厄介事
「んん?なんのことかなぁ?」
白々しいにも程がある。
俺は教授の眼前に迫り、殺気を放つ。
静かに…ただひたすらに目を開き相手の目を見つめる。
と、殺気と勘違いしてくれる。
もちろん教授に殺気が効くとは思わないが恐怖と威圧を含んだそれは少なからず意味を成すだろう。
「その前にそれをグイッと!」
教授は殺気どころかそれ以外すらも感じていない様子で笑顔を浮かべた。
「………。」
いや、見ていないだけか。
「分かった…。飲んでやるから中身を教えろ。」
すると「いやぁ~」と申し訳なさそうに笑い後頭部に手を当てた。
「最初は命の危険がない毒で体調不良時のデータが欲しかったんだけどね~。全然効かないからちょっとずつ強めにして、それでも効かないから………。何かもう殺したくなってきて。」
勝手な欲望を生むな。
「で、もう君に毒は効かないと言う結論に至った今、その体質を研究すれば多くの命が助かるんじゃないかと思ったんだ。」
1つの命を消そうとしてただろうが。
「それで?その話がどうこの毒に繋がる。」
「その毒はありとあらゆる毒だ。」
ほぉ。
「あらゆると言うと?」
教授は満面の笑みで大きく手を広げる。
「あらゆるだぁ!!深海から月の裏まで!!今現在確認されている毒物質から細菌、ウイルスまで!!そのありとあらゆる毒をこの一杯にまとめてみました。」
それはたしかに耳を引く話だが。
「細菌やらウイルスやらは周囲に感染するぞ。」
俺には効かないが。
「その辺安心してくれたまえ。きちんと無毒化してある、いわばインフルエンザのワクチンだ。」
インフルエンザのワクチンは死んだインフルエンザウイルスを入れる事でその抗体を作る…。
つまり。
「ありとあらゆる細菌やらウイルスを殺せるならそれだけで多くの命が助かるだろ。」
「あ………。」
一瞬の間。そして教授が手を伸ばしコップを取り戻すまえに俺はコップを手に取った。
「わあぁぁぁ!!!待ってえぇぇぇ!!!」
教授は涙目でコップを持つ俺の腕にしがみついた。
「何故止める!!どうせ研究データは残っているんだろうが!!」
「違うんだよ!!それ作った後に学校側がそのデータの全権利を寄越せって言うから渡しちゃったんだよ!!!」
コイツはあれだ、お受験教育されたから電車の乗り方を知らないタイプだ。
「今更これを取り替えしたところで権利は戻らん!!」
しがみつく教授を振り払い俺は毒を口に含む。
このまま数秒もすれば吸収は出来るがそれだと少し足りない。
これは毒を含んだまま口内の一部を噛みちぎる。
毒の中には胃腸では吸収出来ないものもあるからな。直接血中に流し込んだ方がいい。
これで充分な毒は吸収出来ただろう。
「あぁ…。」
毒を飲み込むと教授は落ち込んだ様子で俺を見つめた。
「そんなに落ち込むな。考えてもみろ、学園はその毒の無力化する方法を知っただけだ。」
教授は首を傾げ俺の言葉を待っていた。
仕方ない。
「問題。人を殺せる毒を飲んでも人が死にませんでした。その理由は?」
教授は首を傾げながらも答える。
「毒が吸収されなかったか、その人にその毒への耐性…………があった!!」
やっと気づいたか。
俺の5つ目の異常。
〈ラーテルの青い血〉
ラーテルという動物ははコブラなどが持つ神経毒が効かない。
その理由は単純に強い耐性を持つからだ。
カブトガニという節足動物は青い血を持っている。
その理由は酸素を運搬する役割が人間のように鉄ではなく銅で行われているからだ。
しかし青いだけでは無い。それとは別にエンドトキシンという物質が体内に入ってきた病原体などを不活性化、つまり無力化する。
そして俺はありとあらゆる毒に耐性を持つ。
この能力の名前に関しては該当する物がなかったために俺が作った。
「あらゆる毒の効かない、つまり死の危険が無い速度で抗体を作り出せる俺があらゆる毒を吸収した。つまり今この瞬間俺の体内には深海から月の裏までの全ての毒、細菌ウイルスに効く抗体が作られたという事だ。」
そして俺が抗体を作るのに必要な摂取量は無く。たった1つの毒分子で俺の体内で抗体が完成する。
「次の問題。俺の血液を好きなだけ取れる人間は誰でしょう。」
「!!!」
そうテンションが上がりきった教授は両手に持てるだけの注射器を持って俺に飛びかかってきた。
「その前に。」
飛んできた教授の頭を掴み俺はもう一度殺気を放つ。
「何故盗聴した。」
「………単純に気になったんだ。最近のユウマ君はどこかイキイキしていたから。」
静かに教授言った。
「嘘だな。」
最近知った事がある。
専門書や研究所でかじった程度の心理学では限界がある。
今までは心理も何も関係なかったがこれからは必要になるだろう。
「まあ今回はもういい。約束を破ったんだ、例の物は無いからな。」
「ええ!?そんなぁ……。」
部屋を出る直前に1番重要な事を伝える。
「あと他言するなよ。したら……….。」
そして最大の殺気を放って俺は退出した。
「と、言うわけで心理学を教えてください。」
トウカに頭を下げる。
「え、え!?」
突然の事に驚いているのかトウカは慌てふためいた。
「ちょ。ユ、ユウマ先輩!頭をあげてください。」
言われた通り頭をあげるの周囲の人間から注目を集めていた。
・海星学園 高等部棟 1年A組
「あの、せめて場所は選んで欲しいです。」
トウカ周囲を気にしながらため息混じりにそう言った。
・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)
「で、どう言う事です?突然心理学だなんて。国会議事堂と情報屋でのユウマ先輩を見る限り人との交渉とか契約には困ってないようですが…。」
「それは自分が絶対的な力を持っていたから出来た事だ。でもそれにも限界が来た。」
ラファエル。俺と唯一対等に渡り合えた存在。
奴は最終的にレオを渡したがいつか取り戻しに来るかもしれない
一度あることは二度ある、いつか俺を超える存在が現れるかもしれない。
来るかもしれないその時の為に俺は次へと進まなければならない。
「まあこれはトウカちゃんが心理的な才能を持ったと踏まえて言っているからもし違うなら他を当たるよ。」
ユウマ先輩のその言葉を聞いて私自身の才能について考えてしまった。
私の才能は天才などではなくただの秀才。
狩りに必要な本能ではなく、獲物の動きを知り、操る方法を知っただけ。
「お母さん………。」
「お母さん?」
しまった!思わず声に!
「いえ!!勿論心理学については教えさせてもらいます!」
「助かるよ。」
っ!
そんな言葉に喜んでしまう私がたまらなく恥ずかしいぃ!!!
「で、必要な物とかある?集めて来るけど。」
校庭で遊ぶ人に目を移す。
「そうですね。強いて言うなら心理というだけあるので人間ですかね。まあその前に基礎的な事を教えるのでえぇぇぇ!!!?」
「ん?」
振り返るとそこには男と女の2人を抱えたユウマ先輩がいた。
「ちょ、えぇ!!?どどど、どう言う………えぇ!!?」
女の方はめちゃくちゃ困惑し。
「きききき、霧崎くん!!!?」
男の方もめちゃくちゃ困惑していた。
「ユウマ先輩。まずは初歩的な事を教えるのでまだ直接人で練習する必要はありませんよ。」
「そうか。」
するとユウマ先輩は部室の外に出ると2人を解放した。
「野へお帰り。」
野………。
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