1,500,000 修正済み
するとカマイタチは一瞬の間を置いて、俺の言葉に含み笑いで答えた。
「偶然通りかかっただけかもしんねぇぞ?」
確かにそうだ。話しかけた時に俺1人ならそうだと言えただろう。しかしオセロをしていたあの時にはアフロがいた。
アフロはクミ達と共に泥だらけになって帰ってきた。つまりアフロもカマイタチを追いかけていたのだ。
追いかけられたカマイタチがアフロの顔を見たのなら、追いかけられた相手に声をかけるはずがない。
なら顔など見ていないとでも言うだろうか。
たとえ通りすがりだろうが、顔を覚えてなかろうが、ついさっきまで人間から逃げていた動物が理由もなく人間に近づくはずがない。もちろん人間と会話できるだけの頭を持った動物が追いかけられた事自体を忘れるはずもない。
そんな事を長々と考えた後に、俺は自分ながらに鼻で笑う。
しかしまぁ、そんな長々と説明せずとも。
「その言い方が1番の証拠だ。」
そういうとカマイタチは「そりゃちげぇねぇ。」と短く笑った。
「何をして欲しい?」
その呟きに「……いいのか?」と聞き返すカマイタチから、俺は再度窓の外の月に目を移す。
「内容にもよるがな。だがまぁ、ここで話を聞くだけじゃないことぐらいは分かる。」
そして俺は接待モードに切り替え。
「自分が言えば、後ろでタヌキ寝入りを決め込んでいる3人も動かせますしね。」
俺の言葉にカマイタチが驚いた様子で背後に目を向けると、3人はやれやれとため息を吐きながら体を起こしていた。
「まったく、いつから気付いていたんだ?」
サングラスをかけながらそう呟くアフロに俺は「初めからです」と答える。
「3人とも呼吸が深く、早かった。人間は睡眠時呼吸が浅く、ゆっくりになりますからね。ちなみにツチノコは途中で本当に寝てしまったようですよ。」
クミは膝の上で寝ているツチノコを見て、微笑みながらツチノコの頭を優しく撫でた。
「ユウマ先輩。もうそこまで出来たらむしろ気持ち悪いです。」
そう言いながらツインテールを結ぶトウカは立ち上がった。
悪かったな、気持ち悪くて。
「ところで皆さん?何のつもりで?」
身だしなみを整えた3人はリュックを背負い、座る俺を見下すように立っていた。
「何のつもりって、ここで話を聞くだけ……じゃないんでしょ?」
そう言うクミはその皮肉な言葉とは違い、皮肉も何もないただの笑顔を浮かべていた。
・海星学園 裏山 合宿棟付近森林
時間は午前3時……俺以外の集中力的には5時がタイムリミットか。
「本当なら自分が先に様子を見ておきたかったんですが……。」
そう視線を向けても帰るそぶりも見せず、当たり前のようにそこに立っている3人を見て、俺はため息をつかざるを得なかった。
何かしらの危険に巻き込まれた場合は1人の方が対処しやすい。むしろついてくれば3人を守らなければならず、邪魔になる。
正直こいつらが危険に巻き込まれようと、怪我をしようと、死のうと興味はないが。部長という立場になってしまった以上、少なからず責任は負わされるだろう。
かと言ってここで無理やり帰しでもすれば金を稼ぐ方法が分からなくなる可能性もある。
つまりこの3人は連れていくしかないのだ。
「こんな時間のこんな山奥に人がいるとも思えませんが……。今はツチノコとカマイタチもいますし、万が一にでも人目につかないよう、できるだけライトなどは使わず月明かりに慣れてください。イノシシなどの攻撃的な野生動物がいる事も考慮して。会話、足音はもちろん、殺気、不安などの生物を刺激するようなことも禁止です。」
顔を順に見ながらそういうと、3人は静かに頷く。
「……って出来るか!!!」
突然声を上げたアフロは、すかさず反応したトウカによってみぞおちに拳を打ち込まれ、声を上げることなくその場に倒れ込んだ。
「コエヲ、アゲルナ……。」
そんなアフロを無視してクミは「殺気も、ダメだよー」と小声でツッコミを入れていた。
騒がしい奴らだ……。
「カマイタチ、道案内を頼む。」
そういうとカマイタチは「おうよ。」と軽く返事をして、舗装されていない山の道なき道に入っていった。
そして俺もそれに続こうと一歩踏み出すと、まだ苦しいのか少し唸ったような声で「なあユウマ君…何も見えないんだが…。」とアフロに引き止められた。
……なるほど、俺を基準に考えてしまっていたか。
「これ使う?」
そう言って俺よりも先に返事をしたクミに目を移すと、クミは目から細長い筒が2本伸びたような暗視ゴーグルをかけていた。
「暗視ゴーグル……ですね。」
俺の言葉にクミは頷くと、リュックから全員分のゴーグルを取り出していく。
しかしアフロはバカとは思えないクミの気の利かしかたに驚くこともなく、クミが全員に配っていくゴーグルを静かに眺めていた。
「なあクミちゃん?まさかこれ…….。」
するとクミはゴーグルをかけたまま首を傾げ「部室のパソコンで頼んだ。」と言い放った。
「うぉい!!あれは俺のアカウントと金なんだから勝手に使うなよ!!」
するとアフロは俺の忠告も忘れたのか、ポケットからスマホを取り出し暗闇で顔を照らす。
「………なぁユウマ君。他人の金っていくらまで勝手に使っていいんだ?」
これはかなりの額をやられたな?
「まぁ……一般的に考えて1円もダメでしょうね。」
アフロは「だよな。」とため息まじりに言うと、スマホの画面を俺に見せてきた。
これは購入履歴か………!?
購入履歴にはこう書いてあった。
ーーーーーーーーーー
jungle
購入履歴
赤外線ゴーグル5個 1,500,000
………………………………
合計 1,500,000
ーーーーーーーーーー
これは……。
「やられましたね。」
するとトウカもスマホを覗き込んだものの、その額に驚く事もなく、ただスマホを眺めていた。
「まぁ、アフロのだからいいんじゃないですか?」
……それもそうか。
そして俺とトウカはクミから受け取ったゴーグルをかけ、アフロに背を向けた。
「え!?ちょ、はぁぁぁぁぁ!!?」
「数千万の資金の一部と思えばいいじゃないですか。」
アフロに目を向ける事なくそう言ったトウカは、クミの後ろに続いて山に入って行った。
買ってしまった物は仕方がない。これ以上文句を言っても仕方ないしな。
ちなみに、もし被害者が俺なら無言でクミをはっ倒す。
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