第十四話
さて、少し話をまとめてみることにする。
話と言えば彼女、暁夜空についてだ。
特筆すべき所なんてどこにもないただの屑だが、あの日、彼女は異常とも言える行動をした。
そう、怪物を一人で倒したのだ。彼女自身は記憶がないと話をぼかしているが、あれにはどうもいろいろと思ってしまう。
まず思い出すべきはあの時の言動だ。
最初に異変のようなものを感じたのは私と茉莉を怪物から逃がした時のことだ。夜空は私たちを庇って逃げさせた。まずそこがおかしい。彼女のようなナチュラルな屑がそんな行動をさっとすることはできはしないだろうと思う。
そして次だ。
それはその後の行動。つまりは怪物を倒した時の夜空だ。
私はあの日の夜空を映像にして思い出す。
あの日、私と茉莉は螺旋階段を上り終えて部屋を超えて外へ出た。
「はあ……はあ…」
急いで上がったせいか息切れした体に酸素を入れる。隣では同じく茉莉が過呼吸になっていた。
「大丈夫?」
「う、うん。でも夜空が」
茉莉は少し強い口調で後ろを向く。私もそれにつられるように後ろを向いた。そして次の瞬間だった。そう、刹那ともいえるその時、激しい地響きと同時にあの遺跡が崩れていった。そして出てきたのはあの怪物だったのだ。
大きな怪物。にらみつけられたら固まってしまいそうになるだろう二つの眼を持ち、翼がなければ口もない。
不完全な怪物。
そう言うのが的確と思えるそれはあるものと同時に空へ出た。あるもの、暁夜空である。
正直あの瞬間の衝撃で死んでもおかしくないとも思ったが、それは新人類ということで片付いてしまうから言わないことにする。
そんなことは置いておいてピューっと飛ぶ彼女には迫力があった……って感想を言いたいんじゃなくって。
突然だけど私は目がいい。どのくらいかって聞かれると言い表しようがなんだけども。
それで私はあの瞬間、夜空の口が動くのが見えた。まあ、彼女の事だからまたどうでもいいことでも呟いてんだろうと思ったんだけど、顔が結構マジで恐怖してたし、そうではないんじゃないかと思ったんだよね。
んで、調べてみた。
私はこの目があるため、ある特技を持っている。それは口の動きから発音した言葉を当てることが出来るというものだ。これがまた的中率が高い。
その時の私はその口を思い出しながら自分で作ったノートでどれがどの口かって言うのを再確認していた。自分だけで言うよりも正確かなと思ったからだ。そして分かった。
「もんすたー…いーたー…?」
なんだろう?
何か魔法の部類のものだろうか。ここで私はあの日の夜空のあの後の行動を思い出す。
まるで人が変わったかのように落ちる身体全身を使って怪物に直撃したのだ。そしてここも謎なポイントだ。
それは謎のオーラである。
あの時、夜空の身体から微量のオーラのようなものを感じた。体の周りをふわふわしている花粉のようなものと考えてほしい。いや、少し分かりにくいか。
まあ、話を戻すと彼女はそのオーラを利き手の手の甲に集めたのだ。するとどうだろう。そのオーラはまるで剣のように彼女の手に装備されたのだ。
夜空はそのオーラで出来た剣であの怪物をブッサブッサと切った。そして倒し、地面に無事着陸していつもの彼女に戻ったのだ。
さて、ここまでで何を思っただろう。
まず最初に。
「お前ナニモンだよ」
新人類だからって言い訳はそんなに万能じゃないんだよ。
「………」
まあ、自分しかいない部屋でこんなに考えても何も生まれないだろう。
私はそう思いながら寝ころんでいたベッドから起き上がる。そして備え付けられていた全身が見える鏡の前に立つ。
━━━あいつはきっと何でも受け入れるだろう。
「……あいつなら」
━━━それはきっと異常とも言えるこの世界も。
「こんな私を」
受け入れてくれるだろうか。
私服のワンピースの肩にかかる紐を外す。
そしてそれは見えた。
まるで蜥蜴のようなその鱗が。
私は私が映る鏡を見ながら、
「はぁ」
とため息をついた。
続く
鏡谷の考え事