新たな目覚め 修正済み
「んん~~~!!!」
「「………。」」
「姿はイタチ。しかし前足の先からは明らかに自然物ではありえない人工的な金属の鎌。おそらくこれがカマイタチの正体でしょう。」
これもツチノコ同様完全に信じることは出来ないが、ツチノコよりかは明確に未確認生物だ。
「ところでユウマ君よぉ。ここまで来たらユウマ君の肝が座った様子にも驚きはしないけどよぉ?なんで縄で縛ったんだ?ケージにでも入れれば良かったんじゃ。」
そう。俺達はカマイタチを捕獲、もとい捕縛したのだ。鎌には市販の鎌を買った時について来るカバーを付け、体は足一本動けないようにワイヤー入りロープで縛った。
あとおまけに布を咥えさせるように口を縛っている。
「簡単なケージなら、あの鎌で斬られる可能性があります。もちろん口でロープを食いちぎる可能性も。なのであの捕獲方法が適切なんですよ。」
そして俺はオセロ盤に向き直り、最期の駒を置く。
「さてと、これで逆転は不可能ですよ。」
盤面は俺の駒一色になり、アフロはもう駒が置けなくなった。
「さて、もう一戦何かしましょうか。」
「ウォイ!!なんでオラが捕まんねぇといけねぇんだぁ!!」
その声の方を向くと締まりが甘かったのか、カマイタチの口に挟んでいた布が外れ、口が自由になったカマイタチは中年男性のような低い声で訛りながら文句を吐き出していた。
「まあ、体のロープが切れていないのならいいでしょう。」
そう言って俺はオセロ盤の片付けを進める。
「ユウマ君?最初も思ったが動物が会話しているんだぜ?ホモ・サピエンス以外の生物が意味のある言葉を発しているんだぜ?」
ツチノコもだがな。
「さて。次は将棋でもやりましょうか。」
カマイタチとアフロを無視した俺はオセロと同じく掃除中に見つけた将棋盤と駒をアフロとの間に置く。
「先手はどうぞ。持ち時間はお好きなだけ。」
「王手です。」
「ここは逃げ」
「詰みですね。」
「れない!?」
初めは文句を言っていたが無駄だと気付き、黙って将棋を眺めていたカマイタチは口を開いた。
「お前さん弱すぎねぇかぁ?」
アフロは「うるさいなぁ!!」と文句を言いながら駒を片付けていく。
事実だからな。
……とは言っても、アフロは何度か、いや何度も。その上何重にも俺を誘い込もうとしていた。もし相手が俺では無かったら余裕で勝って………。
まあそれはさておき
「カマイタチ、お前さっきから逃げようと」
「お風呂上がったよぉ~ん。」
「たまには広いお風呂っていうのも良いわね。」
「ユウマせ~んぱぁい、いくらお風呂上がりだからってぇ、襲うなら夜中にしてくださいねぇ~!」
すると俺の言葉を遮るように開かれた教室の扉から女性陣+ツチノコが風呂から戻ってきた。
安心しろ、そんな夜中は永遠にこない。
「皆さん。捕まえましたよカマイタチ。」
女性陣はそう報告をした俺の指差す先に目を移すと。
「え?」と、クミは頭にハテナを浮かばせ。
「ヒッ!」と、トウカは小さな悲鳴をあげ。
「あんた…。」と、クミの頭の上で湯気を出しているツチノコは呆れた声を出した。
もう少し喜ぶと思っていたが。
俺がカマイタチに目を移すとカマイタチは目覚めていた。もちろん眠りから覚めた訳ではない、元から眠っていなかったからな。
さっきから抜け出そうとしていたと思えば、ロープが絡まりに絡まったのだろう。
カマイタチを拘束するロープは亀の甲羅の形になり、口に挟まっている。そして、等のカマイタチは明らかに疲れとは違う吐息を漏らしていた。
そう、カマイタチは目覚めていたのだ、新たな快楽に……。
少しの沈黙をえて、将棋を片付け終えたアフロが声を出した。
「……みんなでババ抜きでもしねぇ?」
すると女性陣は「賛成!!」と声を上げた。
ん?ツチノコはどうやってカードを持つんだ?
夜中。俺を除く全員が寝落ちした。
せっかく二部屋掃除したにも関わらず、男部屋でトランプなどをやっていた3人+ツチノコはそのまま寝てしまったのだ。
そんな奴らを背に、俺は窓の外の月を眺めていた。
さて、突然だが俺の話をしよう。
俺は<アルビノ>だ。
アルビノとは体の色素が無いために髪と肌は白く、奥の血管が透けて目が赤く見える生体のこと。
眼の色は多少種類はあるが俺の場合は赤い。むしろこの赤い目のおかげでアルビノと判断されている。
そんなアルビノは光を受ける色素が無いせいで目が弱く、普段は専用のカラーコンタクトを入れている。という名目で目の色を隠している。
この目のように、アルビノは体が弱く、短命と言われているが今のところは健康に……いや、健康とはかけ離れているか。今言ったアルビノ。正式名称は<先天性白皮病>つまりは病気、異常だ。
そして俺はこのアルビノ以外にも異常を持っている。例にあげると一つは<完全記憶能力>だ。
これはその名の通り完全に記憶する能力。五感から感情に至るまでその全てを完全に記憶する事ができる。この能力にはいくつか種類があるが俺の場合は超記憶症候群に当てはまるらしい。
これもまた病気、異常なのだがこの能力のお陰で俺は学年主席の座に着き優遇を受けているために一概に害、不要とは言えない。
ツチノコを見たときこんな生物はいないと確信できたのもこの能力のおかげだ。
そしてもう一つが<ショートスリープ>。
これは短い睡眠時間で健康を保っていられる能力だ。睡眠時間は3時間以下。それだけで俺の脳は十分な休息が取れるのだ。
そのため、普段は今のように月を眺めて夜を過ごしている。
とまぁ、こんな異常を他にもいくつか持っているのだが全てを言っていると夜が明けてしまうだろうから徐々に話して行くことにしよう。
余談だが月の出ていない日は夜通しゲームをしている。
しばらくすると結局寝てしまったカマイタチが目を覚ました。
「起こしたか?」
起こしたからと言って謝る気は一切無いが。
「いんや、オラらは夜のもんだ。いつもは昼寝て、夜起きる。」
カマイタチはそう言いながら当たり前のように縄をすり抜けると、手のカバーを口で外しながら俺の横に座る。
そんなカマイタチを横目に俺は月を眺め続けていた。
「そうかい。」
一瞬の間を置いて、カマイタチが話を切り出した。
「お前さんら、何しにきたんだ?」
そう聞くのは当たり前だろう。散々追いかけ回され、挙句捕縛された理由は結局説明できてなかったからな。
「海星学園は知ってるか?」
視線を向けずに問いかけた俺は「山の下にある学校か?」というカマイタチの返事を聞いて「そうだ」とうなずく?
「そこで俺らはUMA研究部ってのをやってるんだ。」
「UMAってのは簡単に言えば人間に見つかっていない生物のことだ」と付け加えるとカマイタチは自分のことを言っていると気付いたのか「なるほど」と呟いた。
「それで?オラらを捕まえて人間に晒しでもするのか?」
そう強く言われたカマイタチの言葉に俺は肩をすくめて答える。
「さあな、何をするのか聞いてない。ただUMA達と仲良くなるとかは言っていたがな。」
それだと10桁の報酬を手に入れられる意味が分からないままだが……。詳しくは言えないと言っていたが、明日アフロあたりに聞いてみるか。
「いいのか?オラ逃げてるぞ?」
そう自慢げにこちらを見るカマイタチを横目に俺は「勝手にしろ」と鼻で笑ってみせる。
「どうせそのまま逃げきる気は無いんだろ?」
そう窓の外の月からカマイタチに視線を向けてそう言うと、カマイタチは「なんでそう思う?」と、低く静かな声で言った。
「朝。クミ……先輩に見つかったにもかかわらず。夜にはお前から関わってきた。つまりは何かしらの要件があったからだ。そしてその要件をお前はまだ言っていない。」
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