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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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9-4

「観測して分かったことは?」

 するとアフロは観測装置とコードで繋がれたノートパソコンに音声グラフを表示させた。

「温度はほとんど一定で約1000℃近い。声に関しては関係の一切ない3人に音声解析を頼んだが全員同じ答え。間違いなく人の声だそうだ。」

 なるほど。

「それからずっと観測し続けているが、三日三晩叫びっぱなしだ。」

「それ以外は特に変化は無いという事ですね。」

 するとアフロは苦笑いを浮かべながらノートパソコンの画面を切り替えた。

「これが最初に聞こえた時。」

 「そんで……。」と別のウィンドウで別の音声グラフを表示させた。

「これが3日目だ。」

「大きくなってる?」

 初日から3日目、そしてリアルタイムで追加されていくデータは時間を追うごとに、その音の波形が大きくなっていた。

 アフロに目を向けるが、理由が説明される訳もなく、俺は音声グラフに視線を戻す。

 音の増大化は不安定で、大きくなっていく時間もあれば数時間状況が維持される時間もある。そして今書き込まれていく波形が、今までで最も大きくなっている。

「どれくらいの深さでこれを?」

 そう問いかけて、俺はアフロを見る。

「地下15kmちょいのところだ。」

「………え?」

「え?」

「………ちょっと待ってください?」

 眉間に手を当てて、俺は一旦整理する。

 確かにアフロは地下15kmと言った……。都市伝説より深いのはまあどうでもいい。ただ、いくら前回の地殻調査時よりも技術が進んだとは言えど、南極に行っている間の1ヶ月弱の期間で14kmも掘る事は不可能だ。

 アフロが所長達をうまく騙して仕事を切り上げたかと思っていた。しかしアフロはそう言った。もちろん思考を読んだが嘘はついていない。つまり、事実15kmまで掘り進めたのだ。

「所長。ここはいつから掘削を?」

「もう1つの建物は数年前から稼働していたがぁ、こっちの建物はオオイノミカドが来る半月前までは少しも掘っていなぃ。」

「ではどうやって10日あまりで地下15kmまで?」

 するとアフロが「それが。」と入ってきた。

「塞がってなかったんだよ。穴が。」

「はい?」

「過去に掘った跡を調べたら深部こそ塞がっていたが、そこまではまるで掘ったばっかみたいに綺麗に空いてたんだ。」

 数十年前に掘った穴が?そのまま空いていた?

 まあそんな事は理由は考えても意味はない。それよりも気になることがある。

「所長。もう1つは稼働していると言っていましたが、本来ならアフロがそこにいるだけでよかったのでは?」

 すると所長は口角をゆっくりと上げて頷いた。

「あぁ、だから依頼書には詳しく書けなかったぁ。するとどうだぁ、才能溢れる青年からの指示が届いたではないかぁ。大きな存在の指示を聞けば何かが起こるぅ、ならば指示を聞かない理由はないだろぅ?ヒヒッ。」

 訳の分からない理論だが、こうして仕事の大役を任されている。

「そして指示通りに建物を建設して掘ってみるとぉ……。」

 穴が空いたままだった………。

「私達が採掘する前に調査した時は穴などなかったはずなのだがぁ、まるで新しく開けたかのように穴が空いていたぁ。恐らくは事前の調査ミスなのだろうがぁ、大きな存在のおかげでこうして声を拾うことができたぁ。」

 俺達としては拾えなかったほうが仕事を簡単に終わらせられたんだが……。

「これからはどうやって調査する方針で?」

 アフロに答えを求めると、アフロは所長に目を向けた。

「まずは耐熱性の探査機を送ったんだがぁ………ある地点を超えた途端通信が切れてしまったぁ。もちろん有線の探査機だぁ、通信障害はまず無いだろぅ。」

 所長は「あとは彼に。」とでも言うかのようにアフロに目を向けると、近くを歩いていた研究員に声をかけた。

 アフロは肩をすくめるとノートパソコンのウィンドウを閉じ、俺と目を合わせる。

「そこで引き上げた。そしたら………。」

 するとアフロは俺の後ろに視線を移す。その視線の先には1人の研究員が綺麗に切られたケーブルとワイヤーの束を持って所長の隣に立っていた。

「あれだ。」

「なるほど………。」

 片膝をついて座っていた俺は立ち上がって研究員の前に行くと、研究員は切り口を見せた。

「これは……焼き切れていますね。」

「その割には綺麗だぁ。おそらく超高温の何かに瞬間的に焼かれたのだろぅ。」

 所長の言う通りで合っているだろう。

 どうやって焼き切れたかもだが、1番の問題はマイクとの違いだ………。

「観測装置と探査機はどれくらいの深さまで?」

 振り返ると所長はアフロを手で示した。

「はぁ、さっきから俺に任せすぎじゃ?」

 アフロの愚痴に「ヒヒッ。」と所長が笑うとアフロは溜息を吐く。

「両方とも15kmだ。ただ探査機は15kmの時点で消滅、観測装置の方もマイクと温度計以外は機能しなかった……。」

「そこでこれだ。」

 すると「説明ありがとう。」とでも言うかのように所長が入ってきた。

 所長は手にした茶色い紙に包まれた筒を俺に向かって放り投げた。

「これは……ダイナマイトですか。」

 筒を受け取りそう言うと、慌てた様子で固まっていたアフロが声を荒げた。

「そんなもん投げるなよ!!てかユウマ君はもうちょっと危険を感じろ!!」

「まあ起爆するような事ではないですし。」

 ダイナマイトを所長に投げ返し、俺は「それで、」と問いかける。

「そのダイナマイトをどう使うつもりで?」

 所長はニヤリと笑うと白衣のポケットから金属製の筒を取り出した。

「これは300度まで耐えられる耐熱ケースだぁ。このケースは遠隔操作で壁が開閉されるぅ。ダイナマイトをこれに入れてケースを開けばぁ?」

 答えを求められたアフロは溜息を吐いて気怠げに答える。

「地下の温度で自然に起爆する。」

「正解ぃ。しかし地下15kmにもなると地圧のせいでせいぜい穴の壁が少し崩れる程度だぁ。その上穴が塞がる恐れもあるぅ。だがぁ?空洞に入るギリギリで起爆させればぁ……。」

「崩れた物は空洞に落ちていく。」

 「正解ぃ。」と所長は笑みを浮かべて頷いた。

「そして高さを調整しながらそれを繰り返せばぁ、穴は大きくなるぅ。」

 確かにうまくいけば穴は大きくなるだろう。

 しかし全ての爆発がうまくいくわけでもなく、部分的に壁が崩れて穴が塞がるかもしれない。まして大きさも分かっていない空洞に物を落とし続けて、万が一砂時計の落ちた砂のように積み重なった物で穴がふさがりでもすれば、再調査するためにはまた別の場所で掘削しなければならない。

 第一。

「なぜ穴を大きくする必要が?」

「さぁ?」

 はあ?

「ユウマ君。顔が怖いぞ。」

 呟くアフロを無視して所長に目を向けていると、所長は「ヒヒッ」と笑う。

「いやぁ、私にも分からないが思いついてしまったんだぁ。思いついてしまったにはやるしかないだろぅ?」

 このジジイは何を言ってやがる。

 まともな話が出来る奴は居ないものかと周囲に注意を向けると「やれやれまたか。」と苦笑いを浮かべて肩をすくめている研究員達ばかりだった。

「ユウマ君。ここに所長を止める人はいないぜ。」

 そう言うアフロも腰に手を当てて苦笑いを浮かべている。

「はぁ……分かりました。例え失敗しても自分は知りませんからね。」

「ヒヒッ。じゃあ作業を始めよぅ。」

 所長はそう言うなりポケットから出した、いかにも起爆装置といったボタンを押した。

「あ、やばい。」

 アフロがそう呟いた数秒後、少し離れた場所から爆音が響いた。

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