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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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7-3

「そっか、4億5826万円分の仕事10個の内の一つ…。いくら国から見た4582万6千円が少ないと言っても、無いものを探すって事はしないはず。」

 クミカは口元に手を当てて呟いた。

「つまり少なからず確証を持っているという事です。」

 その俺の断言に今日は驚く者はいなかった。

 この場にいる4人はそれぞれが一つの考え方として気付いていたのだろう。


「…分かった。とりあえず無いという確証が取れるまでは探してみよう。」

「金を貰うんだ。例え無いと確証出来ていても探すだろ?」

 俺の言葉に鼻で笑ったネイトに俺は肩をすくめて返事をする。

「今回の依頼は〈探す〉であって、〈見つける〉ではない。〈国の確証〉がなければ今頃物理法則を並べて帰り支度をしていただろうな。」

 ネイトは「そりゃマズイ。」と本気の苦笑いを浮かべると、すぐに真面目な表情になった。

「基本はあんたら2人には自由に調査をしてもらう。必要な物や人員は言ってくれれば用意しよう。」

 なるほど、下手な監視は逆に足手まといになると気付いていたか。

「なら早速で悪いが荷台付きの2人乗りスノーモービル一つとアフリカ側の最寄りの別基地に行けるだけの燃料。10日分の食料を2つ。防寒具2人分。あとお前らが探索をする時の基本装備を2セット。1チームに1つの物も2つ用意しておいてくれ。」

 最低限の物一通り言うとネイトは笑って「分かった。」と了承した。


「話が進むところ申し訳ありませんが私が付いていく事もお忘れにならないように。」

 全ての準備が2人分という事にガブリエルが入っていない可能性を感じたのだろう。

「もちろん忘れていませんよ。」

 完全記憶能力を持った俺が忘れる訳がない。

 入ってはいないがな。

「ガブリエルさんにはやって貰いたい事があります。」




 夏の南極では日が沈まない。

 そんな夜中の太陽に照らされる中、広大な雪原には少し寂しいクミカの鼻歌が淡く響く。

 その横でネイトが用意した物を確認していると、「行く?」と基地近くの南極点をぐるぐると回っていたクミカが駆け寄ってきた。

「ええ。とりあえず最寄りの別基地を通って海に向かいます。そこから時計回りに動きましょう。」

「オッケー。」

 そんな会話をしていると確認済みの荷物を荷台に積み終えたネイトが一息吐いた。

「にしても荷物の確認なら基地の横でやれば良かったんじゃねぇのか?」

 スノーモービルにまたがりエンジンをかける。

「クミ先輩が行きたいと言い出したんですよ。」

 俺の後ろに乗ってきたクミカに目を向けると「だってある意味地球一周でしょ?」と笑った。

「まあ確かに経度で見れば地球一周だが…。」


「さて、行きますか。」

 ネイトの不満げな呟きを聞き流してそう言うと後ろの防寒具を纏ったクミカは防寒フルフェイスマスクで顔の下半分を隠し、ゴーグルを着ける。

「燃料補給の他基地への連絡は任せた。」

 そして同じく、フルフェイス防寒具とゴーグルを着けて全身防寒具になった俺はネイトへの頼みを確認してアクセルを開けた。




 ・海星学園 裏山 合宿棟

「よっこいせっと。」

 ユウマ先輩達が行ってすぐ私は合宿棟の教室に戻った。

  カマイタチの時に寝室になったこの教室は、今や机や座布団が置かれ、第2の部室となっている。

 その真ん中に置かれたちゃぶ台でノートパソコンを開いて海星学園について調べていると、奥のPC室へと続く廊下を忙しなく行き来していたアフロが大きなダンボール箱を2つ持って部屋に入ってきた。

「さっきから……というか最近ずっと荷物を運び込んでるみたいですけど何をしてるんです?」

 するとアフロは「ふふ~ん。」と鼻で笑うと。

「お・た・の」

「ならいいです。」

 言葉を遮り、部屋を出ようと立ち上がると「ウソウソウソ!!!」とアフロに引き止められた。

「じゃあ何をするつもりなんですか…。」

 ため息混じりにそう言うとアフロは真顔で

「いやまあそれは言わねぇけどよ。」

 と返した。

 コイツ………。

「ちょっと手伝って欲しい事があるんだよ。」

「仕事なら私にもあるんですよ?」

 するとアフロが「分かってるって。今回は別だよ。」と笑った。

「辞書を片っ端からダウンロードして欲しいんだ。」

 また情報…。

「それくらいなら構いませんが…。」

「そうか!じゃあ早速頼む!俺のノートパソコンを使って日本の国語辞典、漢字辞典、文法辞典。あと同じ要領でアメリカ英語、イギリス英語、中国語、韓国語、ロシア語、台湾語、アラビア語の国語辞典と文法辞典をダウンロードしてDCっていうソフトに入れといてくれ!」

 多いな………。

 まあ少し行き詰まってたところだし気晴らしにはなるか。

「分かりました。アフロ先輩は何をするんです?」

 そう目を向けるとアフロは箱からスキャナーを取り出してコンセントを差し込んでいた。

「俺はネットの世界じゃ手に入れられない物をちょっとな。」

 ネットの世界じゃ手に入れられない物………?

「ああそうだ。日本語を入れる時は方言に関する辞典も入れといてくれ!」

 要望が多いな…。

「分かりました…。」

「んじゃ!取り敢えず今言った奴をダウンロードしちゃってくれ!」

 受けなきゃよかった………。




 ・南極 某基地2

「連絡は来ていましたが。まさか日本人とは思いませんでした。」

 そう言って日本人の女の基地員は笑った。

 ネイトに頼んだ通り、別の基地にはスノーモービルの燃料補給の話は通っていたな。

「ええ。今回は調査の為に来ました霧崎 優真と早見 紅弥香です。」

 そう言って手を差し出すと女の基地員は俺の手を握る。

「ここの基地で働いている者です。」

 自己紹介は無しか……。

「では燃料を用意しますね。」

 ここに来るまでに使い切り、空になった大量の経由用ポリタンクを俺から受け取った片手に2つずつ持ち女は基地の中に入っていった。

「手伝いますよ。」

 そう言って一度では運びきれなかったポリタンクを持って出入り口から中に入ろうとすると、女が俺達を止めた。

「すいませんが他基地の人間を入れる訳には行かないので………。」

 結果的に外で待てと言った女は少し俺達に警戒しながら基地の奥へと入って行く。

 そして俺とクミカは基地の出入り口すぐ横に止めていたスノーモービルの元で燃料を待つ事にした。

「あんまり歓迎はされてないみたいだね…。」

 あからさまに警戒されていたな。

「まあ突然他国別基地から燃料をくれと言われ、素性の分からない若者が2人来るんです。不信感を抱かれるのは当たり前でしょう。」

 とは言っても、俺達と同じ国籍の基地なら少しは情報が貰えるかと思って最初にここを選んだが……。ここまで警戒されるとは。



 少しすると基地の扉が開き、重たそうにポリタンクを持った女が出てきた。

「来たみたいですね。」

「だね。」

 基地を出入りして大量のポリタンクを基地の外に置いた女に俺とクミカは近づく。

「感謝します。」

 すると女は「いえ。」と申し訳無さそうに苦笑いを浮かべた。

「中にも入れずすいません。基地長からの指示でして。」

「突然の事でしたので仕方ない事です。」

 俺とクミカは笑顔で答えて燃料の入ったポリタンクを手に持つと「あっ!」と言う女の声に引き止められた。

「もしよろしければこれを…。」

 そう言って差し出されたのはラップに包まれたおにぎりだった。

「基地長が渡してくれと。基地長も意味なく中に入れなかった訳ではないのは分かってもらえると助かります。まあ、食料は持っているとは思いますが………。」

 俺は「頂きます。」と女からおにぎりを受け取ると、女は純粋な笑みを浮かべた。




「いい人だったね。」

 俺の運転するスノーモービルで白銀の世界を進んでいると後ろに座るクミカからおにぎりを渡された。

「ええ。」

 受け取ったおにぎりのラップを片手で運転しながら外し、そして顔に冷たい風を受けながらまだ少し暖かいおにぎりを口に運ぶ。

 一応毒味という事でクミカが食べる前に食べたが毒の味はしなかった。

 まあ単純に善意か………。

 そう考えながら俺は2口目を口に運ぶ。

「………。」

 しかし、2口目を噛み切った俺には〈善意〉と言う考えは残っていなかった。

「はぁ…。」

 俺のため息にクミカは「どうしたの?」と後ろから覗き込でくる。

 手に残った食べかけのおにぎり。その噛み切り口からは米粒程度のマイクロチップが見えていたのだ。

「おそらくGPSでしょう。クミカも気をつけてください。」

 あの女に何かを隠したり嘘をついたりしていた様子はなかった。基地長がやったのだろう。

 クミカは「分かった。」と言うと俺の後ろに座り直した。

 さて。何かしらを仕掛けられた以上。南極では皆、他よりも先に〈何か〉を手に入れたがっていると言うことだ。

 その〈何か〉が地下都市でないことを願いながら俺はマイクロチップを噛み砕いた。

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