6-1
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地下犯罪者都市の壊滅補佐
10月実行予定の地下存在している犯罪者都市の壊滅作戦への参加及び成功。
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・大阪 道頓堀
人混みの中でたこ焼きを頬張りながら私は東京の街を歩いていく。
ラファエルが次の仕事の件で合宿棟に来たあの日。
「今度は無理にでも付いていくからな!」とアフロが迫った。もちろんユウマ先輩は許可しなかったがアフロは引かず、駄々をこ……粘った挙句、仙爺が「アフロを残されたら愚痴に付き合わされそうだ。それにアフロならヘリを使ってでも付いていくと思うぞ?」と言ってくれたおかげで「流石に現場にまでは無理ですが近くの街で大人しくしているなら……。」とユウマ先輩に許可を貰ったアフロと、それに便乗した私は東京へとやってきていた。
「で、私は1人と……。」
流石に楽しむ場所がないと退屈という事で私達は作戦の場所から離れたここに降ろされたのだが、着くなりアフロはあらかじめ用意していたであろう車に乗り込んでどこかへと行ってしまった。
まあ別にいて欲しかった訳ではないけど……。
「っ!」
そんな事を考えながら歩いていると、対向に歩いていた人にぶつかってしまった。
「すいません。」
そう見上げるとそこにはスーツを着たモデルと言えば大勢が信じるであろう洋風の顔立ちのイケメンが立っていた。
あ、まあ私はユウマ先輩の方が好きですよ?
「ぅおらぁぁぁぁぁぁ!!!」
「………?」
あちらこちらで叫び声や銃声、爆音が響き渡る中で襲いかかってきた刺青だらけの男を蹴り飛ばすと、少し力が入り過ぎたせいで数十メートル先まで飛んで行ってしまった。
「どうしたの?」
銃やナイフを持った5人の男を同時に相手するクミカはそう問いかけてきた。
「いえ、少し嫌な気配を感じまして……。」
点々と置かれたテントの上に立つ俺に向かって飛んできたロケットランチャーの弾の軌道を誰もいない方向へと変えて俺は答える。
そして5人の相手を終え、近くの別のテントの上に立つクミカと場を見渡す。
コンクリートと鉄筋で出来た地下のドーム。区分けされた大規模なフリーマーケットのような場所に、戦闘機やミサイル車両といった物までが置かれたこの場所が今回の仕事場所の〈地下犯罪者都市〉だ。
「今の内に削りますよ。」
「オッケー。」
・大阪 道頓堀
「これは失礼致しました。お怪我はありませんか?」
するとイケメンはえらく堅苦しいながらも優しくそう言った。
「え、ええ。」
「っと。これはいけない。お召し物に汚れが。」
そうイケメンの視線の先の私の襟を見ると、付いているのかすら怪しいほどの小さなシミが付いていた。
「これくらい平気ですよ。それに食べながら歩いていた私が悪いですから。」
「いえ。それだと私の気が済みません。今すぐ新しいお召し物を。」
「………。」
そう言って近くのファッションショップに向かったイケメンの腕を引いて阻止する。
「そんなにしてもらったら私が気にします!」
するとイケメンはガッカリとした様子で「そうですか……。」と呟いた。
「………。」」
「ん?どうかいたしましたか?
「いえ!ではお互いが気にしないで済むようにそこのカフェでドリンクを飲むっていうのはどうですか?」
「おお!それは名案です!」
そう喜んだ表情を見て私は確信する。
やっぱりこの人裏表がない。
普通カッコつけて「新しい服を買う。」とかいう人は大体止めてくるのを待ってたりする。そういう人からは迷いなく服を買って貰うけど……。
この人は本当に罪悪感で新しい物を買おうとした。そして償いを断られて本気で落ち込んだ。
これが世に言う〈良い人〉なのだろう。
でも。それは上手く生きているとは言えない。
・スターバックス EBISUBASHI店
「カード払いで。」
そう言って支払いを済ますイケメンは周囲から視線を集めた。
「本当にこんなもので良かったのですか?」
「むしろ服よりも嬉しいくらいです!」
ドリンクを受け取り、空いていた席にイケメンと向かい合って座る。
「………。」
「………。」
分かっていたけど……話す事がない。
そうだ。
「あの、これって聞いて良いのか分からないんですけど。さっきの支払いで使ったカード、アレって普通じゃないですよね?」
「ん?ああ、これですか。」
すると内ポケットから銀色のクレジットカードを半分ほどだけのぞかせた。
「それほど良いものじゃありませんよ。強いて言うなら丈夫なくらいです。」
そう笑って内ポケットに戻される途中、クレジットカードに〈Noah〉と掘られているのがだけが見えた。
「ありがとうございました。」
そうツインテールを揺らしながら彼女は頭を下げた。
「いえいえ、すいませんでした。」
「それでは……。」
さらにもう一度頭を下げてから人混みを歩いていく彼女はギリギリまで観察しなければ。
「あ!いた!!ちょっとどこ行ってたんですか!!急に帰るとか言い出したと思ったら!!」
すると両手両肩首に至るまで私が買った荷物を持った助手君がどこからか怒りながら駆け寄ってきた。
「今の女の子は?」
まだ小さく見える彼女の後ろ姿に視線を向けると助手君も続く。
「少しぶつかってしまいまして。そのお詫びに飲み物を。」
「珍しいですね。普通の人には興味のない貴方が。」
過半数を〈普通〉と呼ぶこの世界で人に普通と付けるの好きではない。言い換えるならば〈一般的〉が適切でしょう。
「まあ勘ですよ。彼女はいつか重要な関係になる気がしまして。」
「貴方の勘はよく当たるから怖いんです。」
助手君のため息に笑っていると、彼女の背中は見えなくなった。
「それで?今日はなんで突然帰るなんて言いだしたんですか?」
「ああ、いつもなら取られる入場料が今日のマーケットは無料。出店代、購入手数料は半額ときた。」
情報、薬、臓器、人までを扱うこの国一番の違法マーケットが意味なくそんな事をするはずがない。
それはあまりにも怪しすぎる。
「あのマーケットの主催者が人をあそこに集めようとしていた。」
「なるほど。何かが起こる……と。」
「まあ必要な物は買えて、何かが起こる前に逃げれたので関係ありませんがね。」
むしろ。
「これは勘ですが、もう起こっているかも……。」
「なんなんだこいつら!!」
「殺せ!!」
「なんでこんなところにサツが!!」
そんな様々な叫びがドーム状の空間に響く。
「ユウマ!今何人?」
「そんなの聞いてどうするんですか。まあ50人ですが。」
「お。私と同じだ!」
そんな会話をしながら俺とクミカは弾丸を避ける。
俺とクミカは陽動員だ。
近接した下水道から壁を破壊して突入し、俺とクミカが地上のビルと繋がった本来の出入り口を破壊。犯罪者達の退路を塞いだ後は出来るだけ暴れて敵を混乱させる。
俺達が突入してすぐに300人の特殊急襲部隊がドームに入ってきた。
乱れなく並び、微動だにしない300人1人1人は一般的な人間よりも強い程度だろう。
しかし俺とクミカは違う。飛んでくる弾丸、爆弾、ロケットランチャーの全てを回避し、対処できる。
それを見た犯罪者達は思う。化け物と……。そして考える、後ろの奴らは何をしているのかと。
優れた個を見るだけで、何もしない集団のそれぞれが優れた個に近いと判断してしまう。
つまり俺とクミカが暴れれば暴れるだけ後ろの300人への警戒上がる。
そしてそこで、
「次!!」
そう胸についたマイクに言うと。300人はそれぞれの間の隙間を開け足を揃えて前に進み始める。
弾は盾が弾き、ロケットランチャーなどは盾に着く前に俺とクミカが処理する。
そして300人への警戒はさらに上がる。
この犯罪者都市には約2000人がいる。
俺とクミカは陽動員として暴れ、300人の牽制力を上げる。
そして名ばかりの陽動員は主力として相手を削る。
まあ補佐という仕事内容からはズレるがそれよりもいい働きをしている。問題はないだろう。
「囲めぇぇ!!!」
すると犯罪者の中から数人が俺とクミカの外を回って300人の横に飛び出した。
「次!」
その俺の声に四角に並ぶ300人が盾を四方に向ける。
そして次の瞬間。盾の隙間から飛び出した弾丸がその数人を撃ち抜いた。
よし、完璧だ。
あいつらの強みはその連携。2000人を300人で相手するのは難しいだろうが300人の元に向かう人数を俺とクミカが減らせば確実に仕留められる。
そしてこの作戦で約500人の犯罪者が倒れた頃。
犯罪者達の撃つ弾が特殊急襲部隊へ集中し始めた。
「そろそろ牽制も効かなくなってきましたね。」
「少なく見積もってあと1500人。ちょっと厳しいね。」
今のままだと俺とクミが暴れている間にロケットランチャーが特殊急襲部隊を吹き飛ばすだろう。
「出来るだけ止める方向で。」
「オッケー。」
「次!こっちで出来るだけロケットランチャーやらを止める。お前らは訓練通りなりなんなり好きに戦え!」
その言葉が伝わった瞬間、半数以上が盾を捨てて十数人毎のグループに分かれて走り出した。
「あの様子だと少しくらい放置しても良さそうです。」
「だね。」
俺とクミカは顔を見合わせ、深く笑った。
「ミサイル最後の一台終わったよ!」
「こちらの戦車も終わりました。」
特殊急襲部隊を守る必要が減った今、俺とクミカは相手の大幅な戦力増強になり得る戦車やミサイル車両を破壊して回っていた。
そして後はこの空間では飛べない為に後回しにしていた戦闘機2機を破壊するだけになっている。
「ん?」
犯罪者を飛ばしながら進んでいると壁にパスワードの入力機器が付いているのが見えた。
「クミカ!戦闘機は全て任せます!」
「ガハッ!!!」
「うぁっ!」
投げ飛ばした犯罪者が、近くにいた特殊急襲部隊の1人にぶつかる。
「おい!もう少し周りを!!」
するとそんな声が緊急時用の通信機から聞こえた。
「自分が1人で対処したほうが早い。ここを終わらせたら助けに行ってやるから別の場所に回れ。」
そう胸に付けられたピンマイクに言うとイヤホンの奥から舌打ちが届いた。
「化け物が………。」
「フッ。」
〈鬼〉なものでね。
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見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
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