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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
39/73

2-3

「あ?へ、ヘリコプターリターン?」

 B級映画みたいな名前にするな。

「ヘリコプリオンですよ。三畳紀前期に絶滅した。」

 ほう、トウカが知っているとは意外だな。

「でも残念。ヘリコプリオンは推定約3~4、大きくても8メートルだ。」

 「え?でも……。」と否定するトウカを遮って俺は続ける。

「ヘリコプリオンの歯の化石は15~20センチメートル。2011年に発見された60センチメートルの化石は新種と言われているからね。」

 それ以外が発見されていないだけで60センチメートルの歯を持った個体、推定12メートル以上の個体も当たり前と言う可能性もあるが。

「でも。アレがその新種だろうが、ヘリコプリオンだろうが何でもいい。」

 何だっていい……今はこのゲームをクリアすればいいだけだ。

「今は逃げるのが優先です。」

 すると隣に座るアフロが「でもまぁ。」と小さく笑った。

「今回もユウマ君がなんとかしてくれるんだろ?」

「期待しすぎです。」

「でも。何とかするんでしょ?」

 そう小さく笑うクミカに、何とかする羽目にした原因は誰だ。と内心文句を言いながら俺はコントロールを持つ。

「まあ、何とかします。4人で。」

「ふふ…。」

 すると、後ろでクミカの小さな笑いが聞こえた。


「またまたまたまた空気を読んでくれてありがとよ!しゃおらぁ!!行くぜぇ!!!!!」

「って言いながら全力で逃げてますけどぉ!!?」

 そう。目の1つでも潰そうとアームを出したら地面に擦り、その衝撃で焦ったアフロが潜水艇を急上昇。そのまま天上にぶつかり、そこを好機と見たのかヘリコプリオンが襲ってきた。

 そして後進する潜水艇の鼻先で何度も噛み付こうとするヘリコプリオンから逃げていた。

「わあぁぁぁぁぁ!!!」

「何悠々と叫んでるんですか!!!わあぁぁぁ!!!来てます!来てます!!早く逃げてください!!」

 すんでの所で噛まれず、鼻先で噛み付きを避けていると言うことは速度は同じという事。

 相手がサメの近種であった事は不幸中の幸いだった。

「あ!!そうだ!ウォータージェット使いましょうよ!!!」

 ふむ。なかなかいい案だ。

 だが。

「さっき天井にぶつかってから調子が悪いみたいでな。左右にあるうちの右が弱い。」

「あああぁぁぁぁぁ!!!!このクソアフロォォォォォ!!!」

 そう叫びながらトウカはアフロの首を絞めた。

「ギブギブギブギブギブギブ!!!!!死ぬ!死んじゃう!!!」

「お前のせいで死んだら来世でお前の母親に生まれ変わって隣の部屋で毎日旦那とプロレスごっこしてやる!!!」

「ナチュラルに嫌だ。」

 親のいない身としては共感できないが良いものでないことは分かる。

「トウカちゃん。今はアフロ先輩に操縦してもらわないと。帰ったら好きにしていいから。」

「助けてるようで助けてねぇよ!!」

「アフロ先輩は無駄口叩いてる暇あったら何とか距離を取ってください!」

 「全くです。」と、つい数秒前の事を無かった事にしたトウカが呟いた。

「クミ先輩?洞窟はまだ抜けないんですか?」

「んー。さあ?」

 今のクミカはダメか………。

「仕方ない。トウカちゃん洞窟から出たことが分かったら教えて。」

「あ、はい!……あ、このまま進めば岩です。」

 すると、「ほいよ。」とヘリコプリオンに追われる事にも慣れたのか、アフロは軽い返事をした。

「んで?岩までの距離は?」

「えーっと……0。」

 あ?

 次の瞬間、潜水艇は強い衝撃に襲われた。照明は点滅し、ガコガコと鳴ってはいけない音が艇内に響く。

「トウカちゃんもミスってんじゃねえぇぇぇぇぇ!!!???」

 何故に疑問形。

「ユウマくうぅぅぅん!!!来てる来てる来てる!!!」

 窓の外を見ると大きく口を開けたヘリコプリオンが迫っていた。

 マズイ。

「「わあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」

「2人とも落ち着いてください。」

 俺は上方向に向かってウォータージェット推進を使った。

 ウォータージェットの右側は調子悪いのであって動かないわけではない。単純に右側の推進力が下がったせいで左右のバランスが取れないだけだ。

 つまりこの状態で上方向に推進した潜水艇は回転しながら右上へと進む。

「アフロ先輩!後ろに進んでください!」

 もちろん回転しきる前に推進を止めたが。

「イタタタタタ!!!」

 傾きのせいで、操縦するアフロのシートベルトが脇腹へと食い込んでいた。

「早く!!」

「わぁってるよ!!」

 文句を言いながらもアフロは潜水艇を立ち直らせ再度後進を始める。

「アフロ先輩。今ので不具合はありますか?」

「いんや、スクリューから突っ込んだから不安だったが特に異常はねぇな。強いて言うならまだ目の前にアレがいることと、俺の脇腹にレッドラインが出来てるってくらいだ。」

 そう笑ったアフロは険しい顔を浮かべた。

「ただ、みんな分かってると思うが、ぶつかった時に多分通信のコードが切れた。博士との通信が切れてる。」

 博士の声が急に静かになったからな。

「まあそれはいいでしょう。むしろ洞窟内では邪魔なだけです。酸素も後4日と半日は潜っていられます。」

 それよりも。

「皆さん。どうしますか?」

「どうするって。逃げるんじゃ無いんですか?」

「………。もう説明した時に気付いてはいるでしょうがあれは絶滅した生物です。」

 俺の言葉に「今更何を」とでも言うかのように視線が集まる。

「つまりはUMAだ。」

 そしてその言葉に、目の前に迫っていているヘリコプリオンに目を移す。

「どうしますか?」

 カマイタチやブラックドッグ、ジャッカロープのように会話は不可能。相手は俺達に襲いかかる。

 しかしU.M.A研究部としては絶好のチャンス。

「皆さん。」

 それぞれは静かにヘリコプリオンに目を移す。

 命を危険に晒してまでU.M.A研究部を貫くか否か。

「逃げましょう。」

 そう切り出したのはトウカだった。

「いくらUMAといえど命が最優先です。それに博士達の38機の全部が遭遇できているんです。捕まえたいならまたこればいいじゃないですか!」

「そうだな!」

 いつも冷静に対処し正解に近い答えを導き出せていたトウカが出した答えは。

「そうかな……。」

 クミカとは違う答えだったらしい。

「はあ?クミちゃんは何言ってんだ?UMAを捕まえる事が命よりも大事ってか!?」

 するとアフロはそう反論した。

「クミ先輩。これは仕事です、優先事項を間違えないでください。」

 俺は振り返らずにクミカに答える。

「トウカちゃん、現状を教えて?」

 すると「……あぁ。」とクミカの言葉を聞いて固まっていたトウカが答えた。

「まだ見えません。」


 それから潜水艇には静寂が流れていた。

 目の前に迫るヘリコプリオンにも慣れた俺達は誰一人雑談を交わすことなく。

 必要な事だけを話した。


「あ!もうすぐで洞窟をでます!」

 ならさっさと逃げるに限る。

「アフロ先輩。洞窟を出たらすぐに上昇してください。水圧の変化でヘリコプリオンは諦めると思います。」

「よっしゃ!任せろ!」

「もうすぐです………。出ました!!」

 トウカの報告を聞いたアフロは、すぐさま潜水艇を上昇させていった。

「じゃあなヘリコプター。」

 ヘリコプリオンだ。

「って!!付いてきたあぁぁぁ!!!」

「そんな数メートルの水圧の差で諦めませんよ。スピードでは追いつけないんです、上昇を続けてください!」




 その後、ヘリコプリオンは途中で追いかけるのを諦め、私達はユウマ先輩とアフロの操縦でゆっくりと上昇していった。

「いやはや、よくぞやってくれた!」

 海上に浮かび、ユウマ先輩が撃った照明弾を目印に博士達の乗る船に拾われた。

「途中で通信が切れた時は無かったことにしようか迷ったがなぁ!ハッハッハッ……ハッハ……ははは。」

 ブラックジョークに笑う事の無い私達を見て所長は何か察したのか「あとはゆっくりと海上の旅を楽しんでくれ。」と、私達の船内に残して潜水艇が置かれた甲板へと向かった。


「クミ先輩。先程の言葉の意味を言ってもらえますか?」

 少しの沈黙の後、ユウマ先輩がそう切り出した。

「UMAを捕まえようって言ったの。」

「今回は仕事だと分かっていたはずですよ?」

「別に仕事だからって捕まえちゃいけないって事じゃ無いでしょ?」

「ですがあの状況や装備では捕獲が難しいのは確かです。」

 そんな事を言い合うユウマ先輩とクミ先輩の話を聞いていると、くみ先輩がため息を吐いた。

「そんな事分かってるよ。私が言っているのはトウカちゃんとアフロ君と意識の問題。2人は装備とか以前に危険から逃げようとしたの。」

 突然私達に向いた言葉に私とアフロは答えられなかった。

 確かに私は保身に走っていた。

 確かにユウマ先輩がいれば捕獲はともかく、ほぼ生き延びれただろう。

 でも私とアフロにはその安心よりも目の前のヘリコプリオン (きょうふ)のほうが強く感じてしまったのだ。

「これからいくつもの危険な仕事をしていくのに、たかがこんな事も出来ないトウカちゃんとアフロ君には失望した。」

 そんなクミ先輩の言葉に私は、いやアフロも思わず固まった。

「この様子じゃ今回の仕事に2人に価値はない。私とユウマ君の邪魔になるだけ。」

 ………確かにそうだ。

 カマイタチの時、サビを取ったのはユウマ先輩の技術とクミ先輩の道具。ジャッカロープの群れを連れ帰る作戦を立てたのはクミ先輩だし、レオを連れ帰ったのもまたユウマ先輩とクミ先輩。国やな交渉をしたのも、アフロの手持ちじゃ足りなかった金額を大きく負担してくれたのも、タランチュラとコーンスネイルから毒を奪ったのもユウマ先輩とクミ先輩。

 やっぱり私にあの2人とは一緒に歩くことなんて。


「そんな事はない。」


 私の思考を遮ったのはユウマ先輩の言葉だった。

「確かに2人は大きな活躍はしていないかもしれない。でも、2人に価値が無いことなど決してありません。」

 そう言い放たれた言葉にクミ先輩は小さく笑い。そして椅子に座るユウマ先輩に顔を近づけ、耳元で何かを囁いた。

「………。」

 クミ先輩がゆっくりユウマ先輩から離れると、ユウマ先輩はため息混じりに「なるほど。」と呟く。

「今のクミ先輩の言葉で答えが変わりました。2人には悪いですが今回は仕事に参加して欲しくありません。」

 そうして私とアフロに向けられたユウマ先輩の言葉に私達は何も答える事は出来なかった。

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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