れる。

 次に私の目標となる場所、と言ってもただの帰る寮なんだけどね。

 校舎と噴水を越え、すこし大き目なレンガで出来た倉庫のような建物が見えてくる。あれが寮だろうか?地図に書かれている通りだとココなのだが。

 そう思ってきょろきょろしていると一人の女性が近寄ってくる。

「どういたしました?」

 割烹着を着てほうきを持っている女性だ。

「…今日入学した生徒さんでしょうか?」

 彼女は首を傾げる。美しい人だ。

「は、はい。えっと、暁夜空です」

 言うと、彼女は「夜空さん…ちょっと待ってて」とほうきを置き、ベンチに置いてある紙の束をめくる。すると、「ああ」と言う。

「暁夜空さんですね、こちらです」

 と、すぐに話はつき、寮に案内された。



「ここが夜空さんのお部屋です。何かありましたら、また呼んでください」

「は、はい」

 とてもスムーズに寮内の説明が終わった。と言っても寮の中は特にこれと言った施設は無かった。

 っと、疲れてるし、早く部屋に行って寝ようかな?

 そう思い、私はドアを開ける。

 中身は、意外と普通だった。と言っても私の普通ってなんだろう、とつい思ってしまう。詳しく言うと中身は外見のレンガではなく、木の板で机が二つ、そして二段ベッド。

 なるほどなるほど。こんな感じか…って、へ?

 私の視界にはこちらをまじまじと見る一人の女性…っていうか、蛇喰先輩がそこにいた。

「………」

「こ、こんにちわ」

 なんでっていう普通の疑問は正直、あまり感じなかった。いや、驚いたは驚いたのだ。ただ、そこじゃなかった。

「蛇喰先輩」

「………」


「なんで私の部屋で脱いでるんですか?」


 そう、彼女は、蛇喰先輩は全裸だった。

 なんだろう、この状況。私も脱げばいいのだろうか?

 ってか、蛇喰先輩も体がやばい!制服のせいで見えなかったが、意外と肉がある。もちろん、胸が一番に多い。椿さんと比べたらどっちもいいじゃん!というオンリーワンを選んでしまうが、一位二位を争うくらいだろう。

「………なんでって?」

 こっちが聞きたいYO!

 頭を抱えたくなるもこちらを凝視する蛇喰先輩と視線を合わせてしまったため、下手に動けない。どうしよう。

「いや、だってここは私のへ……や」

 視線を頑張って逸らしながら言っているとあることに気付いた。

 これは部屋の壁に立てかけられた札だった。


 114号室

 蛇喰

 暁 夜空


 と、書かれている。蛇喰先輩は何故か苗字だけしか書かれてなく、分からない。しかし、問題はそこではなく、問題は札に「蛇喰」と書かれている所だった。この事から私が理解したのは、この部屋は二人で使う物だという事だ。

 言ってくれよ。

 そう思う私を殴り捨て、

「えっとー、蛇喰先輩はここに住んでいる?」

「………」

 縦に首を振る。

 なるほど。

「私がここに住む事は知ってました?」

 横に首を振る。

 ふむ。

 なるほど。つぅまぁりぃぃ、

「ごめんなさい、すぐ出ます」

 綺麗な礼を決め、私は部屋の外に出る。

 二分ほどしたとき、ドアの向こうからトントンと音がする。きっと着替え終わったのだろうと思い、私はドアを開ける。そこには私の思った通り、服(寝巻?)を着ていた蛇喰先輩がいた。彼女は、自分の机に向き合い本を読んでいる。私は中に入り、荷物を机の上に置く。机の隣には私の家から送った荷物が届いており、パンパンな感じがにじみ出ている。その荷物を開け、中からとあるものを出す。

 それは「調味料」だ。私はこの調味料、七味が大好物なのだ。肉にも七味、ラーメンにも七味、ご飯…には流石にしないが、大体の料理に、私は七味を掛けるのだ。って、

「あれ?」

 これ、七味ちゃう、コショウや。

「………」

 はぁぁぁぁぁ?

 なんで間違えるんだよ。なんで、なんでぇ?

 マイ七味ぃぃ。おぉ、マイ七味……。

 七味が無いことに一喜一憂している私を見かねたのか、後ろからとんとんと肩を叩かれる。私はすぐに後ろを振り向く。

「………」

 無言で何かをこちらへ差し出す蛇喰先輩。心なしか、「ほれ」と言われている気がする。私は蛇喰先輩の持っている物に目を落とす。

「先輩…」

「……ん?」

「私、マヨネーズは嫌いです」

「………」

 無言で蛇喰先輩はマヨネーズを持っている手を戻し、机に戻って読書を開始する。

 しかし、なんでコショウなんだろう。別に嫌いではないけれど、七味には劣る。

 ………まあ、いっか。七味がなくちゃ生きられないわけじゃない。多分、一か月くらいは大丈夫だろうから、急いで買いに行く必要もないだろうし。

 コショウを荷物の中に投げ捨て、奥にあった本を二冊三冊取り出し、机に並べる。一連の作業が終わり、一息つくと、ここに来るまでに鏡谷が言っていた事を思い出す。

━「私のポイント稼ぎを手伝ってほしいの」━

 思いながら私は大きなため息をつく。

 なんで私なのかなぁ?

 てか、あの子が言ってた試験の内容ってあってるのかな?ちょっと聞いてみよう、経験者に。

「あの」

「ひぁい!」

 蛇喰先輩に話しかけようとした時、今まで聞いた事のない声を発する。

「……な、何?」

 ちゃんと会話が成立したと思ったら完全に警戒されている。

「えっと、次学校で試験があるんですけど」

「え? …ああ」

「それで試験ってどんなのかな~って思って、なにか教えてくれますか?」

 無言で考え込む蛇喰先輩。しかし、

「ごめん。……それ受けてない」

 えぇ。

「私、学校から支援でここに居て……授業にもあんまり出てない」

 どういう事だってばよ。つまりは特待生って事なのかな?さっきも魔法が使える人だって話だし。ってことは凄い強い人なのだろう。椿さんも結構強いし。そう考えると、薺先輩も強いのかな?

「で、でも」

 蛇喰先輩は一冊の本をこちらに差し出す。

「これは?」

 そう言ってその本を手に取る。その本とても分厚く表紙には「基礎魔法の基礎、固有魔法の基礎」と書かれていた。

「が、がんば」

 そういって蛇喰先輩は両手でガッツポーズらしきポーズをし、自分の机に戻った。

 どうしよう。そう思いながらも、適当な所で開いてみる。中身は予想通りの字がびっしり書かれたページで一気に読む気が失せてしまう。確かに趣味は読書だが、こういういわゆる「参考書」は大っ嫌いなのだ。

ベッドに寝そべり、最初のページを開く。

『まず最初に「基礎魔法」について、説明しよう』

 そんな語りから始まった本に私は引き込まれる事も無ければ衝撃の真実に驚く事も無かった。ただ、こんなものか、とため息をついてしまうような内容だった。別につまらなくないが、さしていい内容でもない。

 しかしそんな本でも「基礎魔法」のなんたるか、「固有魔法」のなんたるかという所を学んだ。つまりは、

(私でも余裕じゃね?)

 だが基礎と言っても魔法は魔法、難しいものだ。無理だと言った先生の言葉も今ならギリギリ許せる。

 そんな基礎魔法だが、本の中間のページに書かれていたキーワードに私は思う。

(見つけた。上手くいくやつ……)



続く

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