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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
57/73

4-1

 ・自衛隊駐屯地 監視室

「交代します。」

 仮眠開けで乱れた髪を後ろに流し、それを抑えるようにヘルメットを被る。

 そして銃剣を片手に形式上の警護を同僚に言うと同僚はあくびをしながら形式上の敬礼をして仮眠室へと向かった。

 ここからは最大限の注意が必要だ。

 自衛隊の駐屯地であるここの全ての監視カメラの映像が映るモニターを見張らなければならない。

 誰かが不法に入ってこないか、誰かが無断で銃火器を持ち出さないか。

 それを見張ることは、夜中2時の仕事の中では最も集中力が必要な仕事だ。

「………。」

 まあ、そんな馬鹿な奴はいないよな。

 そう心で笑う。

 そう、数ある駐屯地の中でもここには何かよほどの目的や悪巧がない限りは侵入者などそうそういないし、まして関係者ともなるとこの駐屯地の警備や力は知っている。

 監視カメラは赤外線の自動感知式。

 まぁ大丈夫だろう。

 訓練で慣れていると言っても仮眠はしんどいな………。


 そして1つのモニターの隅に映る満月を見ながら瞬きをして目を開けると。


 目の前のモニターの中で信じられない事が起こっていた。

 何十もの銃剣を持った自衛隊がたった1人の女の子にバタバタと倒されていたのだ

 信じられない。ありえない。寝てた?何分?責任。そんな今は手遅れな考えを振りのけて僕は司令に連絡をする。

「遅かったな。」

 通信機の奥からは落ち着いた野太い声が聞こえた。

「申し訳ありません。」

「構わん。相手はなんだ。」

 この落ち着きこそが〈最強〉と呼ばれる風格なのだろう。

「人数は1人の女。武器は所持していませんが現在十数人が負傷。負傷者から武器を奪取する可能性あり。」

「分かった。とりあえず他に侵入者がないか監視を続けろ。」

「了解!」

 ふとモニターに映る月を見ると瞬きをする前によりも大きくずれていた。


 それから少しして駐屯地内に警報が鳴り響いた。

 その音は眠っていた者たちを慌ただしく起こし、危機を伝える。

 部屋の外からはたくさんの足音が聞こえてきた。

 やられたと言ってもさっきのは警務隊。

 だがこの駐屯地にはまだ上がいる。


 カメラに映る彼らを見て僕は彼らの佇まいに鳥肌がたった。


 自衛隊オタクの僕が自衛隊になった理由。憧れと好奇心で僕の背中を押し、大きな壁を乗り越えさせてくれた存在。


 訓練や使用武器は一切公表されず、300人と言う少数精鋭の特殊作戦群。

 別称〈Sエス〉。


 侵入者への焦りよりも彼らの力を見る事ができると言う喜びが優ってしまう。

 そんな事を思う僕は自衛隊失格だろう。

 でも僕は自衛隊である前に1人の自衛隊オタクなのだ!!




 ・自衛隊駐屯地 施設脇

「侵入者は女1人。見た目とは違いかなりの力を持っている模様。射殺を許可する。」

 片耳に流れる報告を聞きながら、シールド持ちを前に覆面の300人は隊列で移動していく。

「にしてもたった1人に勢揃い、しかも射殺とは…。」

「私語を慎め。」

 郡長の注意に「ほーい……。」の軽く返事をして俺はため息を吐く。


 そしてその後、数人で侵入者を捕獲して俺達の仕事は終わる。


 はずだった。

「隊列を乱すな!」

 S自身、まさかたった1人に勢揃いのSが手こずるなど誰も思っていなかっただろう。

 その油断を突いたのか、はたまた実力なのか。

 月光に光る赤い髪で空を撫でる女は完全肉弾戦でSの数人を圧倒した。

 すると女は突然動きを止め、今まで速すぎて見えなかった素顔を見せる。

「………。」

 無言、しかし息が乱れる事なく、汗を流す事なくそこに佇む女。いや、高校生くらいの少女は息が止まるほどの美しさだった。

「………。」

 少女は隊列を組むSを順に見ていくと郡長で目を止める。

「………。」

 次の瞬間。少女は人間にはあり得ないような跳躍で少女を囲んでいたSの上を飛び越え郡長を指を指した。そしてその手を返し、伸びた人差し指を空に向かってクイクイと曲げ挑発する。

「ヤツは銃がお望みだ。」

 そう笑いを含んだ声が片耳に聞こえた。

 その言葉に答えるように俺達は銃を構える。いくら許可されているとはいえ、郡長は殺さずに済まそうとしていた。……故に手こずった。

 俺達は郡長に従う。故に〈殺す〉。

 あとは引き金を引けば彼女は死ぬ。

「はぁ……せっかくの美人なのに勿体ない。」

 すると発砲という確実な結果を持ったことの余裕からか「……ん。」と、隊員の数人が同意とは断定出来ないような声を上げた。

「打て!」


 弾倉1つ30発×300人。計9000発の弾をフルオート待った無しの数秒で撃ちきったあと……いや撃っている途中でもう俺達は気付いていた。

「っ!!!」

 声を上げる間も無く隊員1人を蹴り飛ばした少女が普通の人間ではない事に。

「次!!」

 思わず硬直していた俺達は郡長の声で我に帰り弾倉を付け替える。

「打て!!」

 その声に全員が引き金を引いた。

 音速の2倍以上の速度の弾が少女目掛けて真っ直ぐに飛んでいく。

 そしてその弾は少女の頭を撃ち抜く……。

「んなバカな。」

 前に、少女を避けるように弾き飛んだ。

 もちろんその一発だけではなく9000発の内、少女に当たるであろう弾を少女は全て避け、手に持った何かで弾き飛ばす。

 1度目は信じきれなかったが2度も見せられては信じるしかない。

 そしてその少女は初めて、笑みという形で表情を変えた。

「郡長。」

「あぁ。」

 そう言ってヘルメットなどの重装備を外しながら前に出た郡長はボディアーマーすらも脱いでS特注隊服だけになり、銃も隊員に渡して一本のナイフだけを手に少女の前に立つ。

「邪魔はするなよ。もし俺が負けても手は出すな。」

 「了解。」という299人の答えに郡長は小さく笑うと通信機を外し、投げ捨てる。

 そして唯一装備したままだったナイフを取り出し、投げたり回したり遊びながら少女を睨みつけた。

 郡長はすこし高く投げたナイフを取り、刃先を少女に向ける。


「一対一で俺と戦え!今からこれを投げる、地面に落ちたら〈本気〉でこい!」


 返事を聞かずに話を進める郡長はいつもの〈風格ある鬼〉のような低い声とは違い、どこかイキイキとした子供のように低いながらも声が弾んでいた。

「………。」

 少女は微笑むと小さく頷いた。

 郡長は肩や首を回してボキボキと音を鳴らして軽く飛び跳ね、ウォーミングアップをする。

 その姿を少女は何をするでもなく、ただ眺めていた。

「行くぞ。」

 ウォーミングアップの済んだ郡長は近接格闘術の…。いや、型は似ているけどところどころ甘い。代わりに鋭い。…あれは郡長オリジナルの構えだ。


 郡長はナイフを高く投げると、もう一度深く踏み込んだ。

 ナイフは回転しながら宙を舞い、満月の光を反射させる。

 徐々に速度は落ちナイフは一瞬空にとどまると今度は徐々に速度を上げながら地面へと落ちていく。


 そしてナイフが地面に、落

「ガハッ!!!」

 ちた………。

 それは余りにも早い決着。

 それはもう勝負や勝敗でも何でもない。

 争いが同じレベルでしか発生しないように。レベルが違えばそれはもう争うとは言わない。




 ・自衛隊駐屯地 監視室

「嘘だ!あの鬼の郡長が、瞬殺?」

 って!!

 僕は急いで通信機の電源を入れ司令に繋ぐ。

「どうした?」

「今すぐ逃げてください!!侵入者が外から!!!」

 すると通信機の奥から音割れした、爆発のような音が聞こえてくる。咄嗟にモニターに目を移すと、そこには女が外から崩壊させたであろう基地が映っていた。

「司令?司令!?」

 通信機からは返事はなく、モニターから詳しい情報を探していると通信機の奥から声が聞こえてきた。


「この駐屯地は全体的に警備が甘い。建物も脆い。出来ることなら全部地下に移したほうがいい。」

 助言?侵入者が?なんで……

「武器も弱い。人数も少ない。少数精鋭もいいけど、質に限界があるなら数でカバーするしかない。」

 話しているってことは司令は生きてる?ならなんでこんな話に…。

「他に聞きたいことは?」

「………なら1つだけ。」

 聞こえた司令の声に生きている事を確認できた同時に、女の「他に」という言葉が引っかかる。つまりさっきの質問は司令から聞いたという事になるからだ。侵入してきた者に弱点を聞いた?ならなんで相手は答えたんだ?

「彼らは君の様になれるかね?」

「無理。」

 女の即答に司令は小さく笑う。

「無理か……。なら今度は改善点の提示ではなく改善を依頼する事にしよう。」

「それは金次第。」

「そこは上手く交渉したいものだ。」

「………じゃあまた依頼達成の連絡をしておいて。」

 笑いを含んで話す司令に、無感情な声でそう言った女はモニターの中で、人間ではあり得ない跳躍で画角外へと飛んで行った。

 依頼?……今回の事は司令が依頼したって事か?




・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)

「へぇー。」

 休み時間、部室でゲームをしていると新聞を読んでいたアフロが声を出した。

「千葉の自衛隊駐屯地が崩壊したんだとよ。なんでもガス爆発があったとか。」

「いくら戦争はなくても、どこも安心はできませんね。」

 そう細長いスナック菓子にチョコを纏わせた菓子を加えるトウカは呟いた。

「ただ面白いのはそこじゃねぇんだよ!なんでも近所の住人によると夜中に数え切れないほどの銃声が聞こえたんだってよ!だから噂ではテロとか、他の国のスパイが侵入したとか言われてるんだよ!」

 無駄にテンションの上がったアフロと反比例して無感情に相槌を打ったトウカは菓子を食べ進めた。


「おっはよー!!」

 すると、無駄にテンションの高いバカ擬きのクミカが部室にやってきた。

 そしてクミカは部屋の中央に置かれたペン立てに何かを差し込むと、俺の頭の上に居座るツチノコの元へと駆け寄ってくる。


 その脇で、ペン立てに差し込まれた物を手に取ったアフロは1人首を傾げた。

「ん?なんだこのボロボロのバターナイフ。」

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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