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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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心理学

「んー、何というかまずユウマ先輩は他の人に興味を持った方がいいんじゃ無いですか?」

 レオの一件以来多少は柔らかくなったユウマ先輩だけど、結局興味を持っているかと言うと違う気がするし…。

「そうだ!ユウマ先輩のクラスメイトに気になる人とかいないんですか?例えばどんな才能なのかとか無駄にデカイバックの中身とか。」

 ユウマ先輩のは「気になる…。」と硬直した。

 そして

「いないね。」

 まあ、分かっていたけど。めんどくさいようなちょっと嬉しいような。

「ならまずは人に興味を持つところからはじめましょうか。」

「じゃあ自分は何をすればいい?」

 それ以前に意識させるべきか。

「じゃあ取りあえず校内を歩きましょうか。」


 変な予測で対処するよりも、きちんと現状を把握した方がいいか。


 と、思っていたが。

「ヒッ!」

「っと…アイツだ。」

 廊下の中央を歩くユウマ先輩を避けるように隅に寄った生徒達からそんな声がヒソヒソと聞こえてくる。

 なるほど。ユウマ先輩は意識しないんじゃなくて意識されてしまっていたんだ。

「トウカちゃん。これはダメだね。」

 すると突然止まったユウマ先輩がそう言った。

 全く、何をしたらこんなに怯えられるんだか…。

「はぁ。」

「待て、そんな顔をするな。言いたい事は分かるが先に言わせろ。俺は悪くない。」

 まったく。セリフだけ聞いたらクソ野郎ですね。

 悪くなくても原因はユウマ先輩に………。

「ん?今なんて言いました?」

「俺は悪くない。」

 何回聞いてもクソ野郎だ。

「じゃなくて!!そんな顔をするなって言いました!?」

「ん?ああ。」

「そう!!それです!それの当たり前のような事が心理学の初歩です!!」

 顔で言いたい事が分かる。つまり表情から感情を読めたという事!

「まずは相手の表情や動きで感情を分かるようになってください!」

「ふむ。考えてみれば他人の顔なんて部活以外で見ないな…。」

 それはそれですごい。

 するとユウマ先輩は周りで怯えるように立つ生徒達の顔を順に見て行く。

 そして私をスタートに周囲を360°をくるりと見渡したユウマ先輩の視線は私に戻り。

「……なんでこんなに怯えられているんだろう?」

「知ったこっちゃないですよ。」

 ユウマ先輩は「ふむ。」と少し悩むと一番近くにいた女子生徒の胸ぐらを掴んだ。

「おいお前。なぜ俺に怯える?」

 女子生徒は「あ、え…と。その。」と挙動不審になっていた。

「そんな事してるからですよ!!」

 胸ぐらを掴む手を叩いて、手を離させる。

 危ない危ない。ユウマ先輩がこれ以上怯えられる可能性もあるけど、それよりもあの女がユウマ先輩に惚れる所だった。

「あ。あの………ほかの皆さんは霧崎さんを、その、怖がってますけど……。私は…その………。」

「何ユウマ先輩に近づいてんだこのクソビッチ殺すぞコルァアぁァあァぁぁァぁァァぁァァァぁぁぁぁぁァあァァあァァあ!!!!!!!!!!!!!」




「クソ!手遅れか!!」

 いつぞやのように目が赤く光り、興奮した獣のように息を荒げるトウカは周囲の人間を片っ端から睨みつけていた。

 トウカの社会性の方が手遅れな気もするがな。

 だが、トウカのお陰で少しコツは掴んだ。

 なるほど、人を見ない奴に人の感情を読めるわけがないか。

「トウカちゃん。」

「はいぃ~♡なんですか?私のユ・ウ・マせぇ~んぱい?」

 いつ俺がお前の物になった。

「次は何をすればいい?」

 トウカは「………え?次ですか?」と少し困惑した様子で言った。

「もうちょっと基礎固めた方がいいとは思いますけど………。」

 ん?あぁ、なるほど。一般的な人間は俺とは違うのか。

「それなら大丈夫。廊下の見えるかぎりの人間とグラウンドの顔の見える人間全てで練習はしたから。

「………はい?」

 まあ、固定概念に囚われている奴には理解できないだろうな。


「分からなくてもいいよ。だから次の練習を教えてくれる?」


 そう言ったユウマ先輩は見えないながらも言葉に軽蔑の感情を孕んでいるように思えた。

「…分かりました。では次のステップ…なんですがここで進めるのはやめておきましょうか。」

 私のせいでもあるが周囲から痛いほどに注目を集めていた。

 あと少数の女子生徒がユウマ先輩に軽い憧れのような感情を抱いているのも気にくわない。


 とりあえず部室に戻るとそこにはクミ先輩とアフロがいた。

「あれ?2人ともどこ言ってたの?」

 クミ先輩はアメリカで買ったパソコンをカチカチと操作しながら菓子パンを咥えていた。

「おいおいクミちゃんそりゃあ愚問だぜ?トウカちゃんの赤い頬を見ろよ。どうせどこかでイチャコラしてたんだろ。」

 そうニヤニヤとしながら訳の分からない勘違いをしたアフロは内心焦っている。

「えっと……その…………あはは。」

「マジかよ!!!!」

 試しにワザと照れ笑いを浮かべてみるとアフロは椅子を倒しながら勢いよく立ち上がり、ユウマ先輩の肩を掴み迫った。

「おいユウマ君!!どこまでやった!!じゃなくて、いつのまにそんな関係になった!!!」

 最初の質問で本音が見え見えだ。

 するとユウマ先輩はため息をつくとなだめるようにアフロの肩を押して距離を置く。

「トウカちゃんが暴走したんですよ。カマイタチの時よりも酷く……。」

 そのユウマ先輩の言葉を聞いたアフロは「あっ…。」と何かを察すると、そっと椅子を戻して座り直した。

「で?2人は何してたんだ?」

 おいアフロ!何スルーしてくれてる!!

「というか暴走って何ですか!?カマイタチの時って気を失ってたんですけど!!私何かしてました!!?」

 ユウマ先輩とアフロはサッと私から目をそらした。

「え?その反応、ガチで私何かしてたんですか?」

 珍しく分かりやすい行動をしたユウマ先輩は逃げるようにカバンから出した心理学の本を読み始めた。

「………あの。無視はやめてください。」


 次の日、私には〈極道SP〉という異名がつけられていた。




「なるほど。本での知識はあってもそれの練習方法がイマイチ分かってなかったから助かるよ。」

 するとトウカは「えへへ。」と照れ笑いを浮かべた。

「とりあえず今ので基礎は一通り終わりですね。」



 正直なところここまでの知識は全て記憶にあった。

 だが人間に興味を持たず認識すらしていなかった俺は知識はあっても使いこなせなかった。

 考えてみれば当たり前だが今まで交渉される側だった俺は交渉する必要がなく、それはつまり心理学などは必要がなかった。

 例え相手を読む必要があった時でもそれは相手の立場に自分が立ったと仮定して考えただけだ。

 しかしそれだけではラファエルや学園長のように絶対的な優位に立てない状況が現れた。

 そして今後少なからず一回はその状況がまた来る。

 その時、勝敗を分けるのは心理学やそれに似通った何かなのだろう。




 そして一度午後の授業を受けるために中断した俺達は放課後に部室に戻ってきた。


「さて、ここからは練習…いえ慣れです。」

 そう言ってトウカは廊下の扉を開けると、そこには5人ずつの男女10人がいた。

「ユウマ先輩はこの10人と順に話してもらいます。そして1人に付き3回質問をしてこの10人について出来るだけ詳しく調べてください。」

 いわば最期にテストといったところか…。

「質問はどんなものでも構いません。例えば残りの9人との関係を聞いても…。ただし答えなかったとしてもそれは一回の質問です。」

 そう忠告して部屋を出て行こうとしたトウカは「あ、最期にヒントですがこの10人は5つのカップルで構成されています。」と付け加えて10人の内1人と入れ替わるように廊下に出た。


「で、最初はお前か。」

 俺の前に座った黒混じりの金髪男はガムを噛みながら「ウス。」と答えた。

「じゃあ最初の質問だ………、」



 質問を済ませると自動的に人が入れ替わり、次の奴が入ってきた。

 2人目、4人目、8人目…。

 そして最期の1人を済ませる頃には秋口の夕日が射し込んでいた。



「以外と早く終わりましたね。」

 10人は俺との会話が終わり次第帰っていったらしく。トウカは最期の1人と入れ替わりに入ってきながらそう言った。

「答え合せはどうする?」

 すると「ここに。」とトウカは手に持った1枚の紙を揺らした。

「じゃあ自分は観察結果を言うよ。」



「………58点中50点ですか。」

 ふむ。残りの8点は分かっている。

「他の部分は完璧ですが………。」

「カップルだろ?」

 トウカは「ええ…。」と渋い顔を見せ。

「とは言えど合格点は余裕にクリアしています。これから慣れていけばすぐ生活や仕事に活かせるようになりますよ。」

 そして慰めるように笑みを浮かべた。


「トウカちゃん。自分は人生で一度も恋愛をした事がない。」

 知らない事を感じれるはずがない。

「トウカちゃんに言って何かになるわけではないが。いつか恋愛感情を持ってみたい。」

 だからこそ知らない事は知りたいのだ。


「今ので心理学の大半は教えましたが………。」

「助かった。」

「色仕掛けしてみても結局恋愛感情だけは分かりませんでしたしね。」

 トウカはため息をついて赤く照らされたグラウンドで走る陸上部をながめた。

 今のトウカの感情はどこか寂しいといったところだろうか。

「まあ、状況にもよりますが相手が何を考えているかも分かるようになってくると思いますよ。」

 そしてそう俺に笑顔を向け直したトウカはいつものトウカだった。


「さて、今日は帰りましょうか。」

 バックを肩にかけて部室を出ようと俺に背を向けたトウカを引き止める。

「あ、でもその前にトウカちゃん。今教えて貰ったのは心理学だけど、トウカちゃんのやってる事は本当に心理学か?」

 一瞬の沈黙。そして振り返ったトウカはいつもよりさらにワザとらしい笑顔を浮かべた。


「はい!心理学です!」

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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