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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
66/73

7-9

「これは一体………。」

 風もなく浮かび上がった男をた眺めていると、突然体の重さが無くなったのを感じた。

 すると今度は俺とクミカが意図せず、男と同じように空中に浮かび上があがったのだ。

「それでは向かいます。」

 男がそう言ってまた俺達に背を向け、崖の遥か遠くに見えている建物へと向いた次の瞬間。

 男と俺とクミカは助走なく高速で崖の向こうへと放り出された。

 しかし俺達が重力に捕まり落下する事も、放物線を描くこともなく、ただ空中を高速で直線移動していた。

 さらにこれだけの高速なら強風に襲われるはずだがそれ程の風は来ず、軟風程度の風が吹き抜けるだけだった。

 そんな風の中を運ばれるように飛んでいると、森から少し離れた草原に見覚えのある生物が目に見えた。

「あれは……恐竜?」


 6500万年前に絶滅したとされる恐竜。

 鳥と姿を変えて現在も生き残っていると言われているティラノサウルスなどの獣脚類。完全に絶滅したとされているトリケラトプスなどの鳥盤類、ブラキオサウルスなどの竜脚類。

 そんな過去の地球の支配者達が眼下の草原を闊歩していたのだ。


 この信じ難い現実を可能にする2つの答え。それを1つに絞るために俺は口を開く。

「アレは蘇らせたのですか?それとも……。」 

 今は聞いたところで何という事もないが、答えを知らないのはどうも気に入らない。

 しかし直立不動で俺達に背を向ける男は問うてもなお振り向く事はなかった。

 まあどうせ答えないのだろうと溜息を吐くと、男は小さく笑った。

「天然です。こちら側は地球での繁殖も絶滅も自然の摂理には逆らいません。」

 つまりは絶滅を逃れた恐竜がここに?………いやしかしどうやって。

 自然の摂理に逆らわないなら自然の絶滅から救うような真似はしないだろう。

 つまり自然に恐竜がここに来た、もしくはいた?


「もう少しで着きますよ。」

 上空を通過し、今は俺達の後ろにいる恐竜に視線を向けていると、男が言った。

 前方に視線を移すと、崖の上から見たときは小さかった建物が目の前に見えていた。

 建物は結晶を囲むように規則的に並んでおり、結晶に近づくほど緑が多かった。

「………。」

 走っても数時間はかかる距離を数分で………。

 すると草原を一望できる高さにいた俺達は徐々に高度が下がっていき、地上1メートル程の所まで下がると突然重力に捕まった。

「っ。」

「っとっと。」

 俺とクミカが着地すると、同じく着地した男が俺達の方へと振り返った。

「ここが私達の国です。」

 そう男が言った周囲には高層ビルを思わせる。しかし窓1つ、それどころか建材の隙間や境目1つない無い、ただ巨大な金属の棒を地面に突き刺しただけのような建物が、芝生のような背の低い草が一面に生えた道に沿って聳えていた。

「それで?ここに呼んだという事は自分達に何か?」

 すると男は小さく笑った。

「私達にはありません。ただユウマ様にはあるかと思いまして。」

「恐ろしいものですね。」

 苦笑しながら呟くと男は首を横に振る。

「心が読める訳ではありません。ただ私達はそちら側で言う〈勘〉と言うものが良いのです。」

 勘か………。

 男に嘘を付いている様子は無かった。もちろんクミカやラファエルなどのように感情が読めない訳ではない。

 しかし俺達側で見る一般的な人間とは大きく違い。ただの少しも裏表が無かった。


「では単刀直入に言うと。自分達側とここを行き気出来るようにしたいのです。」

 男の言っていた〈最低限の関わり〉と〈特異な存在〉と言うのがどれほどの物なのかはわからない。

 一応最大限の理想は伝えたかが、最低でもここに来るだけの権利は貰いたい………。

「構いませんよ。方法はワームホール式でよろしいですか?」

 俺の考えに反して男は即答した。さらに最も望む方法までを用意して。

「あー………契約などはしなくてもいいんですか?」

 すると男は「した方がよろしいですか?」と小さく笑った。

「いえ。自分達側との関わりは最低限の言っていたので。こう条件もなく長期的な関わりを認めても良いのかと思いまして。」

「ここに来れているという時点で信用に値しますので。」

 優しく笑った男は「条件ではありませんが必然的に必要な事はあります。」と付け加えた。

「と言いますと?」

 しかし男が答える事はなく、間近に見えている巨大な結晶に目を向けた。

「それでは必要な物をお渡しします。詳しい話は歩きながらにしましょう。」



「なるほど。お二人とあと二人でそちら側の人間に見つかっていない生物を……。」

「ええ。そして万が一の場合の避難所としてここを使いたいのです。」

 壁に生い茂った苔やツタが明かりを遮った薄暗い路地裏のような、建物の間の細い道に入って俺達は話を続けた。

「分かりました。ただこちら側は自然環境は過酷です。かといって、例え避難してきてもこちら側から動いたら訳では無い場合は助けたり守ったりする事が出来ないのはご了承ください。」

 なるほど……そちら側にはそちら側の行動意思があるという事か。

「分かりました。」

 すると薄暗い細い道から明るい大通りへと抜けた。

 

 そこは最初のような道ではなく背の高い草や若い木が生え、建物は壁面が見えないほどにツタや苔などの植物が生い茂っていた。

 中には建物を飲み込むように巨木が育っている物まであり、廃墟のようになっている。


 そんな道を横切るように草を掻き分けて進んで行く男に俺とクミカは黙ってついて行った。


 こうして何かしらの行動をしている時にいつも思う事がある。

 今までしてきた事の大半の発案者であるクミカはいつも黙っているのだ。

 ただ発案した事を実行できているから黙っているのか、単に飽きているのかは分からない。

 まあ聞けばいいのだろうが、今は読めないクミカの思考や感情をいつか読めるようになってから知ればいいと思っているのは俺の意地なのだろう。



「着きました。」

 進む方向からどこに向かっているかは分かっていたが……。

 さっきの廃墟のような道からさらに細い道を通った俺達は水晶の根元へとやってきた。


 目の前に生える結晶を見上げると、再度その大きさを感じさせられる。

 結晶には建物に着いた物以上にツタや苔、木までもが結晶が見えないほどに生えていたが、上に行くほどそれは減っていき途中からは結晶がただ光っていた。


 男がその纏わり付いた草木をずらすようにして動かすとその隙間から結晶の光が漏れ出る。

 男はどこからか掌程の結晶を取り出すと、緑の隙間から巨大な結晶へと近づけた。

 すると小さな結晶はまるで蓄えるかのように巨大な結晶から光を吸い、光り始める。

「ではこれと……これを。」

 数秒して男が結晶から離れると、巨大な結晶から離れても光り続ける小さな結晶、そして金属の小さな立方体を渡された。

「これは?」

「それを行き来したい場所にそのキューブを置いてください。あそはそれに触れるようにその石を置けば私達がそちらに出向いて準備いたしましょう。」

 これがエネルギーのような役割をしているのか……。

 俺はその2つを受け取り、結晶にガムテープを巻いて空の水筒の中に、そしてキューブをコンタクトケースの袋に忍び込ませた。

「これはもう少し後に作動させたいのですがいいですか?」

 男は笑みを浮かべ頷いた。


「それではそろそろお送りいたします。」

 男がそう言うと、身体の重さが無くなったのを感じた。




 今度は森を歩く事なく河まで飛ぶと、最初に着いた場所でスモールが待っていた。

「お二人を任せました。」

 俺とクミカがバングルを返してスモールの口の中に入ると、男はそうスモールに向けて言った。

「ではまた。」

 そして今度は俺とクミカに向けられた言葉を聞くとスモールの口は閉じられた。

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