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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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厄介事4

「俺もよく分からん。」

 すると手に持つスマホにクミちゃんからのメールが届いた。

「お、追記だ。また後で言うけど、私に何かを報告する時以外は二人ともスマホの電源は切っておいて。だってよ。」

 クミちゃんのメールを音読すると、トウカちゃんはハテナを浮かべたまま「はあ……。」と納得して、また部屋の奥へと消えて行った。

「ったく。」

 いつも俺達を振り回すあの2人に思わず笑みを浮かべながら、椅子に座る。

「………追いつけねぇな。」

 無意識のうちに自分で噛んでいた唇がまるで思い出したかのように痛みを脳に伝えた。




「荷物よし、財布よし、スマホの電源よし。」

 万が一の事が無いように指差し確認をしているとトウカちゃんが「何をしているんだか……。」とでも言うかのように見つめてきた。

「忘れる物を確認しないでください。」

「もし無意識のうちにスマホの電源入れてたらどうするんだ!」

 トウカは「知ったこっちゃありませんよ。」と呆れ気味に言うとホテルの部屋を出て行った。

「いつもながらに冷てえなぁ。」

 苦笑しながら部屋の外に出ると、そこには赤いコンテナトラックが待っていた。

「さて、俺らの仕事だ。」




 ・海星学園 高等部棟 屋上

「………で、続きは私からと言う事ですね。」

 何処かへ行ったユウマ先輩とアフロが帰ってくると今度はアフロと入れ替わりで私が呼ばれた。

「アフロ先輩とトウカちゃんは途中別行動をしたらしいからね。そこからの事を教えてほしいんだ。」




 ・コンテナトラック コンテナ内

「正直運び屋を信じられるかと言うと半々だ。もしかすれば俺達よりも高い金を払う奴が〈良いものを持ってこい〉と言っているかもしれない。だから運び屋にジャッカロープは見せない。」

 そんなアフロのセリフを思い出して私は広いコンテナに大の字で寝転がった。

「………床が冷た硬辛怠寝たい。」

 2人乗りのトラックで運び屋と私を2人きりにするのは流石に危険だから、と押し込まれたコンテナの中で私はトラックに揺られている。

「なんだが洞窟の比喩の気分です。」

 床の硬さには諦めて目を瞑るとほぼ同時にトラックの動きが止まった。

 この周囲は信号があるような場所ではなく、増して検問を行うほど交通量が多いわけでもない。

 するとガチャンと言う音と共にコンテナの扉が開かれる。

「トウカちゃん。任せた!」

 その扉の先には笑みを浮かべたアフロが立っていた。




 アフロが運転手にジャッカロープを見られないように気をひく。

 それがアフロの作戦だった。

 単純に人の心理を観察し、誘導させるなら私の方が向いている。しかし私にはジャッカロープの誘導をして欲しいらしい。

 なんでも「人1人くらいなら俺にも誘導は出来るが、複数、増して人外ともなればプロ中のプロに任せるしかないからな。」ということらしい。

 ………。

「って言われてもなぁ。」

 切っていたスマホの電源を入れてクミ先輩に電話をかける。


「もしもし?」

 1コールもせずに電話に出たクミ先輩は食い気味にそう言った。

「着きましたよ。運転手に見つからないようにしたいので出来るだけ静かにお願いします。」

 一体クミ先輩はどうやって群れを説得したんだろ……。

 連絡をして十数分すると山の上からクミ先輩がゆっくりと降りてきた。

 よく見るとクミ先輩の後ろの草の陰にはぞろぞろとジャッカロープが長蛇の列を成して隠れながら歩いていた。

 想像以上に堂々と来たなぁ……。

 トラックから少し離れた岩の陰にいた私の所まで来たクミ先輩は小さく微笑んだ。

「ある程度は説明して落ち着いてる。トウカちゃんは誘導よりパニックを抑えてほしい。」

 なるほど、アフロには無理な仕事だ。

「分かりました。一応アフロ先輩がいるとはいえアフロ先輩です。万が一……いえ百が一に備えて出来るだけ死角からコンテナに入ってください。」

 コンテナの中を調べた限り、監視カメラや盗聴器はなかった。

 これをそのまま使ってクレーンヘリで運ぶのならコンテナの中にさえ入れればもう危険はなくなる。

 クミ先輩は頷くと山を降りてきた時と同じように自然に歩いて行く。

 それに続くように、角を低くして隠れるジャッカロープ達は怯えた様子で続いた。

「本当にどうやって説得したんだろ……。」




「今ので最後?」

 あれだけ広かったコンテナの中でギュウギュウに詰まったジャッカロープにクミ先輩が問いかけると群れの内の1匹がこれでもかと言うくらいにうなずいた。

「じゃあ今から扉を閉じるけど水とか食料は後で用意するから。取り敢えずはトイレだけど……どれくらいの物がいい?」

 人間と違い、野で生きてきたジャッカロープ。羞恥心があるのかないのか……、嫌悪感は感じやすいのか否か……。

 するとさっき頷いたジャッカロープが震えた声で答えた。

「体全部が隠れるだけの場所を…。」

 クミ先輩は「オッケー。」と答えると、折り畳んであったダンボールを組み立て、縦長い箱の上面を開けて横向きに置いた。

「これでいい?」

 するとさっきと同じくこれでもかと頷いたジャッカロープを見てコンテナの扉を閉めた。


「やっと椅子に座れます。」

 今度は私がコンテナに乗ることはなく。アフロと運び屋の乗ったトラックの後ろを私とクミ先輩の乗ったタクシーが追いかける形で次の場所へと向かった。




「ここからはヘリで向かうぞ。」

 そして何の問題なくホテルに戻ると、ホテルの前には変わった形をしたヘリコプターが止まっていた。

 コンテナをトラックからヘリへ受け渡している間にアフロの部下らしき人に私達の荷物を積み込んでもらい、あとは受け渡しのチェックを待つのみになっていた。

 アフロ先輩はトラックが運んでいたコンテナ自体を買ったらしく、ジャッカロープを周囲に見られることもなく受け渡しはすんなりと終了。

 そしてプロペラが回り始めることで、チェックが完了し、出発の時間だと言うことを知らされる。

 私とアフロがヘリに乗ると、アフロの部下らしき黒いスーツの3人の内の2つの操縦席に触っていない1人からヘッドセットを渡された。

「じゃあ後は2人に任せたよ。」

 左右で結んでいた髪を後ろでまとめ直してヘッドセットを付けていると、ヘリの外でクミ先輩が声を張ってそう言った。

 するとアフロは歯を見せて笑いながら親指を立てた。

「おう!!あとは任せろ!」


 ここからは当分連絡すらも禁止だ。

 次にクミ先輩に連絡できるのは船に着いて手続きを終わらしてから……。

「……ミスは許されませんね。」

 自分自身に言い聞かせるように呟いて私はスマホの電源が切れている事を確認した。




「……ん、んん。」

 ふと気づくと隣にはヘッドセットをつけたアフロがよだれを垂らしてガクガクと首を落としていた。

「………はっ!!いつの間に寝て!!!すいませんクミせええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!?????」

 窓の外を見るとそこには広い海が広がっていた。


 ・太平洋上空 クレーンヘリコプター機内


「……ハッ!」

 そうだジャッカロープを運んでたんだった。

 寝ぼけて叫んでしまったがアフロは寝ていたし、いいだろう。

 スマホで時間を見る癖のせいで思わずスマホを手に取ってしまったが、今は電源を付けてはいけない。

「あとどれくらいで着きそうです?」

 近くに座っているアフロの部下らしきスーツ姿の男に問いかけると「あちらを。」と進行方向を指差した。

「ん?」

 シートベルトを付けたまま背伸びすると、向かう先にはカラフルなコンテナを大量に積んだ貿易船が浮かんでいた。

「着きましたよ!」

 隣で眠りこけるアフロの脇腹に肘を入れると。「ブギェヒ!!」と声を上げて飛び起きた。

「な、なんだ!?」

「だから。着きましたよ。アフロ先輩のお母さんの船に。」

 その言葉を聞いた瞬間、アフロは今までの見たことがないほど純粋な表情を浮かべた。

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