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花蓮な女神の夢想反響(トラウムローゼ)  作者: 志倉加賀
三章 ≪鉱山の孤児≫
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第十五話

 さて、そろそろキャラクターを安定させたいと思う。

 私、獅子理気茉莉は正直に言ってしまえば機械のようなものだ。

 それで私の性格と言うのが最近すごくころころと変わっていた。それは自分のキャラクターを見つけられていないからなのだ。

 例えばだ。

 あの日、機関車の中で夜空に会った時に私が使ったのは「クール風を装ったいじられ役」だった。それから入学式の時はそれを少しマイルドにしたようなキャラ。それからの試験の時は口数を少なくしてギャグキャラとなった。

 ………。

 なんだ、このぶれっぶれなキャラクターは。

 キャラ崩壊ってレベルじゃないぞ。いくら機械だからと言ってこれは良くない。しかしそもそも自分というものを持っていない自分に言わせてみればこれでも頑張っている方でほめてほしいとも思っている。よくぞここまでやった、と。

 さて、ここからどうしようか。

 やり方は複数。

 一つ目は「完全に新しい自分で固定させる」

 二つ目は「試験の時の自分で固定させる」

 細かい選択肢を崖から突き落とせばこんなものだ。

 まず、一つ目。

 「完全に新しい自分で固定させる」

 正直これが一番楽なような気がする。その理由が共にここ数日、共に過ごし、共に称号を得てしまった二人の少女、夜空と鏡谷にある。特に夜空にあるんだが。

 夜空、暁夜空。

 彼女は子供だ。考えも発言も幼い。鏡谷に生理生理言ってるのを見て思ったのが「思春期の男子か、こいつ……」って感じだった。ただ、今回それは関係ない。

 理由と言うと、夜空は他人に一定以上の関心を持てないからだ、多分。多分。

 それに彼女はあまり他人に深入りしようとしない。ならこれ以上にいいものはあるだろうか。彼女達と過ごすならぶれていた自分を再利用するのではなく、新たな自分で固める方がいいような気がするのだ。

 それに比べて二つ目は、正直自分が一番気が乗らない。

 やっていてなんか変な感じがしていた。まあ、ここら辺は完全にフィーリングなんだけれども。

 それにあのままやるともっとぶれる気しかしない。これ以上ぶれるともう自分の紹介文をどうすればいいのか。

 と、ここまで話してからも何だがもめんどくさい。それにうだうだ理屈を並べても結局は自分の一人語りで誰かが聞いているわけじゃない。

 

 ━━人格(ヒューマノイド)投入(インストール)━━


 人格再起動。

 異常なし。ウィルス反応なし。

 感覚回路と感情回路を接続。

 


 暗い部屋。

 誰もいないその空間に私一人が椅子に座っている。

 ………。

 手が動く。ぐーぱーぐーぱー。異常なし。

 ゆっくりと立ち上がり、しっかりと歩けるかを試す。

 なぜこんなにも念入りに稼動調査をするか。それはここまで大きな人格を変えたことがさしぶりだったからだ。

 ………。

 よし、動く。なら、これはどうだ。

 片手を真っ直ぐに前へ向ける。そして呟く。

「………≪機化人影(アーティファクター)≫」

 刹那、腕が六方向に裂ける。

 そしてそれは機械のように変化(へんか)し、変化(へんげ)した。

 やがてそれは腕から伸びる光沢のある鋭い刃となった。

 私はそれを眺める。刃の鏡に反射して自分の顔が見える。ひんやりとした表情の自分だ。

 ………、もうちょっと笑った方がいいかな?

 私は変形させた腕を元の人間の形に戻し、閉まったカーテンを開いた。

 見えるのは静まり返った町。そして水平線からのぞき見するように姿を見せる日。

 朝だ。

 これから頑張ろう。




 続く 

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