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数分後。
暗い海からビショビショに濡れたクミカが上がってきた。
「数はあれ1つだけだった。」
「感謝します。」
「ユウマ先輩!!」
するとコンテナの隙間からトウカの身長ほどあるガンケースを背負ったトウカとアフロが駆け寄ってきた。その後ろには登山のように大きさのリュックを背負った無表情のガブリエルがゆっくりと歩いていた。
「なんで撃たなかっ……というかその血はなんですか!!!」
きて早々それか。
「その為にもこれの説明をしないといけないけど…。」
ガブリエルに目を向けると視線に気付いたのか静かに頷いた。
俺になら最低限に簡潔に。
「簡単に言えば猛毒を持った個体を傷付ければ毒が漏れる、もしくは放出してしまうかもしれない。」
「だから悪人を捕まえるなってか?」
アフロの攻撃的な口調にトウカも頷いた。
「あのスナイパーは2人の事をいつでも殺せた。恐らくあの仮面の男が死んだら全員殺してただろうな。」
「「え?」」
適当な嘘でごまかしたが2人は猛毒の意味を理解していない。注射器1本で人間という種は必ず絶滅するという事を。
「黒が毒で白が抗体らしい。内容は知っていると思うが詳しく知りたいなら俺に聞け。あらかじめ言っておくぞ。俺は他の人間がどうなろうと、この星がどうなろうと関係ない。だがな。俺が生きている間は俺達を厄介ごとに巻き込むな。」
ガブリエルは無表情のまま返事なのか挨拶なのか分からない礼をすると両手にケースを持って車へと戻って行った。
「さて、自分達も帰りますか。」
そう言ったユウマの声はどこか怯えたように。
震えていた。
・大阪湾 潜水艇内
薄暗い艇内に映し出された水中の映像をバックにさっき掠めた麻酔銃弾を眺めながら思考の時間を過ごす。
「うーんふっ。んふふふふ。」
おっといけない笑みが溢れてしまった。
「しかし良かったのですか?」
私に話しかけてきたのは私と同じ黒い画面をつけた私の後輩兼助手君だった。
「おやこれは助手君。何がですか?」
「助手はやめてください。」と助手君は溜息をついた。
「確か今回の任務で毒を広げる手筈では?」
「確かにそうですが今回の件で少々遅らせたくなりまして。彼の思考能力は素晴らしい。」
「また変人モードですか。何が素晴らしいんです?」
「では助手君。520と言う数字を聞いてどう思いますか?」
「どうと言われましても…。」
「私は頭の中で540+20をしました。」
助手君は首を傾げた。
「では560では?」
「まったく。何を言っているんです?540+20=520でしょう?」
「………はいぃ?」
その反応が当たり前ですがね。
「私の中では〈+〉はマイナスの働きをするんです。」
「………知りませんよ!!」
誰も知らない。知れない。
「そう、私達は私達の知識を持って思考し行動した。なのに彼は私達の行動、つまり520(こたえ)を見ただけで私達の+(知識)と計算(思考)にたどり着いたんですよ!!」
意味を理解した助手君は「あり得ない。」と唖然とした。
「あぁ!!ブラックエンジェル!!貴方が欲しい!!!」
・ポートアイランド 車内
「っ!!」
「どうしました?急に構えて。」
なんだ今の感覚。
「嫌な感覚が背中を流れた。」
「風邪ですか?」
「それ私…。」
助手席に座る俺の後ろから聞こえた鼻の詰まった声のクミカに視線が集まった。
そして少しの沈黙の後、俺に視線が向いた。
「言い訳はしませんが謝罪もしませんよ。」
「いやしろよ…。」
「ヘックチッ!!!」
・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)
「さてと、今回の仕事はあれでクリアなんだよなぁ?」
心底疲れた様子でアフロはそう言った。
「ええ。ガブリエルさんに確認も取っていただきました。」
「んでー?次は何をするんだぁ?」
「えーと、自衛隊のはユウマ先輩が1人でやるって言ってましたから、あとはこの8つですね。」
そう広げられた8枚の書類に目を通りしていく。
「で、これは最後っと。」
そのうちの1枚をトウカは除外した。
「てことは…あと。」
・南極基地での調査補佐
・南極基地へのスパイ
・〈地獄の声〉の調査
・マリアナ海溝の調査補佐
・地下犯罪者都市の壊滅補佐
・様々な情報の提供
・能力成長実験の補佐
「の7つですね。」
全員が沈黙した。
「なかなかハードというかなんというか………。」
そう切り出したクミカに続くようにトウカとアフロは愚痴をこぼし始めた。
「いやいやいや!無理だろ!」
「そうですよ!何ですか南極って!地獄って!!犯罪者都市って!!!」
まあ、言いたい事も分からないでもないが。
「ガブリエルさん。説明して貰っても?」
ガブリエルは頷くと一枚を指差した。
「南極基地での調査補佐はその通り調査の補佐です。」
「ふーん………いやちげぇ!!」
どっちだ。
「俺が言いたいのはどうやって行くのかとか細かく何をするかだ!!」
「現地まではこちらがお送りいたします。細かな仕事はこちらでも把握していませんので現地で聴くという型になりますが、もし不可能という事であれば別の仕事を用意いたします。」
「………。ん、おぉ………。」
思っていた以上に正確な答えが返ってきたんだな。
気まずそうに相槌するアフロの後ろではトウカも口を尖らせていた。
「そしてスパイというのは南極基地での調査内容を紙にまとめて私に渡していただければ結構です。」
続けるのか。
そしてガブリエルは順に紙を指差していく。
「地獄の声の調査は地殻調査途中に地下14kmで聞こえたとされる声の再録音もしくは音声解析による原理の証明。」
「これは有名だな。」
アフロは頷いた。
真偽は分からない上に何故俺達が調査しなければならないんだ。
「マリアナ海溝の調査補佐は最深部のチャレンジャー海溝に潜る潜水艇に乗っていただきたいそうです。」
これに関しても何故俺達がやらなければ行けないのか分からない。
「地下犯罪者都市の壊滅補佐は単純に犯罪者を逮捕すると考えてください。」
「「そんな仕事を高校生に任せないでください!!」」
これは俺目当てだな。
「情報の提供については情報屋からの仕事ですので皆様が知っている裏の情報を伝えればいいかと。」
裏ならばアフロが適役…か?
「能力成長実験の補佐については場所と条件以外一切分かりません。」
「そんな仕事は渡すなよ。」
そんな仕事は渡………。
「チッ…。」
「何故に舌打ち?」
俺のセリフを先に言われてイラッとした。
「でもさ…この仕事の内容と量………。」
そのクミカの言葉に現実を突き付けられたのか
「「無理。」」
とトウカとアフロは遠い目をして呟いた。
「さて。俺たちはジャッカロープとも友達になって!」
「仕事も1つ終わらせて!」
「宿題もなんとか間に合って新学期!!………のはずが。」
「「なんで人類数番目の快挙を成してるん「ですか?」だ?」」
トウカとアフロはつい数秒前の新学期のテンションとは打って変わって、感情なくそう言った。
・マリアナ海溝最深部 潜水艇内
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見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
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