7-6
「さてと………。」
最初に仙爺に連れてこられて以来、ほぼ毎日通っているこの森に私は座り込む。
まあ虫とかはお断りだからレジャーシートは引いてはいるけど。
「………どうしたものかな。」
スマホにインストールされた〈アフロ2〉というアプリ。
私は今これを開くかどうかで、葛藤していた。
正直頼み自体は引き受けてもいい。ただ、このアプリを開いた瞬間〈アフロ先輩大好き〉というパスワードを入力した事実が付いてくる気がするのだ。
もちろん仙爺がパスワードを入力したけど………。
「んーーー。」
森の中で1人、あぐらをかいて1人首を傾げていると遠くから話し声が聞こえてきた。
それは3人くらいで、ワイワイと賑やかな様子で私の方に近づいている。
誰?
「なんだっけ?夕方にこの森に来たら真っ黒の炎が見れるんだっけ?」
「そうそう。で、その炎の中に女の子がいるんだってよ!」
「なんか最近多いよなそういう都市伝説的なの。夏休み前にも騒いでたし。」
「ああ!あれだろ?校門に佇む燃える犬!」
「ブラックドッグ!!」
学園の生徒か。
それよりも、真っ黒の炎とその中に女の子って言うのが気になるな。夏休みが明けてすぐからずっとここにいるけどそんな物は見たことがない。
例えいたとしても幽霊系は苦手じゃないからいいけど……。
「っと。」
変に関わられても面倒だし適当に隠れよう。
えっとどっちから来てるかな。
立ち上がって周囲を見渡し、私はその声の主を探す。
人というものには意識していない場所、意識外の場所がある。
それは視界の隅だったり、沢山ある物の1つだったり。
3人を目視出来ればあとはそれぞれの意識範囲を確認してその外に隠れるだけでいい。
でも、そのためには目視しなきゃダメなんだけど……。
「………。」
もし目視しなくても確認出来たとしたら………。
「「「うわぁぁぁ!!!」」」
すると突然背後から叫び声が聞こえた。
ってまずい!!気付かれた!!!
思わず考え込んでいたら気付かないうちに近づかれていたらしい。
気付かれた以上仕方ない。催眠で一度眠らせる!
善は急げ。これが善かどうかは分からないけどとにかく急げ。
しかし勢いよく右に振り返ると目の前が真っ暗になった。
「っ!?」
突然の事に困惑していると3人の叫び声は遠くへと行ってしまった。
逃げられてしまってはもう追いつけない。私は体力もないし……。
ブチッ………。
未だ真っ暗闇の視界の理由を探ろうと目元に手を当てると、長い髪が目元を覆っていた。
「あれ……。」
髪を手ですくと、いつも左右で結んでいるうちの左の髪ゴムが切れていた。
あの3人どうしよう。
というかあの急いでいる瞬間に切れるなんてツイてないなぁ………。
切れた髪ゴムを顔の前で揺らしているとふとその切れた部分に違和感を覚えた。
「………焼けてる?」
髪ゴムの切り口はまるで燃やされたかのように焦げていた。
「というか………。」
ゴムが切れた音がしたのいつだっけ?
そんな事を考えていると手に持ったままだったスマホがバイブレーションした。
「あ………。」
画面をみるとそれは知らぬ間にタップして、開いていたらしい〈アフロ2〉のアプリだった。
「あぁ!!!」
・南極
「どうしましょうか。」
「どうしましょうね。」
クミカに問いかけるとおうむ返しされた。
数秒前に現れたニンゲン。
最初こそは警戒はしたがそこからニンゲンが動く事はなく、俺達の立つ氷に前傾姿勢で手をつき、腹から下が海に入ってもなお俺達よりも巨大なニンゲンを俺とクミカは呆然見上げていた。
「あー………。おいお前、言葉は分かるか?」
そう声を上げて問いかけるとニンゲンは大きさゆえかゆっくりと首を傾げた。
「分からない……のでしょうか?」
「日本語だからじゃない?」
なるほど。
俺はもう一度「言葉は分かるか?」と英語で問いかける。
「あ!」
するとニンゲンは頷いた。
「正解だったようですね。」
隣で「ふふん!」と粋がっているクミカをよそに俺は問い続ける。
「話せないのか?」
するとニンゲンはもう一度頷いた。
「んー、あんまり詳しい事は聞けなさそうだね。」
クミカの言う通りだな。
「なら単刀直入に聞こうか。地下世界、もしくはそれに準ずる現在人類に見つかっていない場所がこの付近にあるか?」
ニンゲンは頷く。
俺とクミカは顔を見合わせ頷いた。
なら聞く事は1つ。
「さっき言った地下世界、もしくはそれに準ずる現在人類に見つかっていない場所に連れて行ってくれ。」
するとニンゲンは首を縦に振った。
「………こいつタダ頷いてるだけじゃないですか?」
思い浮かんだ疑問を口にするとクミカは小さく唸った。
「じゃあNOになる質問をしたら?」
「まあそうするしかないんですが……。」
俺は適当な質問を考えて言葉にする。
「お前は男か?」
するとニンゲンは首を横に振った。
「大丈夫みたいですね。」
「一応他にも聞いてみたら?」
クミカの提案に俺はニンゲンに質問を続ける事にした。
「お前は女か?」
ニンゲンは頷く。
「人類は危険か?」
ニンゲンは頷く。
「ゾウリムシを見た事はあるか?」
ニンゲンは首を傾げながら首を横に振った、
知らないのか。
「お前に名前はあるか?」
ニンゲンは頷いた。
あるのか。
「なんて言うんだ?」
するとニンゲンは海岸の氷に俺1人分ほどの大きさの文字を一文字ずつ書いては消しを繰り返した。
「S・M・A・L・L……SMALL。スモールか。」
その見た目とは正反対の名前に俺は頷き、手を差し出す。
「俺はユウマだ。」
「私はクミカ!!」
そしてクミカも俺と同じく手を差し出した。
ニンゲンは少し困惑した様子を見せると恐る恐る手を伸ばし、そっと人差し指を俺とクミカの手の平に触れさせた。
「ちゃんと言葉は通じてたみたいだね。」
笑みを浮かべたクミカの言葉に「えぇ。」と答えるとクミカは「じゃあ最後に1つ!!」と手を挙げた。
「人間を食べた事はある!!?」
そんなクミカの問いに俺はため息を吐く。
「そんなこと聞いてどうするんで」
そう言っている途中。俺に向かって「えへへ。」と無邪気な笑みを浮かべるクミカが映る視界の隅でスモールが頷いたのが見えた。
「「え?」」
俺とクミカは瞬時にスモールに向き直る。
「………あるんだ。」
さっきまでの笑顔が消えたクミカが呟いた。
・海星学園 裏山 森
「あぁ………。」
開いてしまった………。
私は森の中、ツインテールの片方が解け四つん這いで絶望していた。
「ま、まあ!パスワードは私が打った訳ではないですし!!」
どこの誰にでもなく言い訳をしているとまたスマホが震えた。
「ん?」
画面を見るとそこにはアカウントの登録のような画面が表示されていた。
名前と性別は必須で、住所とか身長体重は任意………。
そのデータいる?
画面をスクロールしていくとその任意入力の情報にはスリーサイズなどもあり、はてには家族構成という欄までがあった。
「絶対いらない。」
そう自問自答しながら答えられるだけの質問に答えて私は次の画面へと進んだ。
画面に今ので登録が完了した事を伝える文と……。
「このアプリは音声認識をオンにすると声だけでアプリか操作できます……か。」
まあ音声アシストみたいなものかな。
私はアプリ内で表示された〈音声認識をオンにしますか。〉という設定に〈オンにする〉という部分をタップした。
そしてその画面一番下までスクロールすると自動的に次の画面へと進んだ。
その瞬間。
「おお!!トウカちゃん!!アフロ先輩が大好きなのか!!」
そう画面の奥に映った、本物ではなく3DCG調のアフロが発した言葉に、私のスマホの画面にヒビが入った。
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