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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
58/73

7-1

 ・海星学園 裏山 合宿棟

「ではしばらく留守にします。」

 合宿棟のグラウンドに着陸した車を背にトウカとアフロに挨拶をする。

 その俺の後ろではクミが荷物を積み込んでいた。

「任せろ!何かあったらすぐ連絡する!」

 そう胸を張るアフロにトウカは冷たい視線を向けていた。

「カッコつけてますけどアフロはまだ何もしてませんからね?」

「勝手に行動される方が困ります。」

「だね。」

 荷物を積み終わり俺の隣に立ったクミカは呟いた。

「まあ場所が場所なので無いとは思いますが、間違っても来ないようにしてください。」

「わぁってるって。〈穴〉の方は2人が行ってる間に作業ははじめとくぜ。」

 アフロの言葉に頷き、承諾を伝える。


 少しの間の後アフロは「んじゃ俺はやる事あるから!がんばれよぉ!!」と合宿棟内へと入っていった。

 すると出発の準備が整ったのか背後の車のエンジンがかかる。

 クミカはもう車の中に入っていて、俺とトウカだけが残されていた。


「トウカちゃん。」

 出来るだけ優しく。

 最近。特にアフロに仕事を任せてからというもの、自分だけ仕事を任せてもらえないことからかトウカはどこか疎外感を感じているようだった。

 しかしトウカはそれを隠そうとしているのか、今もまた無理矢理笑みを作って俺に顔を向けている。

「はい!」

 ………。

「自分は………。いやトウカちゃんにはもうバレてるからいいか。〈俺〉は参加して欲しくないと言いながらもアフロ先輩に仕事を任せた。でもそれはあくまでアフロ先輩なら可能だと判断したから。」

 その言葉にトウカは表情を曇らせた。

「だからトウカちゃんにも頼みたい事がある。」

 そして次の言葉にトウカは「え?」と驚きの表情へと変わった。

「驚いているみたいだけど俺は最初からトウカちゃんもアフロ先輩も必要と思ってる。事実レオとの電話ではトウカちゃんが気付いてくれなかったらマズかった。」

 言葉を進めていくたびにトウカの表情は柔らかくなっていく。

「この間アフロ先輩が言ってた〈2人を危険に巻き込みたくない〉っていう話は間違いじゃない。だから可能だと思っていても参加してほしくなかった。」

 なのに。

「でもアフロ先輩はその点を押さえた上で仕事を持ちかけてきた。だから任せた。」

 何が言いたいか分かったのか、トウカは優しく笑い聴き続ける。

「〈安全〉という条件が守れるのなら、トウカちゃんに仕事を任せたい。」

 言葉にされた事が嬉しかったのか、トウカは笑顔のまま涙を浮かべた。

 そして。

「はい!!!」

 と答えた。




「よかったの?アフロ君だけじゃなくてトウカちゃんまで。」

 車に乗るとクミカはニヤニヤと笑みを浮かべながらそう言ってきた。

「どうせ聞いていたんでしょうがもう一度言うと、自分は初めから2人のことは高く評価しています。」

「でもそれはあくまでも一般的な人間の中ででしょ?」

 耳が痛いな。

 あれだけマンガや小説の主人公みたいな事を言いながら、事実そう思っている。

 だがまあ2人は最近、仕事への参加を拒否されたからか疑心暗鬼になっている節があった。それを解消できたのなら十分だろう。

「………。」

 ………?

 

 なぜ俺は解消させたんだ?


 見えた!!!


 日常生活中はあまり出てこない、別人格の俺が突然声をかけてきた。

 驚かせるな。お前は物理的な気配がない分タチが悪い。


 今一瞬君の内側が見えた!


 何?


 でもあの感覚は内側いうよりかは隠れていた…隠されていた?…俺と?


 俺?


 そう、俺。君から見たら別人格の俺。


 どういう事だ?


 さっき君が矛盾に気づいた瞬間俺と何かが繋がった感じがしたんだ。


 その何かは分かるのか?


 分からない…。


 そうか。だが糸口は見つかった。なるほど、たしかにお前も俺の内側だ。


 って言っても今はその繋がりも無くなっちゃったけどな。


 さっきは俺自身の矛盾に気付いて繋がったんだ。条件は矛盾に気付いた時か、それ以外にあるのか。どちらにせよ今は繋がっていないんだろ?なら、また繋がってから詳しく考えるしかない。


 ……そうだな。まぁ俺は俺なりに探してみるよ。


 あぁ。任せた。


「ユウマ君?」

「はい?」

 別人格と話し終えたと同時にクミカが顔を覗き込んできた。

「なんか考え事してるみたいだったから。」

 今となってはトウカやアフロはもちろん、道行く全ての人の思考を読めるようになった俺はなぜか、クミカの思考が未だに読めない……。

「自分も考え事くらいはします。」

「ま、それもそっか!」

 スイッチをきりかえたかのように笑みを浮かべたクミカは鼻歌交じりで流れる窓の外を眺めた。




 ・東京国際空港

「ここに来るのはレオの時以来ですね。」

「そうだね。」

 兵庫から車でここまで来た途中、ガブリエルの運転する車は国会議事堂に置いていきその後はタクシーで空港まで来た。

 今回の仕事はスパイの仕事も含まれている。

 故に俺達が誤った情報、利益のための嘘の情報を教えないようガブリエル自身が付いてくるらしい。

「飛行機は30分後に出発です。荷物などはこちらで預けておきますので、時間まではごゆっくりお過ごしください。」

 そう堅苦い言葉を使うガブリエルは俺達のキャリーケースを押して行った。

「「………。」」

 そして俺とクミカはガブリエルの運ぶ荷物から自分のキャリーケースを取る。

「?」

 その様子を見たガブリエルは足を止めずに首を傾げた。

「自分の荷物くらいは自分で運びます。」

「だね~。」

 するとガブリエルは小さく笑った。




 ・飛行機内

「まさかプライベートジェット機とは…。」

「でもお陰で今回はハイジャックに合わなくて良さそう!」


 そう、一瞬で片付いたがU.M.A研究部はアメリカに向かう際ハイジャックにあっている。

 まあ心理学を覚えた今となっては、その時のトウカの表情や動きを見てみると、怯えるどころかむしろ好機と考えて俺にもたれかかっていた。どうせ吊り橋効果とでも考えたのだろう。

 …考えてみればあの時のトウカは怯えていなかったな。俺や情報屋とまでは行かなくとも殺気は放っていたが…。

 ん?

「クミカはあの時寝ていたはずでは?」

「………あは?」

 寝たふりか。

「全く…。」

 呆れて窓の外に目を向けているとクミカはバックから小さな将棋盤を出した。

「どうせ退屈なんだし一局どう?」

 ………ほう?




「負けちゃったかぁ。」

 確かに俺は勝った。しかし…。

「300手もかかるとは…。」

「さ、ジュースでも飲ーもっと!」

 クミは「疲れたー!」と、設置された冷蔵庫を開けて中を物色しはじめた。

 今回の勝負はまさしくいい勝負だった。

 初めこそ互いが互いに最善の手を出した。相手の手を消し、相手を誘導し、相手の思考を読む。

 しかしそれはクミカが最善ではない手を出した瞬間に破られた。

 最善ではない手は最善の手を破る。

 事実俺も同じような考えをしていた故にすぐに理解できた。

 そして戦いは乱れに乱れ、結果362手という長期戦の後、俺が勝利した。

 まあ長期戦と言えど俺とクミカは約数秒で指し合っていたために、時間としては一時間弱で終了した。


「さすが最善を破るための最善の手を教えるだけはある。」

「懐かしい屁理屈だね。」

 オレンジジュースの瓶を2つ持ってきたクミカは1つを俺の前に置いてそう言った。

「屁理屈ではなく事実です。」

 それよりも。

「今度は協力するのはどうですか?」

 以前アメリカでアフロが買い、今となってはそれぞれが完全に私用しているU.M.A研究部員に配られたノートパソコン。

 持ってきていたそのノートパソコンにストラテジーゲームを表示させてクミカに見せる。

「いいね〜。」

 そう笑みを浮かべたクミカは自分のバックからノートパソコンを取り出した。

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