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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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7-10→

 スモールの口が閉じてから十数分。行きとほぼ同じ時間で開かれた口の先には、一面の銀世界と青空を分かつ地平線が伸びていた。

 ・南極

「そろそろ口の中にも慣れたんじゃない?」

 スモール口から出ようとしているとクミカにそう問われた。

「ええ、まぁ……。」

 かと言って座り込みはしないが。………だが触るくらいなら構わない。

 先に口から出たクミカを横目に舌を撫でると手に粘液が絡みついた。

「ぁゔ………。」



「お前がいなければ……何も出来なかった……。感謝する……。」

 重力に捕まり、腹から上だけを海から出すスモールを見上げ、俺は手に付いた粘液を振り払いながら感謝の言葉を口にする。

 そして俺は続けてこう言うことは決めていた。

「だからという訳ではないが……。スモール。よかったら俺達と友達にならないか?」

 そう言って俺は自己紹介した時と同じように手を差し出す。

 スモールはUMAだ。充分活動には含まれるだろう。

 それにあちら側への経路は貰ったとはいえど何かあった際の別の方法が必要だ。

 俺の言葉を聞くとクミカは笑みを浮かべながら手を差しだした。

 するとスモールは小さく笑った………ように見えた。事実、口角が少し上がったのだがそれが笑みなのかどうかは分からないし、わざわざ聞くような事でもないだろう。

 スモールはゆっくりと腕を上げ、これも自己紹介の時と同じように人差し指を俺とクミカの手のひらに順に触れた。


「これからよろしく頼む。」

「よろしくね!!」

 俺達の言葉にスモールはゆっくりと頷いた。


 今回地下世界に行けたのはまさしく幸運だろう。

 だが、なぜスモールは俺達に近付いて来たのか。重力。恐竜。街では見なかった彼以外の人間はいるのか。

 謎は多いが今は時間がない。また今度行った時にゆっくりと聞く事にしよう。


「さて、気付かれる前に急ぎましょう。」

「だね。」

 海に戻ったスモールを見送った俺達は南極点の方向の地平線へと向いてそう言い合う。

 バイクに乗るときと同じように全身防寒具に包まれた俺達は一拍おいて強く地面を蹴った。

「防寒具を着てきたのは正解でしたね。死なないとはいえど流石にこの寒さで走るのは辛いものがありますから。」

「て言っても防寒具は外側だけで、中は半袖だけどね。」

 小さく笑ったクミカは、身軽そうに飛び跳ねながらそう答えた。



「っと、アレは……。」

 少し走っていくと地平線の先に、荷台に積んでいたはずの荷物が散らばっているのが見えた。

 それに近付き状況を確認した俺達は、顔を見合わせて小さく笑った。




「大丈夫か!?」

 荷物を見つけてから丸2日。

 俺達はクレバスの下で発見された。


「注意不足でした……。」

 ロープで引き上げられ、地面に座り込んでそう言うとネイトは俺の頭にタオルをかける。

「私が寝てなかったら避けれたかもしれない。」

 俺と同じく座り込み、ネイトにタオルをかけられたクミカがそう呟いた。

「不休で働いてたらしいじゃねぇか。そりゃ注意不足でクレバスにも落ちる。」


 という事になった。

 スノーモービルがクレバスに落ちて荷物が散乱しているのを見つけた俺達は、常に監視されているGPSが停止した理由を付けるために自らクレバスに飛び降り、事故したように見せかけた。


「でもよく場所が分かったね。」

 クミカの言葉にネイトは表情を暗くすると、離れた場所でタブレット端末片手に散乱した荷物を調べている隊員達に目を向けた。

 隊員達がネイトの視線に首を横に振るとネイトは頬を掻きながら苦笑した。

「悪いがあの荷物にGPSを仕掛けていたんだ。だから連絡が来るよりも前にGPSが停止していた事は不審に思っていたんだが……。まさか落ちていたとは。」

「気を失っていたので連絡が遅れました。あまりに突然の事で、ナイフを壁に刺して死なないようにするのが精一杯でして。」

 するとネイトは懐から俺のナイフを取り出した。

「壁に刺さったままだったぞ。」

 ネイトは小さく笑いながら「ま。無事でよかったさ。」とナイフを俺に返す。

「さて、取り敢えず帰るか。」

 ネイトの言葉に俺とクミカは立ち上がった。




 ・南極 某基地 図書室

「んで?何か分かった事はあるのか?」

 俺とクミカは首を横に振る。

「何かしらは見つかるかと思って走ってみましたがダメでした。ガブリエルさんに調べてもらった情報から、航空機で上空を飛んでみようとここに帰ってきている途中で……。」

「落ちた、と。」

 ネイトはため息混じりに肩をすくめた。


「じゃあ次は航空機を用意したらいいんだな?」

 失望の感情をのぞかせながら電話をかけようとしたネイトを俺は「いえ。」と引き止める。

「過去の調査時、少将が初めて地下世界に迷い込んだ際の航空機と航路で、です。」

 するとネイトは動きを止め、静かに俺達に目を向けた。

「噂を言っただけではありませんよ。こちらには優秀な人材がいるものでして。」

 その言葉が指す人物が分かったのか、ネイトはため息混じりに俺達の後ろに立つガブリエルに目を向けた。

「……分かった。航空機と航路は用意しよう。しかし教えられるのは本当にそこまでだ。」

 そういうとネイトは「また怒られる。」と頭を掻きながら図書室の外へと出て行った。

「もう少しで終われそうですね。」




 その3日後には航空機が届けられた。

 スタート地点が違う為に少将の航路を二往復した俺は、もちろん地下世界に迷い込む事も、何かを見つける事もなく。

 ただ残ったのは、ネイト達が最も望まない形で達成された依頼だった。




 ・飛行機内

「では2つの仕事は完了したものとします。」

 そう言って俺とネイトのサインの書かれた依頼書、そして俺のサインだけが書かれた依頼書とノートパソコンをビジネスバックにしまった。


 もう1つの仕事であるスパイ。俺達の仕事はガブリエルに事細かく伝える事だ。

 地下世界の事は隠したまま、南極での事をネイトが思っている物と同じように伝えると、ガブリエルはそれをノートパソコンへと打ち込んだ。

 あとはガブリエルが終わらせてくれるだろう。



「ゲームでもする?」

 全てを伝え終え、何をするでもない時間を過ごしていた俺に、クミカがノートパソコンを開いて見せたのは、南極に行くときに俺が誘ったストラテジーゲームだった。

「……ええ。」

 

 しばらくして俺とクミカがインターネットで騒がれ始めた頃。片手で操作する俺の向かいに座るクミカが首を傾げた。

「仕事が1つ終わったって言うのに元気ないね。疲れた?」

 するとクミカに答える前にプレイが始まった。

「いえ、大国からの信用を失ったのは手厳しいなと思いまして。」

 片手ではプレイをしつつ天井を見上げるとクミカは「どういう事?」と問いかけてきた。

「今回、依頼側の望む結果にはならず。その上で自分の力に限界があると演じてしまいましたから。」

 GPSでの辻褄を合わせるためにクレバスから出られない演技をしたが。それは俺がクレバスから出られないと言ったようなものだ。

 勿論あの程度なら出られるがネイト達はそうは思わない。

 今回の仕事以前にも個人的にあの国の依頼を受けて稼いだり借りを作ったりして信用を築いていたが、その程度の奴には今後仕事の依頼は来ない。

 まあ、また一から信用を築けばすぐに稼げるようにもなるだろう……。


 全く。

「〈部活の為〉〈一時的〉とはいえ、大国からの信用を失わなければならないとは………。」

 ………。

 部活の為?


「あっ!ユウマ!?プレイやめないで!?」


 俺が部活をしている理由は金。

 大国に信用されたい理由は金。

 いくら10桁といえど方法の不明瞭な部活で手に入れられる金額と、信用の上で成り立つ国からの依頼で稼げる金額なんて物は比べるまでもない。

 そんな事は分かっていたはず……。


「ユウマ?ちょっと!?負けちゃう!!」


 なぜ俺は部活を選んだんだ………。

「っあ!!?」


 掴んだ!!!


 すると突然の頭痛と共に別人格の俺がそう叫んだ。


「ユウマ?…………っ!マズイ!!無理矢理抉じ開けようとしてる!!」

 向かいでクミカが慌てているがそんな物に目を向ける余裕はない。


「ぅあっ!!!」

 老爺の時の物とは比にならない痛み。

 それに堪えながら俺は俺に話しかける。

 何をだ?


 分からない!でももう少しで!!!


 何か嫌な予感がする。やめろ。


 予感なんて物、信じるたちかよ!


「ぅあぁぁぁぁぁ!!!」

 更に増していく激痛に俺は頭を抑えて叫び声をあげる。

「ダメ、改変され始めてる。ガブリエル!!」

「分かっています!ですが今刺激すれば抑えられる物も抑えられなくなる可能性もある!」


 周囲への意識が出来ない。いや、意識は向いていても記憶が出来ない?

 分からない。分からない。分からない。


「ユウマ………。」

「ユウマさん………。」


 分からない………が。これがマズイという事だけは分かる!

 今すぐやめろ。これは無理矢理していい事ではない!!


 何で!!せっかくのチャンスを逃すのか!?


 この痛みもそうだが、それ以上に〈俺の何か〉がそう判断した!

 いいからやめろ!


 ………後悔しても知らないからな。


 別人格の俺がそう言ったとほぼ同時に激しい頭痛は消えていった。


「「「………はぁ。」」」

 俺が溜息を吐くと同時にクミカとガブリエルも溜め息を吐いた。

「何故2人も溜息を?」

「心配したからだよ!!急に頭を抑えて苦しみ始めたんだから!!」

「大丈夫ですか?」

 ガブリエルから差し出された紙コップに入った水を飲み干して俺は再度溜息を吐いた。

「ええ。原因は分かっているのでご心配なく。もう対処はしたので問題もありません。とは言っても頭痛がしてからの周囲の記憶が曖昧ですが。」

 するとクミカとガブリエルは顔を見合わせて小さく頷いた。

「大丈夫。ただ声をかけていただけだから。」




 ~着信音~


 しばらくして、ゲームを再開しているとテーブルの上に置いていた俺のスマホにアフロからの着信が届いた。

「はいもしもし?」

 着信に応答すると奥からアフロの焦った声が聞こえた。

「ユウマくん!開通しちまった!!」

 @ODAKA_TAIYO

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 https://mobile.twitter.com/ODAKA_TAIYO

 ↑もし直接行きたい方がいればこちらからどうぞ!↑

 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

 最新話を投稿した時は呟きます!

 もしなろうに登録してなくて、指摘や依頼が言えなかった方はTwitterで是非送ってください!

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