3-1
・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)
「ではこれで2つ目の依頼を完了したものとします。」
そう言ってガブリエルさんはユウマ先輩と博士のサインの書かれた依頼書に印を押した。
「さて、最後の1つを抜けばあと7つ。自衛隊の仕事は明日にでも終わらせて来ます。」
「あ、それなんだけどさ。私が自衛隊に行くから代わりにこの知識の提供に行ってくれない?私どうもその手の話は苦手で…。」
「自衛隊………行けます?」
「まあ、行けようが行けまいがどちらにせよ仕事は達成できるでしょ?」
「それもそうですね…。分かりました。では自分は明日この情報提供の仕事をして来ます。」
そんな会話を聞き流しながら私は机に伏せて空を眺め、アフロはパソコンを操作する。
でも、アフロが打つキーボードの音はいつもより強く叩かれている気がした。
「ユウマ先輩………次捕獲するUMAって何かあるんですか?」
ただ嫌われているのか。それとも別の考えがあるのか。どっちにしても私とアフロは今回の仕事には参加させて貰えない。なら嫌われていなかった時のために今は待とう。
そんな昨日の夜決意した事も容易く壊れ。
他愛もない部活風景の会話で何とかユウマ先輩との繋がりを再確認したくなる。
「んん?そうだね。次は裏山のキュウビか人魚に行こうか。今回の仕事で裏山を手に入れれば何だってできる。」
そうか、15年と半年かかってやっとわかる。普通の人はこんな気持ちを日々味わっているのだと。
相手の気持ちに気付けず、それを知ってなお自らの安心を優先してしまう。そんな気持ち。
「んー、私は人魚がいいです!一緒に泳いでみたいです!」
なのに、こんな状況でも偽物の普通を演じている自分が気持ち悪い。
「ここか……。」
・情報屋事務所
裏山から降りた繁華街の路地裏、その地下に隠れるように書かれたその文字が仕事内容の場所と合っている事を確認して中に入る。
と、早々に中からスタンガンのような物を持った男2人が襲いかかって来た。
「まったく。」
ここに呼んだ理由が殺すためなどとふざけたら殺してやる。
そう決意しながらスタンガンを持つ手首を払ってスタンガンを弾き、2人の首を持ってその体を持ち上げる。
「もしかして今回の仕事は俺を殺すためにここに来いとかではないだろうな。」
「「………。」」
もはや生き延びれると思っていないのか全身の力は抜けていた。
「答えるわけないか。」
そう呟くと同時に扉から1人の中年男が氷の入った2つのグラスを片手に入ってきた。
「答えるわけないだろうな。」
「ボスはお前か。コイツらは一体どういう事だ。」
さっきの二人を降ろすと少し息苦しそうにしながらも立ち上がり今度はナイフを構えた。
「やめておけ。今の一手でわかったろ。下っ端とはいえ牙の不意打ちに対処できるやつだ。そいつにお前らは対応できるのか?」
ボサボサの白髪混じりの長髪を揺らしながら冷たく言われたその言葉に2人はナイフをしまい外に出て行った。
「悪いな、俺はそれ程強い立場じゃなくてね。あんたがここに来ると言う情報を売らざるを得なかったんだ。」
そう男は苦笑しながら何も置いていないバーのようなこの部屋のカウンターに立つ。
「どうせ仕事中だとかほざくと思っていたが未成年とはな。中身はただの麦茶だ。毒味は必要か?」
2つのグラスに同じ麦茶を注ぎながら男は呟く。
「いいや、体質上毒に強くてな。」
渡されたグラスを口に運び、少しだけ口に含む。
「さて、早速だが情報提供の件だ。」
俺はカウンター席に座り情報屋と向かい合った。
「その前に情報屋。お前の事は何と呼べばいい?」
その質問に情報屋は笑いながら虫を払うように手を振る。
「俺に名はねぇ。ただのしがない情報屋だ。呼び名はそのまま情報屋とでも呼んでくりゃぁいいさ。」
「そんなしがない情報屋にこの仕事の依頼料は払えるのか?」
すると情報屋は両手を天に向けて肩をすくめた。
「名前は情報屋と言っているが、実際は何でも屋にちかくてな。今こうやってあんたと話している事もとある金持ちからの依頼なのさ。」
なるほど……。
「分かった。ならお前はどんな情報を求める?」
正直なところ俺なら裏の情報をかなり知っている。
隠れた研究や裏での同盟、契約。
まあ漏れた出どころが俺とバレたところで大した問題ではないが今後稼ぐ時にそれがマイナスに働くかもしれない。
吐く情報は選ばなければ。
「何でもいい。ジャンルも大きさも。」
ジャンルも………。
なら。
「………いいのが1つあるぞ。」
その俺の言葉に情報屋の男は「ほぉ…。」と笑った。
「だがその前に1つ。」
ユウマ先輩が地下に入って行ってすぐ、2人の男が恐怖と困惑の感情に包まれて出て来た。
今回の仕事には関わらないように言われていたが、ユウマ先輩とクミ先輩には嫌われたくない、嫌われていたくない。
ここに来た事がバレれば嫌われてるかもしれない。
でも、もし今回の残りの仕事に私達に参加して欲しくない理由があるとしたら。
それを知りたい!
と、思って地下にあった情報屋の扉の前に立っていたら、1分でバレた。
私とユウマ先輩の目が合い、何とか誤魔化そうと考える。
偶然通りかかった…。
だめだ通りかかるどころが行き止まりだ。
ユウマ先輩の匂いを追って来た…。
ただの変態だ!!
ついつい来ちゃった…。
誤魔化せてない。
「あ、あは………。」
するとユウマ先輩は呆れたようにため息をつき、情報屋と書かれた部屋の中へと入って行く。
「とにかく入って。」
「………はい。」
トウカとアフロの事だから多少は抵抗するかとは思っていたが。まさか強行するとは。
潜水艇で素直で良かったと思った時間を返せ。
「今回の仕事には参加しないように言ったはずだけど?」
「………はい。」
「アフロ先輩は?」
「………知らないです。」
嘘の特徴はない……か。
「何で来たの?」
「………。」
言う気はない、と。
「おいおい。そう怒ってやるなや。」
「別に怒ってはいない。ただ、理由が分からなければどうにもできないだけだ。」
「っ!ユウマ先輩だって!!!………。」
涙目でそう声をあげたトウカはまたすぐに俯いた。
「はぁ………。まあ今回はいいか。」
「俺としちゃぁ情報をくれる人間が増えるだけでかなり嬉しいがな。」
トウカの事を和ませようとでもしているのか、情報屋はマグカップに入った紅茶を奥から持ってきた。
男は紅茶を混ぜたスプーンを咥えてトウカの前に置く。
「……その子には毒味がいるんだろ?」
笑った男の顔を見てトウカはマグカップを両手で持った。
「さて、続きだが。」
「なら情報屋。さっき言いそびれた情報の他にもう一つ、裏のいい情報をくれてやる。代わりにこの娘の情報は誰にも売らないと約束してくれ。」
次の瞬間。笑みは消え、不意打ちをしてきた2人に向けた時よりもさらに冷たい目と声を俺に向けた。
「こんな店に住んでいるとはいえ俺は裏では有名な情報屋だ。俺に情報が漏れたと知るなり口止めに来るやつは山程いるが。例外なく大金を持ってくる。お前の情報には大金と同じ価値があるのか?」
金の話をした時のアフロと同じ、いやそれ以上に商売人の目になった。
「1つ目はあんたが使える情報とは違うかもしれないが、2つ目は期待していい。」
「なら先にリスクを消すべきだ。2つ目を聞かせな。」
言わなくてもそうする。
「地下の犯罪者都市を知っているか?」
フラフラとしていた情報屋は突然動きを止めて冷たい目を俺に向けた。
「どこで知った。」
「その情報はこの国の借金を返せるだけの金で売ってやる。」
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