厄介事5
「やあバカ息子。」
「酷い言い様だなクソ親。」
貿易船に着陸したヘリから降り、会うなりそんな皮肉を真顔で言い合うアフロと母親らしき女性。
「この方がお母さんですか。」
アフロよりも頭1つほど小さく、茶色い髪を肩まで伸ばしたアフロ母は、私の独り言に私に視線を移した。
「君がトウカっちか!!」
自己紹介もまだにもかかわらず私の名前を言い当てたアフロ母は笑顔で駆け寄って来た。
「?」
「いやぁ!秘書に息子の周辺を調べさせた時から君の事は気になっていたんだ!」
調べさせたいという言葉に隣に立つアフロは「なっ!」と声を上げた。
「昔から金目当てで息子に集まる女は山の様にいたがトウカっちのように金に目もくれない女の子は珍しい!!バカ息子の嫁に来ないかい?」
その言葉を聞いて私は思わず硬直してしまった。
考えてみればユウマ先輩の次に私に近い男。
それがどれだけ衝撃的なセリフでも、真面目に言ったアフロ母には真面目に答えなければならない。
「お断りします。」
「おい!!会うなり何言ってんだ!!そんな事言ったらトウカちゃんも困、えぇ、断った?」
あからさまに動揺するアフロを見て、アフロ母は今までよりもさらに深い笑みを浮かべ
「ウェーイ!!振られてやんのー!」
とアフロを指差して冷やかした。
「おい!や、やめ、や~め~ろ~よ!!」
あれ……今目の前が小学校に見えた。
目をこすって見直すとそこには何事もなかったかの様にアフロ親子が立っていた。
「「以上でーす。」」
「ほんとうに………。」
口から漏れそうになった言葉を抑えた後には、いつの間にかコンテナと私達の荷物、そして見覚えのない段ボール数個を置き空高く飛んで行ったクレーンヘリの音が響いていた。
「んじゃまあ、あのコンテナの中身を誰にも見られずに持って帰りたいって事でいいね?」
自分の分ととアフロのキャリーケースを引く私と合計6個の段ボールを乗せた台車を押すアフロは甲板を歩いていくアフロ母についていきながら再確認をする。
今回の作戦で最もと言っても過言ではない重要な箇所。それは入国だ。民間のルートではどうしてもジャッカロープが目についてしまう。
「えぇ。そして貴方にも……。」
アフロが下手な事を言う前に私がそう言うと、私とアフロの前を歩くアフロ母は足を止めた。そして振り返ったアフロ母はニヤリと笑みを浮かべる。
「参考までに理由は聞いてもいいかな?」
しかしその目は笑う事なく、私の内側、奥、裏を見るかのように静かに私を見つめる。
その姿はまるで私自身を見ているような錯覚に陥らされた。
……でも、私自身なら。
「貴方の事も信用できないと言う事です。まして価値の無いものにすら価値を作り出せる商人となれば尚更。」
その言葉に今度はイキイキとした目でアフロ母母は笑った。
「本当に良い!!まあ嫁に来ないのは残念だが。」
アフロ母はわざとらしく肩を落としながらため息を吐く。
「まあ、いつか私の取引相手になるかもしれないトウカっちへの出世払いだ。今回の荷物運びは任せなさい。」
「はぁ……。」
なんだか言動がめちゃくちゃな人だな。
「ちなみになだがな。電話で交渉した時に俺の友達も一緒だって言ったら、うちの母親〈その友達次第では運ばない〉とか言ってたんだぜ。」
「はい!?」
「いやはや、何度も言ったが息子に近づくのはみんな金が目当てでね。増して今回は密輸と来た、相手によっては息子どころかウチの会社まで巻き込まれてしまう。」
なるほど。言葉はキツイが息子が変なことに巻き込まれないためか。
だが大きな間違いが1つ。
「残念ながら友達ではなく、部員同士です。」
私の言葉にアフロ母は一瞬驚いた顔を見せるとお腹を抱えて大声で笑い始めた。
「ははははは!!!そりゃいい!!!嫁どころか友達とも見られていないとは!!〈下手な友よりも交渉ができる他人〉だ!」
「誰の言葉だ?」
笑いすぎだと私とアフロが少し、いやかなり引いている中アフロが問うと、アフロ母は笑い涙を拭いながら答えた。
「私だよ。」
「ここの部屋を使うといい。」
そう言ってアフロ母が案内した部屋は狭いながらも十分眠れるベッドやシャワーの備えられた部屋だった。
「お前の部屋は隣だ。」
そう言われたアフロは「はいよ。」と気怠げに返事をすると、私からキャリーケースを受け取って台車を押しながら隣の部屋へと入って行った。
そしてアフロ母は「後は自由に過ごすといい。」と言い残してどこかに行ってしまった。
荷物を置いた私達はジャッカロープの入ったコンテナに誰かが近づかないか見張るために、コンテナのある場所に戻ろうとしていた。
「そういえば、あの段ボールの中身は何なんですか?」
長い廊下を歩きながら、今は手ぶらのアフロにそう問いかける。
「あれは牧草だ。流石に10日近く何も食べないわけもいかないだろ?」
なるほど。てっきりフードとかだけで済ますかと思っていたけど、意外とちゃんとしていた。
「一応人の目も気になるから夜中にコンテナの中に入れるか。」
「そうですね。」
「さて、どうしましょうか。」
アフロ先輩が見張りをしている間にクミ先輩へと報告のメッセージを送ったところでやる事が無くなり、甲板で地平線を眺めていると、遠くからアフロが走ってきた。
「トウカちゃん!!マズイ事になった!!」
駆け寄ってきたアフロは肩で息をしながらひざに手を置くと乾いた喉を潤すように唾を飲み込む。
「ジャッカロープ達が暴れ出した。」
現場ではその異常さゆえに数人の乗組員が寄ってきていた。
コンテナの中ではまるで数十人の人間が叫んでいるような声と私達には正体が分かる、壁に何か(角)をぶつける音や引っ掻く音が漏れ出ていた。
「さっきまで静かだったんだが……なんでだ。」
「集団パニックですね。」
コンテナの中は完全に密室。増してヘリや船での揺れなどで不安が増大していた中ではちょっとしたトリガーで抑えていた恐怖は爆発する。
「あらら、まさか中身は人身売買の商品だったか。」
いつの間にかアフロとは反対の隣に立っていたアフロ母は呑気に笑いながら言った。
一応「違います。」と否定はするが、中身の知らないアフロ母に言ったところで信憑性はないだろう。
「でもどうします?これだけの人に見られている現状では開ける訳にも行きませんし……。」
そんな事を言っていると、アフロ親子は腕を組んで考え、「よし。」と同時に頷いた。
「取り敢えずこの荷物が何処から来たのか調べるぞ。」
そう言ってアフロがコンテナ番号を確認しているとアフロ母が様子を見ていた乗組員に声をかけた。
「下手に開けたら何があるか分からん、港に着くまでは誰一人開かないようにしろ!」
そしてコンテナ番号を紙にメモしたアフロはアフロ母に手渡した。
「バカ息子。誰かが勝手に開けないように見張っていろ。」
そうワザとらしくないように、ワザと会話するとそれを見ていた人達はそれぞれ好奇心を抱きながらも何処かへと向かっていった。
「うし、んじゃまあ辻褄合わせはしとくから対処は任せた。」
そう小声で言い、笑いながらアフロ母は船内へと向かった。
「あ……。」
ちょっとカッコいいと思ってしまった。
「………はっ!」
思ってない!思ってない!!いや、正直思ったけどそれは映画とかそう言う感じのカッコいいであって、恋愛感情的な何か的なカッコいいとかではないですからね!!
「トウカちゃん!?」
ここにはいないユウマ先輩への誤解を解いていると突然後ろのアフロに呼び止められた。
「それ、一応商品だから………。」
ふと目の前を見るとそこにはベコベコに凹んだコンテナと、その原因であろう私の拳があった。
「………。」
「………。」
さて……と、さっさとジャッカロープを落ち着かせますか!
「はーい、ジャッカロープの皆さーん?何をそんなに暴れているんですかー?」
周囲を軽く気にしながらコンテナの中に声をかけるがそんな声が届くはずもなく、中からは何十もの悲鳴が響いている。
んー、結構酷いなぁ。
「えー、皆さーん?」
軽くコンテナをノックしながら問いかけると、叫び声の中から焦りながらも落ち着いた様子の声が聞こえてきた。
「おい!そこにいるのか!?」
よし、1人でも話が通じるのなら状況確認だけは大丈夫。
「はい!そっちがパニックになっている事は分かっています!理由は何ですか!?」
「さっきから何人かが吐いたんだ!なんでも体が揺れる感覚だとか!そのせいで人間に殺されると言い始めた!!」
ジャッカロープの単位って「人」なんだ。
「ん?吐いた?……。」
彼らは揺れの激しいクレーンヘリで運ばれて、今は船にいる。
そして彼らはそれに慣れていない………。
「えー………酔ってるだけですねそれ。」
@ODAKA_TAIYO
↑Twitterのユーザー名です!↑
https://mobile.twitter.com/ODAKA_TAIYO
↑もし直接行きたい方がいればこちらからどうぞ!↑
見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
最新話を投稿した時は呟きます!
もしなろうに登録してなくて、指摘や依頼が言えなかった方はTwitterで是非送ってください!




