7-5
「なんとか足がかりを見つけました。取り敢えず今分かっている情報を伝えます。」
1日でそこまで行けたのなら十分か。
すると電話が長くなると思ったのかクミカは海岸に立つペンギンに向かって走っていった。
「お願いします。」
俺はクミカの後を歩いて追いながらガブリエルと会話する。
「今回以来主の国は地下世界と過去に2度以上の接触があったようです。なんでも以前行われた大規模観測作戦時に指揮官だった少将が航空機でその世界に迷い込んだとか。」
「それは有名な都市伝説では?」
すると電話の向こうからため息交じりの唸り声が聞こえた。
海岸に着き、先にペンギンのしゃがみこんで眺めていたクミカの後ろに立ち俺はガブリエルからの返事を待っていると、また海から潮吹きの音が聞こえた。
「その都市伝説が事実のようです。そしてそれが根拠になっているかと……。」
なるほど。どこからか漏れた情報が広がりすぎた故に都市伝説と認識された……。確かに納得できない事はないが、不自然でもあるな………。
「その少将が地下世界へと入った場所は都市伝説では北極や南極、中にはその両方と少し曖昧ですが。この国の情報では南極のようです。」
でなければ俺達を南極には呼ばないだろうな……。
「そして詳しい場所ですが………。」
とガブリエルが切り出した瞬刻。今度はさっきよりも近い場所でまた潮が上がった。
「今回私が手に入れた情報では、少将は南極点付近上空で地下世界へ迷い込んだようです……。」
南極点?クミカが遊んでいた時には異常はなかった……。
〈上空〉というのが関係するのか?
つまり地上からは行くことが出来ず、上空からでしか行くことは出来ない場所……。
……天空都市。
「フッ………。」
あまりにバカな己の考えに鼻で笑うと通話の奥から「ん?」とハテナが浮かんだ。
「どうかしましたか?それに先程から鯨の潮吹きのような音もしていますが……。」
ガブリエルは音を聞いて正解を出した。
「正解です。」
そう言うと、まるで答え合わせをするかのようにもう一度潮が吹かれた。
「どうやら鯨の進む方向と同じ方向へ進んでいるらしく、しばらくの間並行しているんです。」
すると鯨のジャンプ(ブリーチング)をしようとしているのか、波を立てながらその巨体が現れ………た。
おそらく俺とクミカを向いているソレを俺達は何も言わず眺める。
「ん?」
通話の奥からはガブリエルが「どうかしましたか?」と話しているが、取り敢えずは首を傾げたクミカに答えよう。
俺は耳に当てていたスマホを下げてクミカに答える。
「どうかしましたか?」
「もしかしてアレ、こっちに来てない?」
「もしかしなくてもこっちに来てますね。」
荒波を立てながら俺達向かって進んでくるソレから目を離さずに俺はスマホを耳に当て直す。
「もしもし。」
「何かあったようですが大丈夫ですか?」
「………説明する暇がなさそうなので後でまた掛け直します。」
そう言って通話を切り、スマホをポケットに入れる頃にはソレは俺達の眼前に佇んでいた。
二本の腕と手には五本の指が揃い。目や口もあり、強いて言うなら首にくびれがない程度の、人間とほぼ同じシルエット。
しかしソレは人間とは違い、鯨のように背中側は黒く腹側は灰色の滑らかな肌。
そして、鯨のような大きさだった。
「ニンゲン。」
・海星学園 裏山 合宿棟
「さてと、来ましたよー。」
授業が終わり、今となっては来るのが生活の一部になった合宿棟に来た私は靴を脱ぎながら中にいるであろうアフロに呼びかける。
「?」
しかし返事はなく、どうせまたパソコンいじってて周りが見えてないのだろうと、最初に来て以来基本的な活動スペースになっている、昨日ひたすらダウンロードをさせられた部屋を覗き込む。
「あれ?」
部屋の中にはアフロはおらず、その代わりに仙爺が湯呑みをすすっていた。
「む?アフロならここにはおらんぞ?」
「はあ!?」
呼んだくせにその呼んだ本人がいないって………。
ふと机の上を見るとそこには「トウカちゃんへ」と書かれた手紙が置かれていた。
手紙を手に取り、二つ折りされた紙を開くと中には長々と文が書いてあった。
またなんで手紙で………。
私は少し面倒な気持ちを抑えて最初から文を読み始める。
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トウカちゃんへ
これを呼んでいる頃私はもういないでしょう。学園には笑
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ふざけるな。
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なんて冗談は置いといて。
今俺はユウマ君に任された仕事をしなきゃならんからこんな形で伝える。
その伝える方法がこんな手紙なのは悪い。ハッキングやらが面倒だからメールは使えなかったんだ。
さて、本題に移るがトウカちゃんにはある物を育てて欲しい。
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育てる?
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昨日トウカちゃんにダウンロードして貰ってたのは俺が作ったあるAIを育てるためなんだ。
そのAIは乳幼児のような性質を持っている。つまりは子供を成長させるような物だ。
そしてそのAIには昨日ダウンロードしてもらった様々な情報を含め、俺が物心ついた時から付けている日記を覚えさせている。
結果的に言えばそのAIは俺に似た性格の超賢いAIって事だ。
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ちょっとアフロが日記をつけているというなんとも気持ち悪い事実に、他の事が頭に入ってこないです。
と言うかなぜアフロに似せる必要が………。
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まあ昨日の夜に完成して試しに会話してみたんだが、まあまあ自然に会話できる程度ではあった。
ただAIからの質問が多かったりしてな……。
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なるほど。それを会話して覚えさせろと。
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まあそれはインターネットと接続して検索させる事で解決はしたんだが。
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じゃあ言わなくていい!
なら結局私に何をして欲しいんですか。
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そろそろ何をすればいいのか分からなくてイラついてる頃かな?
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うわ腹立つ。
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まあ何をして貰いたいかと言えば、そのAIにいろんな経験をさせて欲しい。
学校に行く時や、買い物に行く時、人と会話する時を体験させてより人間に近付けて欲しいんだ。
まあ逆に言えばAIとは言えど多少のプライベートを覗かれると言う事だ。もし本当に嫌ならやらなくても構わない。
そこはトウカちゃんに任せるぜ!
ああ。もし引き受けてくれるなら下のURLからアプリをダウンロードしてくれ。
パスワードは〈アフロ先輩大好き〉だ!!
アフロ
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ふざけんな!!!!
私は手紙を投げ捨てて立ち上がる。
例えやるとしてもそのパスワードだけは打ちたくない。
ちょっとやってみようかと思ったけどパスワードのせいでやる気が失せた。
「トウカ。」
帰ろうと荷物を持つと後ろで仙爺に呼び止められた。
「スマホを忘れとるぞ。」
そう言う仙爺の手には私のスマホが持たれていた。
「あれ?」
ここに来てスマホ出したっけ?
そんな疑問を抱きながらも私は感謝を言葉にしてスマホを受け取った。
「あとアプリはインストールしておいたぞ。」
すると仙爺はそんな事を言い出した。
「え!?」
いやいや、そんなわけ。
スマホを開くとそこには〈アフロ2〉と書かれたアプリがインストールされていた。
「ホンマや………。」
………ん?
「というかなんでロックをかけてるのにスマホを開けたんです?」
私は基本指紋認証を使って、パスワードで開ける事が滅多にないから知られるはずなんでないのに………。
すると仙爺は「フォッフォッフォッ。」といつもは言わないような笑い方ではぐらかした。
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