5-3→
「どうだ?」
連れてこられた部屋に備えられていたパソコンを何するでもなく眺めていると爺さんが入ってきた。
「どう、って言われてもなぁ。何すりゃいいのかも分かってねぇのに。」
2人か…。
「うむ。汝は今、周囲との差という壁にぶつかっておる。」
「………。」
この爺さんがヤバイって事くらいは俺にも分かる。だからさっきはユウマ君に判断を仰いだんだ。そう、決してビビったとかではない。決して!
「汝の周囲は優れ過ぎている。」
優れ過ぎ?
「あれは〈過ぎ〉なんてモンじゃねぇ。まさしく天からの才。俺みたいな後付けとは次元が違う。」
思わず笑いながら言うと爺さんは小さくため息を吐いた。
「そうだ。しかしそれ故か汝は己を卑下し過ぎておる。」
「………。」
すると爺さんは杖の先を持ち上げ、俺の胸に押し当てる。
「周囲は優れ過ぎている、しかし汝も優れている事に気付け。汝が周囲を真似出来ぬ事があるように、周囲もまた汝を真似出来ぬ事があるのだ。」
そう言って爺さんは杖を下ろすと優しく笑った。
「何が出来るのか、何をするべきなのか。あとは己を考えろ。」
そう言いならが廊下へと向かう爺さんを引き止める。
「爺さん!」
「む?」
「多分トウカちゃんも俺と似たような考えをしていると思う。これは商人としての勘だがトウカちゃんは俺みたいな使い方を学ぶしかない成長の見込みのない才能じゃねぇ、まだ成長出来る才能だ!…と思う。」
爺さんは小さく笑うと「分かった。」と言って廊下へと消えて行った。
私の才能………。
「覗いてないで出てきたらどうです?」
あの〈仙人みたいなお爺〉略して〈仙爺〉に連れて来られた森の中に立っていると影から仙爺の気配を感じた。
「いやはや気付かれてしまった……。」
そう笑いながら出てきた老爺からは笑み以外が感じれない。
「ハァ………。」
呆れるようにため息を吐くと、仙爺は笑みを浮かべたまま「どうした?」と首を傾げた。
「いぇ。貴方の目的は何となく分かりますが、期待には添えないかもと思いまして。」
「クミやユウマに続いてラファエル、ガブリエル、ワシと感情の読めぬ者が増えたからか?」
「………本当に何でも知っていますね。」
最近は〈なぜ〉と考えるだけ無駄な事に多く出くわした。
〈仙爺がなぜ何でも知っているか。〉これもまた考えるだけ無駄な事だろう。
「私の才能というのは生きる為に手に入れざるを得なかった完成した才能です。つまり役に立てない成長の出来ない才能です。」
すると仙爺は「ふむふむ。」と笑った。
「実はアフロから助言を貰ってな。」
助言?したのではなく、された?」
「トウカちゃんの才能は成長出来る!と。」
「……適当な事を。」
舌打ちをすると仙爺は大げさに首を傾げた。
「はて、本当に適当かの?よく考えよ。〈なぜその才能を手に入れた〉のかではなく、〈なぜその才能を手に入れられたのか〉を。」
手に入れられたのか?
「トウカよ。才能の本質を知れ。」
才能の本質…。
「どうだった?」
「うむ、悪くない。ユウマは多少時間がかかるだろうが問題ない。トウカは残りの仕事が終わるまでには覚醒するだろう。そして、中でもアフロ…。」
「アフロくん?」
「奴は知っていた。己の才能に伸びが無い事、才能の使い方を学ぶしか無い事を。そしてそういう者は工夫する。どの場面でどう使うのか。その果てに、その者はどんな場面でも才能を活かせるようになる。成長の見込みがない?汝がそう思っている限り汝は成長出来る。」
「そうそれがユウマ君の仲間。ユウマ君の守りたいもの。」
・海星学園 裏山 合宿棟
「明日からはきちんと授業に出て放課後ここに来なさい。休日はそれぞれ好きな時間でいい。何か用がある場合はあらかじめ言うか、人伝いに伝えてくれ。」
老爺は集合した俺たちにそう伝えるとどこかへと消えて行った。
・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)
「で?どうよ。成長度合いは。」
次の日。休み時間の何をするでもない時間で読書をしていると突然アフロが言った。
「特に変わった事はありませんね。」
嘘言うなよ。俺と言う大変化があるだろう?
お前は成長とは言わん。
「私は特に…。」
トウカは退屈そうにポテトチップスを咥えながら言った。
「私も無いかな。アフロ君は?」
でも、己の本質を見ないといけない君に俺はかなり便利だと思うけど?
結局お前は俺の本質教えるどころか、俺の思考の邪魔をしていただろうが。
「俺は皆とはちょっと違うからな。変わることはねぇ。」
「ところで皆さんはどんな事をしているんです?」
すると突然トウカが話を変えた。
「自分はひたすら滝を眺めています。」
「は?」
「やっぱりそんな感じなんですね。私は森の中に放置ですよ。」
「へ?いやいやいや、え?そんな感じ?」
まあさっき〈皆とは違う〉とは言っていたが、やはり他から見ても違和感が強いか。
「でも、場所がそれぞれ違うって事はやっぱり場所にも意味があるんだ。」
そう、クミカの言う通りそれに気付くのが一番の足がかりで、そして今だ気付けずにいる問題点。
「滝って事は水、森って事は木?」
そうクミカは首を傾げる。
「そこまで直接過ぎないとは思いますが恐らくそういう事でしょうね。」
恐らく俺の場合は水というよりも流れだ。
せめて何をやればを言ってくれればなぁ。
それを探す事も成長につながるんだろう。
俺の多重人格を含めた全員が唸った。
それから俺達は放課後になると毎日合宿等へと足を運んだ。
日が経つにつれ俺達はそれが生活の一部となり、アフロとトウカは何かを掴みはじめていた。
で、俺達は掴むどころかヒントすら分からないと…。
いつもの場所で滝を眺めていると俺の多重人格が話しかけてきた。
うるさい。第1お前が出てきた事に意味が感じられないほどにお前は役に立たなかったからな。
なかなか酷いなぁ。
「………。」
すると茂みから老爺とは違う気配を感じた。
「なんです?」
そう目を向けた先に立つガブリエルは会釈をした。
「次の仕事の件で。」
秋口とはいえ肌寒い空気を感じながら、下水道内で似合わない軽装の俺とクミは靴紐を結び直したり首を鳴らしたりと準備を整えていた。
「分かっていると思うが商品にはかすり傷すら付けない気でいけ。」
準備を済ませそう言うと、声に反応するように後ろから無数のガチャガチャという金属のぶつかる音が聞こえる。
ふむ、さっきの言葉は少し紛らわしかったか。
似合わないと言うのは場所にではない。
「行きますよ。」
俺とクミカの後ろに並ぶ重装備の特殊急襲部隊300人が構えた。
1つの集団の中に似合わないのだ。
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見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
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