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花蓮な女神の夢想反響(トラウムローゼ)  作者: 志倉加賀
一章 ≪魔物の世界≫
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第三話

 前回、ホリックの説明をしたから今度は『新人類』の説明をしようかな。

 新人類。それは千号石と同じく、ホリックに対応する人類の希望である。

 通常の人類よりも優れた身体能力を持つ。例を出すのなら椿さんの大ジャンプともその一つだ。

 しかし、それだけではない。彼らが優れると言われている由縁は千号石との共鳴である。共鳴は比喩表現だが、意味は分かるだろう。そう、特殊能力だ。例は経験上出せないが凄いらしい。そのため、千号石でできた武器を持ち、そして戦うのだ。っともう朝のようだ。起きなきゃ、今日は早いんだ。ってあれ?すごく柔らかいなぁ。なんだこれ。



 ぼんやりする意識が段々はっきりしていく。ベッドの上だ。そうだ。私は昨日、椿さんと一緒に泊まることになって……。

「ん……あぁ…ああ…」

 手に柔らかい物が当たる。なんだろうこれ。そう思い揉む。とても気持ちいいぞ。あと何か惨めさも感じる。なんだろう。やっと意識がはっきりし、手を見る。と、

(あ、やべ)

 私は驚く。なにせ私の手は彼女、椿さんの胸を鷲掴みしていたのだった。焦る私。早く離さなければ。ばれえしま…、

「……どうしたの?」

 起きてた。いや、これで起こしてしまったのだろう。

「えぇっと離して」

「……はい、すみません」

 胸の感触を離すギリギリまで楽しみ離した。私もこのくらいあれば友達が多かったのだろうか……関係無いか。

 それより、と時計に目をやる。時間は六時。電車が来るのが六時半で出発するのがその十分後だ。時間が余りあるとまではいかないが余裕はあるくらいだ。

「そろそろ準備しましょう!」

「え、あ、そうね」

 私の切り返しに驚いたようだったが椿さんはすぐに答えた。

 着替え、バックに着替えを入れ、背負う。ていうか、着替える時、椿さんが私をちらちら見ているのは何だったんだろうか。まさかまた襲ってくるかもとか思ってたんだろうか。流石にしないよ。私がするのは視姦と妄想だけだ!あれ、もっとひどいな。

「そろそろ行きましょうか」

「ええ、そうね」

 二人共、バックを背負いドアへ向かう。今日の椿さんのファッションは昨日の制服の色違いらしい。迷彩だった昨日に比べ、青と白でクールな雰囲気は変わらないがどこか違和感が…、

「眼鏡、変えました?」

「ええ、よくわかったわね。ちょっとイメチェンってやつ」

 なるほど~と興味があるのか無いのか微妙な反応をするが、気にしてないらしい。私も創造だが、この人も友達少ないんじゃないか?まあ気にしないようにしよう。流石にそんな事、本人に聞けないし。

 そんな事を思いながらも二人は出発する。


 

 意外と早く着いたので駅で弁当、俗に言う駅弁を買って車両に入った。

「私、駅弁買うの初めてなんですよね。なんか買うの恥ずかしくって」

「分かります」

 私も四日前くらい、つまり旅に出てから買い始めたのだ。ちなみに私は牛肉弁当で椿さんがサラダ弁当。あの時買った駅弁、不味かったなぁ。

「っとそろそろ出発するようですね」

 時刻表と腕時計を確認し、私は言う。駅に着いたのが六時十五分でもうすぐ出発だった。

 二人で駅弁を開け、食べ始める。

「「頂きます」」

 うん、おいしい。やっぱり肉はいい。しかも牛だ。少し奮発したかいがあった。

「おいしいですか?」

「ええ、すごくおいしいわ」

 椿さんはベジタリアンらしい。ちなみに私は大っ嫌いです、野菜。あのしゃきっしゃきって音がもう…。その音は他人が食べてる時も聞こえるのでベジタリアンも嫌い。あ、でも椿さんは別という事で。

 電車が出発して十分ほど、二人共弁当も食べ終わり、他愛のない会話を楽しんでいた。

「そう言えば椿さん、凄い強いですよね。なんか、称号みたいなのってあるんですか?」

 強院には優秀な生徒には称号が付き、同じ称号を持つ者同士でチームを組むことがあるらしい。まあ結構昔の情報だし、そこまで信ぴょう性はないが。

「ええ、私は…」

 そこまで言いかけて止まる。

「どうしました」

「あ、ううん。少し恥ずかしくて…」

 まあ、称号って「中佐」とか「大佐」ではないらしいし、もしかしたら一部の人が「かっけー」と思い、一般の人が「は?」と思うような物なのか?そんなものを付ける学校側は凄いなぁ。

 私が適当に考えていると彼女が口に出す。


戦場戦姫(フリューゲル)


 か、かっけぇぇぇ!

 どうやら私は一部の方らしい。いやでもカッコよくね?フリューゲルはたしかどっか昔の国で翼って意味だっけ。だったらわかる。彼女の身軽に飛び回る様子はさながら翼を得た天使のようだったからだ。しかも姫だぞ、姫。かっこいいし、綺麗だし、いいじゃん。

「第一之翼 フレイヤ」

 続いてた。フレイヤは確か……女神…だっけ?すごいなぁ。センスがあるかないかは置いといてそれを生徒に付ける先生も凄い。

「気を付けてね」

「え?」

 いきなりの警告に思わず?マークを浮かべる。

「もし、称号付けられたのがクラスで自分だけの時、一か月二か月それで呼ぶから。みんな」

 ひえ、想像してみると超怖い。「おーい、戦場戦姫(フリューゲル)、提出のプリント早く出せ~」とか、怖いなぁ。てか恥ずかしいなぁ。よし、できるだけ称号を得ないようにしよう。多分、何かに活躍したらもらえるとかなんだろうから日陰に徹しよう。脳ある鷹はうんたらかんたら。

「はい」

 あ、お菓子くれた。やっぱりいい人だなー。味はそこまで良くないけど。

「おいしい?」

「はい!何味ですか?」

 聞かれたので笑顔で答える。椿さんはそれに「口に合ってよかったわ」と言った。合ってないけどね!変な優越感を感じて思わずほくそ笑む。

「長いですね…」

「まだまだよ。早く着いて明日の朝、遅くて明日の夜くらい。それくらい遠いのよ。だから」

 流石に五時間ほど何もない電車にいるのは田舎者の私には耐えられない。そうだ、椿さんの武器について教えてもらおう。きっと変形したりするのだろう。

「特に面白いことなんてないわよ。ただ千号石でできてるだけ」

 じゃ、じゃあ戦う時に雰囲気変わるのは何かあるんですか?

「え? ないない」

 手と顔を横に振った。

「私の大太刀…まあ『ツバキ』って名前なんだけど、これは本当にただ千号石でできてるだけでそこまで珍しいものでもないよ。出したりしまったりする時に少なからず魔法は使うけど。あ、でも切れ味は凄いいいよ、これも千号石でできてるからだけど」

 いや、でもきっと本人が知らない何かがあるんだろう。って『ツバキ』?武器の名前を自分の名前にする決まりでもあるのだろうか?

「まあ、色々あるのよ」

 本当に色々あったのだと確信される低いトーンとそれを察して無言になる私で重い雰囲気になる。

「…なんか好きな食べ物とかありますか?」

 なんだこのお見合いみたいな空気。

 この後、二人でトランプなどをしました。楽しかったです(小並感)。



 目を覚ます。夜だ。この電車は夜中も走り、乗客はその中で眠る。一応個々に部屋で分けられてはいるが少し心配だった。そのためなかなか寝付けずやっと寝れたと思ったら起きてしまった。喉が渇いたのか、水分を少し、時計を確認すると時間は深夜の二時ごろ。椿さんは朝、つまり六時ごろに着くと言っていたので時間通りに行くとあと四時間ほどらしい。

 横目で彼女を見る。私の反対側の席で毛布にくるまり寝ている。

(それにしても武器はどこにしまってるのだろう)

 そんな疑問も彼女の気持ちよさそうな寝顔ですぐに愚問だと捨てる。さて、どうよう、暇だ。流石に今から寝ると寝坊は避けられない未来だろう。

 とくに考えも無く、部屋から出てみる。車両には私たち以外にも多くの部屋が連なっている。そしてどの部屋も明かりは付いていなく、眠っているのだとすぐわかる。トイレってあったっけ?確かあるって聞いたけど。そう思い、二車両、三車両超えた所だった。

 音が聞こえる。そこの車両はフリールームのような所で昼は子供たちが遊んでいた所だ。要するに交流の場所である。

(でもこんな時間に誰だ?)

 弦楽器…琵琶か?でも少し違うな…なんかこう…、

「………………」

 車両のドアを開けると音は聞きやすくなる。そして私の視界に一人の女性の姿が映る。すると、彼女もこちらに気付いたのか、楽器を演奏する手を止め、顔を上げる。手に持っていた楽器はギターらしい(実物を見た事が無いので確証は無い)。そのギターは黒に茶色と少し合わないような気もするデザインだった。

 私は彼女の顔を見る。例えは汚いが砂利のような薄い白が混じった黒髪。それを頭の後ろで一つに縛っている。

「……何?」

 私がぼーっと見ていると彼女は話しかける。

 あ、どうしよう。

「いい音ですね」

 どうでもいい音に話を逸らしてみた。

「お、わかるか。いいだろぅ?この音はな、こことここを押して、弾くんだ。いい音だろうぅ?馬力が違うぜぇ」

 馬力は違くね、と思いながらも「そうなんですか」と隣に座る。なんか凄い嬉しそうに力説し始める彼女。今更興味無いことは言えないけど。

「でね!でね!ここで特別な技があって~」

「ちょっと待って」

 え? と首をかしげる彼女。

「なに、今から独自に開発したリズムを…」

 このまま彼女のペースに飲まれると話してくれ無さそうなので適当な話題を作る。とりあえず音楽系からは離れよう。中学校でアルトリコーダーが出来なくてほぼトラウマ状態だったのを思い出す。私が頑張ってリコーダーやってる横で人気グループは楽しくラッパやってたり……あれ、涙が。だ、だからとりあえず、

「もしかして同い年ですかね、私、15なんですけど」

 歳を聞いてみた。そこから広げよう。

「え、ああ…私も」

 まさかの同い年

 下だったらお姉さんモード、上なら後輩、妹モードを使う私が一番苦手とする同い年だ。でも今まで少し話した感じを思うとお姉さんモードの弱でいいかな?でも加減の方法が分からない……ま、いっか。

「そうなんだ。実は強院に通うんだ、そっちは?」

 結構プライベートな話だろうか。でも同い年って言ってたし、いいよね。

「わ、私も」

 わぁぁお、奇跡のような偶然だ。もしかしてクラスも一緒だったりするのだろうか。三年間の親友とかになるのだうか。否、私の事だから長くて一か月だな。あとは端で読書の毎日だ。あ、そうだ、椿さん経由でいい距離感の友人を作ろう。

 そんな未来設計を一人で作っていると、

「そっか、私、獅子理気(ししりき) 茉莉(まり)。よろしく」

 獅子理気茉莉。なんだこのカッコよさ。なんでも難しい漢字を並べればいいってもんじゃないぞ。

「私は暁夜空。よろしくね」

 ん、と口を開かずに答える茉莉。さて、次の話題は、

「戦えるの?」

 あ、少し失礼だったろうか、いきなりこんなことを聞いては。

「た、戦えるよ。一応」

 戦えるらしい。というか私の失言の多さは異常な気がする。しかし戦えるのか。服の上から見た感じだと筋肉もあまりあるようには見えない。強院に通う生徒の全員は新人類でそれぞれ基礎能力が底上げされてはいるがここまでひ弱な感じは珍しい。

「もしかして、戦えないくらい貧弱とか思ってる? それは流石にひどいと思うんだけど……」

 少しこちらを睨む茉莉。

「いやいや、貧弱までは思ってないよ。ちょっとひ弱な体だなぁって思ってさ」

「それもそれで酷くない?」

 まあまあ、とつまりは遠距離ってことかな?ってなんで私は彼女の戦闘スタイルを想像しているのだろう。そんな事を思いながらちらっと腕時計を見る。

 ………よし、めんどくさいから逃げるか!

「あ、ごめん!ちょっとやることあるんだよね!じゃ!学校で!」

 少しテンションを上げてその場を後にする。その車両から出る時に振り向いてみるとまた弦楽器(ギター)を引いていた。

 部屋に戻ると目をこすりながらお茶を飲む椿さんが居た。見た感じ今起きたらしい。私がドアを開け、入った事に気付いたらしく、大きなあくびをやめ、「あ、お帰り」と言う。語尾に♡が付くようなねっとりした声と寝起きのはっきりしない顔がエロい。

「どっか行ってたの?」

「トイレに行こうと思いまして」

 行ったとは言っていない。嘘ではない。が、素直に茉莉とあった事も言ってみる。かくかくしかじか。

「へ~、友達できてよかったね」

 やめて、笑顔が心に突き刺さる。果たして彼女とは友達と呼べる関係になるだろうか?頑張れ!未来の私。彼女もあまり誰かと仲良くするの苦手そうだし。

「でもどっかで聞いた事ある名前なんだよね、獅子理気って」

 こんな凄い名前に聞き覚えがあるなんてどんだけ交友関係広いんですか、素直に憧れるわ。でも言われてみれば私も聞き覚えがあるっていうか見た覚えのある字面だなとは思った。楽器持ってたからそっち系の娘とか?

「あ!そうだよ、獅子理気って獅子理気良夜(ししりき りょうや)って歌手だ!」

 ほう、確かにそんな名前、聞いたことがあるような無いような。でもきっといい人なのだろう、だって名前に『夜』がついてるし。

「思い出した、お母さん好きだったんだよね」

 一人思い出に浸りだす椿さん。私はと言うと昔絶交した友達が好きだったなぁと嫌な思い出に浸る。あの子今なにしてるかな。出来れば不幸になっててほしいな。

「そういえば強院って寮生活なんですよね、家族と会えなくて寂しくないですか?」

 少し気になっていた事を聞いてみる。私が昨日、椿さんから聞いたことによると家族は私よりも田舎にいるらしい。そして寮生活だ。なかなか会えないのではないはずだ。私?私はもう家族とは疎遠を決めたわ。そもそも家族とあんまり仲良くないし。こんな時間を使って家まで帰ろうなんて思わない。

「……そうね」と彼女は素っ気なく答える。

「ささ、そろそろ行く用意しよ!」

 そう言って急に話をそらす椿さん。そこに私は違和感も何も感じない。むしろさっきの反応から椿さんは家族とはあまり仲のよい関係ではないのだろう。そう思って彼女の言う通り、テーブルの上に散らばっている物を片づける。さてもうすぐ学校生活が始まるぞ。



続く

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