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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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3-2→

 人が不快に感じる音と言うものがある。

 突然、もしくは積み重なった不快感というのはさらに感覚を増大させ恐怖などのマイナスの感情に変換される。

 そしてその音は声で作れる。

 人が威圧を感じる瞬間というものがある。

 その種類は様々で大声、逆に小声、小さな言動。時には逆光ですら威圧的に感じてしまう。

 そして、恐怖と威圧を同時に受けた一部の人間。

 人の感情を読むのに長けている者、負の感情や小さな殺気に多く関わった者、本物の大きな殺気を一度でも触れた事がある者。

 このような者は偽物の殺気を本物と感じる。

 例え気付かずとも死に関係するような言葉を聞けば勝手に殺気と結びつけてくれるが。


 しかし。今目の前にいるこの情報屋おとこにその殺気は効かないだろう。

 何故なら。

「どこで知った。」

 一般的な人間にはあり得ない、凄まじい大きさの本物の殺気を放っているのだから。


 偽物の殺気を殺気と感じない者には二種類いる。

 先程言った条件に当てはまらない者か、見分けられるほど殺気に多く触れた事のある者だ。


 今回の仕事で俺に主導権が無ければ実力行使しか方法は無かっただろう。

「その情報はこの国の借金を返せるだけの金で売ってやる。」

 そんな事を考えながら俺は、アメリカでクミカに向けた物と同じ偽物の殺気を情報屋に向ける。

 その2つの殺気の中でトウカは冷や汗を流しながら紅茶を飲んだ。


 トウカはこの状況で気負けするのはマズイと理解しているのだろう。

 おそらくトウカの才能は精神的な物だろうとは思っていたが。この殺気の中で平常を装おうとするだけの意思が保てるとは。

 装いきれていないが……。


「やめておこう。それだけの金があればもっといい物が買える。」

 そう苦笑しながら情報屋はグラスを揺らした。

「残念だ。」

 本当に残念だ。しかし好都合。

「なんだ?そんなに金が欲しいのか?」

「それも事実だがあんたとの賭けに負けたもんでね。」

「賭け?」

「さっきの情報だが。俺に情報を提供したのはこの国の表のトップだ。」

 その言葉に情報屋は動揺を隠しきれず目を見開く。

「タダで情報を与えていいのか?」

 取った。

「どちらにせよ渡す予定だったものだ。売れたらラッキーだったんだが、賭けに負けた。」

 そう小さく笑っていると、情報屋は生唾を飲んで首を傾げた。

「お前は……どこまで知っているんだ。」

 驚きを隠さない情報屋に俺は笑みを浮かべる。

「裏の世界にいて、この俺と仕事で話しているんだ。少なからず知っているはずだ。」

 すると情報屋は小さく笑った。

「世界的に警戒されるお前には表も裏も関係ないと言う事か。」

 あぁ、関係ないだろう。

「さあな。」

 もし裏があるのだとすれば、だが。


 過度な感情は正常な思考を鈍らせる。情報屋の驚きが俺の言葉に疑いを持たなかったように。


「話を戻そう。今の情報は国からもらった。つまりどういう事か分かるな。」

 一瞬の沈黙。そして

「黙認しているのか!?」

「違う。今まで黙ってはいたが認めていないのか、認めてはいたが黙っていないのかは知らないが……。」

 主導権は完全に取った。あとはどこまで信用させるか。

「国は犯罪者都市を壊滅させる気だ。」

「なっ!!」

 使い道のない情報は別の場所で活用したほうがいい。

「詳しい日時は分からないが壊滅するのは確かだ。」

「根拠はあるのか?」

 さすが情報屋、そこは突き通すか。

「根拠は俺だ。情報屋の雇い主だけが俺に仕事を依頼していると思うか?」

「まさか!!」

 身を乗り出す情報屋に俺は笑みを浮かべる。

「さて、この娘の事を黙っておくだけの価値はあったと思うが?」

 俺は情報屋の質問には答えずにそう問いかける。

 すると情報屋は「あぁ……。」と汗を流して答えた。


「今のが2つ目の情報。ここからが本題だ……。」




「今回の依頼達成報告の連絡先はあるな?」

「………あぁ。」

 情報屋はバーカウンターに顔を伏せ、疲れ切った様子で重たい手を振った。

「帰ろうか。」

「は、はい!」

 部屋を出るとトウカは情報屋に会釈をして扉を閉めた。


「………。」

 トウカは勝手について来た罪悪感か、俯いたまま俺の一歩後ろを付いて歩く。

 どうしたものか。

 怒ったつもりは無いが情報屋が見たところでは怒っていたらしい。

 ここから寮まで無言と言うのは俺としては問題ないが……。

「、っ。」

 ふとトウカと目が合うとトウカは素早く目を逸らした。

 今回の仕事の件で距離の空いたU.M.A研究部の距離をこれ以上開けるわけにはいかないか。

「………トウカちゃん。」

「は、はい!」

 緊張した様子の声。

「暑いし甘い物でも食べに行こうか……。」

「………はい!!」

 俺の言葉に一瞬戸惑いつつも今度はトーンの上がった声で返事をした。




 ・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)

「では2つの仕事は完了したものとします。」

 そう伝えたガブリエルは藩を押した紙2枚をバックにしまって部屋を後にした。


「あとは南極の調査と地獄の声の調査、犯罪者都市の壊滅、能力成長実験の補佐、か。」

 クミカが声にした仕事は殆どが簡単に出来るものではなかった。

「南極と地獄の声に関しては季節を考えなければいけませんね。」

 南半球にある南極は1月が最高気温。9月の今行けばマイナス70度、これから徐々に気温は上がっていく。

 地獄の声の調査の場所はロシアだ。北半球にあるロシアは7月が最高気温。今行けば7度前後と言ったところ。こちらはこれから徐々に気温はは下がっていく

「地獄の声は建物を建てることを考えたら……。」

 クミカの言う通りだ。地下数十キロも掘削するとなると、それだけの施設が必要になる。ロシアはこれから温度が下がっていき、さらに日照時間が減っていき、冬には24時間日の登らない極夜が続く。

 その事を考えると今月中には行動に移したいが……。


 俺とクミカから少し離れた場所でそれぞれ菓子を頬張るトウカとパソコンを打つアフロに目を向ける。

 正直この状況が続くのはまずい。

 今後の協力が乱れ………。

「ん?」

 待て、何故俺はトウカとアフロの協力を受けようとしている?

 確かにトウカの精神的な才能もアフロの大炊御門社という箔も利用価値はある。

 しかしわざわざ俺が2人を気にしてまで必要な価値か?


「ユウマくん?」

 そうクミカに呼ばれたと同時に俺は現状を放置する事を決定した。

「いえ。犯罪者都市の壊滅は規定日がありますので、地獄の声はギリギリになりますが来年に持ち越しですかね。」

「規定日って確か……。」

 クミカは机の上の一枚の紙に目を通す。

「10月後半、確かに微妙だね。地獄の声は指示だけ出してもいいけど………。」

 そして地獄の声の依頼書に目を向ける。

 ーーーーーーーーーー

 機密事項により詳細は記載不可。期間は要相談。

 ーーーーーーーーーー

「現状も理解できない状態に指示を出すのは得策ではないでしょう。」

「じゃあ一旦様子見に行く?」

「犯罪者都市の壊滅の仕事まではたまに別の用事があるので難しいですね。」

「オッケー。なら時間はたっぷりあるし来年に持ち越そっか。」

 俺は頷いて地獄の声の依頼書を手に取る。

「正直なところ、例え一年丸々かけたとしても地下数十キロも掘ることは不可能でしょう。それこそ施設などが完成して、掘削を始めていなければ。」

「でもそうなるとなんでユウマくんに依頼を?まさかユウマくんをハメる罠じゃ。」

「他の国ならあり得ない話ではないかもしれませんが、この国に限っては可能性は低いでしょう。」

 するとクミカは小さく笑う。

「自信満々だね〜。」

「いえ、以前に少しありまして。」

 適当に流した俺は地獄の声の依頼書を机に投げ、成長実験の依頼書を手に取る。

「では規定日までに成長実験を終わらせますか。」

「そうだね。成長って言ってるだけあって長期間の可能性もあるし、今から行けばちょうどいいかも。南極は取り敢えず10月の仕事を終わらせてから考えよう。」


 何故だ。

 何故この状況に俺は打開策を考えているんだ…。


「トウカちゃん。後でちょっと話があるから。」

 「は、はい…。」という困惑した返事を聞いて俺は部室を後にした。




 ・海星学園大学生物学第5研究室

「あれぇ?珍しい。平日にくるなんて。なにか用?」

 犯罪者都市の壊滅までは時間がある。その間に数ある厄介ごとの1つを済ませに教授に会いに来ていた。

 研究室の扉を開くと教授は首を傾げた。

 犯罪者都市の壊滅までは時間がある。その間に数ある厄介ごとの1つを済ませに来たのだ。

「まあいいやぁ。コーヒーと麦茶どっちがいい?」

 またか……。

「おまえ、いつも俺の飲み物に毒を盛っているだろ。」

 お陰で数百の毒に耐性はできたが。

「ありゃ、バレていたかぁ。」

 教授は無邪気に笑った。

 まるで俺を殺すのが当たり前かのように。

「まあそれはいい。それよりも。」

 偽物の殺気を放つ。

 正直教授に殺気が効くとは思わない。

 しかし恐怖と威圧は少なからず意味をなす。


「ペットバックの中は見るなと言ったはずだ。」

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