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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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厄介事6

「酒など飲んでいない!!」

「いえいえ。貴方達は知り得なかったですが、体が揺れ続けると吐いたり目眩がしたりするんですよ。」

 それを聞いた彼は疑いながらも現状の打開が優先と感じたのか、騒ぎ続ける群れに声を上げて説明をし始めた。


 少しして説明を終えると。

「ダメだ。」

 パニックは続いていた。

 まあ、簡単に収まらないのがパニックだし……。


「仕方ない。」


 コンテナに向かって大声で説明を続けていたアフロは「は?」とつかれきった手を止めた。

「えーと、中で私と会話している人?まだ無事ですか?」

 そう問いかけるとアフロと同じく大声で群れを落ち着かせようとしていたジャッカロープも説明を止めた。

「なんだ!?何かあるのか!?」

 この声のトーンの上がり方は彼もそろそろマズイ。

「貴方は耳を塞げますか?」

 すると中で別のジャッカロープに押されたのか「痛い痛い!」と悲鳴を上げながら「塞げばいいのか!!?」と、さらに張った声でそう言った。

「はい!できるだけ完璧に塞いでください!!」

 彼の「分かった!」という返事を聞いて私はコンテナの中に集中する。

「アフロ先輩も耳を塞いでおいてください、できる事なら周囲の人間がここを中心に半径10メートル以内に入らないようにも。」

 今回は集団パニックが故に全員が全員メチャクチャになっている。

 パニック程度なら落ち着かせる事は簡単だけど、流石の私でも集団となれば、同時に落ち着かせられるのはせいぜい十数匹程度。

 しかも、その十数匹を落ち着かせたところで残りの過半数がパニックなら、またすぐに伝染する。

 なら……一度リセットする。


 集中すればするほど、私の内から全てが流れ落ちていくような錯覚に陥る。

 感覚も、思い出も、感情も。

 自分ながらいつもの私とは違う事はよく分かる。

 でもこれが本当の私。化粧なんて解け落ちた、嫌われ者の私。


「できる事ならもう使いたくなかったけど………。」

 耳を塞ぎながらコンテナの陰に人がいないかウロウロと回っているアフロを尻目に私は息を吸った。


「あーーーーー。」


 これは私にだけできる心理学。

 行動や心理のさらに奥。脳なのか、意識なのか私自身にも分からないそれを予測し、打ち消し、操る、〈歌〉。

 そして、起こった不具合をリセットする方法は強制終了シャットダウンだ。


 次の瞬間、コンテナの中のバタバタという音ともにひしめいていた叫びは消えた。

「もういいですよ!!」

 って耳塞いでたら聞こえないか……。

 コンテナの壁を数度叩くと中から怯えた声が聞こえてくる。

「な、何をしたんだ。」

「心配しなくても眠らせただけですよ。それよりも他の人が起きたら慌てないように、すぐ自由になれると説明しておいてください。」

 そういうのは仲間からの説明が一番早い。


 さて、アフロは………。

「………。」

「スピー……スピー……スピード違反。」

「起きろ。」

 コンテナのもたれるように座り、寝言なのか寝息なのかよく分からない声をあげながら変な寝言を言ったアフロを起こして差し上げるために蹴りを入れる。

「んんー。」

 バタリと倒れたアフロは少ししてから目を覚ました。

 しかし薄く目を開いただけで、アフロは目を泳がせ、身体は強張り、冷や汗を流し始めた。

「あぁ。」

 なるほど。無理矢理頭を睡眠に持って行ったせいで身体が混乱して、そこで無理やり起こしたから身体は寝てるのに頭は起きてる状態。つまり〈金縛り〉になっている。

 金縛りの解除法。それは痛みによる身体の強制覚醒。

「大丈夫ですか?」

 そう声をかけて私はしゃがんでアフロの脇腹をつねる。

「いってぇ!!!!」

 悲鳴をあげて飛び起きたアフロは目に涙を浮かべながら無言で迫ってきた。

「なんです?金縛りから助けてあげたんですよ?」

 するのアフロは怒りの感情剥き出しで笑顔を浮かべた。

「あ・り・が・と・う!!」

「いえいえ!」

 ブチ切れ寸前のアフロに優しく笑みを向けて私は立ち上がる。

「まあ塞げって言った耳を塞いでなかった事はいいとして、他に眠った人がいない事を願います。」

 すると腰を払いながら立ち上がったアフロが「寝てたとしても別にいいだろ。」と言った。

「私のせいで眠られるのは困るんで」

「別にいいだろ。」

 食い気味で言ってきたアフロはあくびをしながら周囲を見渡した。

「寝たとしてもそれはトウカちゃんの歌が心地よくて寝ただけだ。それ以上でも以下でもない。」

 そしてアフロは「とりあえず落ち着いたみたいだから少し任せる。」と言い捨て私の元を後にした。


 ………全部押し付けられた!!




 ・海星学園 高等部棟 屋上

 歌の事はユウマ先輩には………。

 もうアフロにはバレている。でも歌の事をユウマ先輩には言うのは………。

「どうかした?」

 すると、ユウマ先輩が私の顔を覗き込んできた。

「い、いえ!特に何も!えっと……なんでしたっけ?」

 忘れたフリをして誤魔化していると私の右隣に座るユウマ先輩の奥に座るアフロが「ジャッカロープがパニックになった。って所だよ。」と教えてきた。

「そうでしたね。それで私とアフロ先輩は一匹一匹説明したり、中に音楽を流したりだとかをして、何とか落ち着かせたんです。」

 私の意図が伝わったのか。「なるほど。大変だったね。」と頷くユウマ先輩の奥で、アフロは視線を向ける事なく小さく頷いていた。




 ・太平洋

 万が一誰かがコンテナの中を見ないようにアフロと交代で見張りをして早十回。そろそろ更けようとしている夜に「次の交代の時にでもご飯と水をあげないと。」などと考えながらあくびをする。

 すると、ジャッカロープを船に乗せた事をクミ先輩に報告した時に「これからは電源を入れておいて。」と言われていたスマホにクミ先輩からのメッセージが届いた。

「ん?」

 〈ユウマ君はジャッカロープの群れの居場所を知らない演技をしてる。けど今バラして欲しいからユウマ君の指示で群れを連れている事をユウマ君に電話で言って。〉

 ラファエルかな……。

 ユウマ先輩の状況は考えても想像がつかない。

 私は諦めてユウマ先輩に電話をかけた。

 ~発信音~

「もしもし。」

 まるで全てが作戦だったかのように。より余裕に。


「あ、ユウマ先輩ですか?こっちは予定通り終わりましたよ!」

 っ!?

 その瞬間。ほぼでも次の瞬間でもなく、その瞬間。

 最近の電話ではあり得ないほどのノイズが入った。

 そしてそれが徐々に解除されていくと奥から覚えのある声が聞こえてくる。

「予定とはなんです?」

 かかった。

 電話とはいえ笑みを浮かべてしまえば油断してしまう。私は思わず上がった口角を下げ、そして演技の笑みを浮かべる。

「答える義務はありませんが、あえて言うならジャッカロープはもうラファエル、貴方の物ではないと言う事です。」

 沈黙。

 そしてラファエルは「………そうですか。」と言って通話を切った。


「さてと、そろそろ交代の時間ですよ。」

 隣でいびきをかくアフロを起こし仮眠室に向かっているとまたユウマ先輩から電話が来た。

「もしもし、トウカです。あれユウマ先輩?終わりました?」

「トウカちゃん。今すぐ引き返すんだ。」

 すると突然そんな言葉が言い放たれた。

 確かにユウマ先輩の声、話し方。でも何か違う気がしたのだ。

「……なんでです?」

「レオ達にはラファエルが必要だ。」

「ラファエルは敵なんじゃ……。」

「確かに考えは別でも目的は一緒だった。でも僕達よりもラファエルの方が優っていたんだ。」

 ……なるほど。

 思わず溢れた笑みをまた抑え、私は可能性を確証にかえる。

「………ユウマ先輩。そこにレオかラファエルはいますか?」

「レオはもう渡して、ラファエルとは離れてる。」

 それを聞いて私はもう張り詰める必要のなくなった笑いをこぼす。

「………こっちに来たらお仕置きですよ。……レオ。」

 そして「よく気付いてくれた。」と本物であろう遠いユウマ先輩の声が聞こえると同時に通話は切断された。

「……まったく。」




 それから9日のコンテナ船の旅を終え私達は日本に到着した。

 ・大阪湾 コンテナヤード


「あとはこの荷物を下ろすだけ……ですが。検査的なものがあるんじゃ。」

 するとアフロ母は手元の書類を見ながら小さく笑った。

「その辺の手続き、と言うか辻褄合わせはもうやった。ここからはバカ息子の仕事だよ。」

 アフロ母が言い終わるとほぼ同時。私の周辺を突然の強風が襲った。

「っ!!なんですかこの風!」

 吹き飛ばされそうな程の風は私の背後の陸側から吹いており、そちらを向くとそこには境目が分からない程夜空に溶け込んだ、ライトのない黒いヘリコプターが飛んでいた。

「???」

 ただおかしな点はライトがないことやその黒い塗装だけではなく、強風を感じる程の距離にいるにもかかわらずモーターのはもちろん、風を切る音がほとんどしなかったのだ。

「お、来た来た。」

 いつのまにか私の横に立っていたアフロはそう言うとヘリポートに着陸したヘリに駆け寄った。

「助かったよ。どうだ?コイツの調子は。」

 するとヘリから1人の女性が降りアフロにお辞儀をした。

「問題ありません。それで今回運ぶものというのは……。」

 アフロが私の横にあるコンテナを指さすとその女性は私に気付き会釈をした。

「かしこまりました。ではヘリからワイヤーを下ろしますのでコンテナと繋げていただけますか?」

「いや、俺らはヘリに乗るからそれはクソ親に任せる。」

 女性はアフロ母に気付くとまたお辞儀をした。

「ここまでしてやってまだ足りんか。まあ繋ぐだけならやってやるが。」


「繋げたぞー!!」

 低空飛行でヘリを飛ばしていた女性は下のアフロ母のGOサインを確認してゆっくりと上昇していった

「んじゃこのまま学園の裏山まで!」

 アフロがそう言うと女性は「はい。」とヘリを学園に向けて操縦した。


「というかこの行動ってアフロ先輩の考えですか?」

 アフロは「いや。」と笑った。

「全部ユウマ君の指示だ。つってもスマホの調子が悪いらしくてクミちゃんからのメッセージだったけどな。逐一状況の報告をしてその後の行動を聞いてたんだよ。」

 ん?

「てことはアフロ先輩はこの10日間ユウマ先輩と連絡してたって事ですか!?」

「まあそうだな。」

 ………。

「なんで私じゃないんですかユウマ先輩!!!」

 怒りのあまりアフロの胸ぐら掴んで揺さぶっているとアフロは「いやいやいや。」と私の手首を掴んだ。

「トウカちゃんだって連絡してたじゃないか!!」

「それは2日目に一回アフロ先輩がやらかしてないかの確認ですし!!!大体それっきりですよっ!!!!」




 ・海星学園 裏山 カマイタチの住処近辺

 ヘリはまずコンテナを地面に置くと、コンテナとぶつからず、でも繋がったままのロープがコンテナを引いてしまわないギリギリの場所に着陸した。

 さて、群れを外に出す前にまずはナギ達に協力を申請しないと……。

「って、アフロ先輩。暗視ゴーグル以前に洞窟内の道覚えてますか?」

 するとアフロは満面の笑みを浮かべて。

「持ってねぇし覚えてねぇ!!」


「あん?なんだお前らか。」

 すると茂みの中から1匹のカマイタチが歩いてきた。

「「NICE!!!」」

 私とアフロが声を揃えて言うとカマイタチは驚いた表情を見せる。

「ナギ……じゃなくて長を呼んで来てくれない?」

「ん?あぁ、別に構わんが……。」



「で、私を呼んだわけね。」

「悪いな突然。」

 そうアフロが謝るとナギは「やめてよ。」と苦笑いを浮かべた。

「今回の件はユウマにあらかじめ聞いてたからね。なんでも住処に済ませたい奴らがいるんだって?」

 ユウマ先輩はどこまで用意周到なんだろう。

「群れに説明はまだだけど、ユウマの仲間だと言ったら多分大丈夫。それにこっち側の受け入れる瞬間を見せた方がそいつらも信用しやすいと思うしね。」

 中にそれら(ジャッカロープ)がいると勘づいていたのか、静かに光る鎌でコンテナを指した。

 そして私はコンテナを軽く叩くと中からいつもの1匹の返事が聞こえた。

「さて、今からここを開けますが逃げたら即、他の人間に殺されると思ってください。いいですね?」

「あ、ああ。」

 返事を聞いて私はコンテナの扉を開けた。




「と、まあその後コンテナはヘリで持っていってもらって。ジャッカロープ達とナギの力で縦穴を降りてユウマ先輩達を待っていたって感じです。」

 なるほど。結局俺達はクミカに動かされていたという事か。

「はぁ……。」

 俺のため息にトウカとアフロは首を傾げた。

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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