1-2
数時間前に日は暮れ、少ない街頭に照らされたコンテナ群に俺とクミカは潜んでいた。
「まさかレオちゃんを渡す時の場所が密輸予測地点とはね…。」
「まあ同じ埋め立て地と言うだけですが。やはり考えは似るでしょうね。」
内容が違うとはいえ同じ密輸だ。
「「………。」」
次の瞬間。殺気にも似た空気と共に複数の足音が聞こえてきた。
「おい周辺に人はおらんねんな?」
中央を歩く少し年配ながらも筋肉質なリーダー格であろう男が関西弁でそう言いながらスーツを着た男達15人を連れて俺達のいる方向への歩いてきた。
「はい。元から人の少ない場所ですが、今日はここ一帯に一人足りとも確認できていません。」
俺たちが自然な形で人よけをしたからだな。
「ほう…ならそこらへんのコンテナん中と影だけ見てこい…。」
その言葉にコンテナの影を確認し始めた部下らしき男達。
俺とクミカは頷き合い、気配を消した。
「来ましたよ。」
「ああ。障害物のせいで数は分からんが会話に通信機を使ってる気配はねえ。やるなら今だろうな。」
すると常に開放してある通信機からNOの合図であるピーと言う機械音がイヤホンから聞こえた。
「それじゃあ集合した時にバレます。焦ってはダメです。」
最終的にコンテナの上に伏せる事でバレずな済んだ。
しかし狙撃手がいるとしても2人で15人を殺さずに相手にするのは少し面倒だな。その上まだ密輸相手はいない…。
するとイヤホンからアフロの狙撃を促す言葉が聞こえた。
通信機のボタンを1回押す。
作戦を伝える時に決めたNOの合図。
その説明をするトウカの声に安心してリーダー格の言葉に耳を向けた。
「予定時間まであと30分。足2人で5匹を構成して潜め。残り5人は俺の側に立っとれ。」
10人は「はい。」とお辞儀をした後コンテナの隙間に隠れた。
「おい、ここに登るぞ。」
「おう。」
しばらくして俺とクミのいるコンテナのすぐ下でそんな声が聞こえた。
これはまずいな。
すると今いるコンテナの隅に手がかけられた。
クミに目を向けると小さく頷く。
そしてかけられた手とは反対方向に転がり、落ちるように2つ重ねられたコンテナから降りる。
上が無理なら死角に隠れるしかない…。
「「っ!!」」
すると降りた先に別の2人が歩いていた。
これではもう隠れきれない。なら見つかる人数を減らす!
ガブリエルに貰っていた麻酔弾を投げ、落下する俺達の下をを歩く2人の首へと撃ち込む。
この麻酔薬は超即効性。脳に回れば気絶、もしくは動けなくなる。
俺とクミカは着地すると同時に2人の口を押さえ、コンテナ上にいる2人に見つからない場所に移動する。
ロープで両肘を体の前で縛り、手を首の後ろで手枷結びをする。そして手枷結びから伸びた縄を背中を沿って足首を縛る。
クミに任せたもう1人を見ると手足首を縛り、余ったそのロープをコンテナに縛り付けていた。
「ユウマ先輩。」
イヤホンから聞こえたそのトウカの声は通信機越しにもかかわらず張り詰めた様子が伝わった。
後は任せた。
通信機のボタンを2回押した。
許可がおりた。
「狙撃した事がバレないようにやるぞ。」
いちいち言わなくても分かっている。
「私はコンテナ上の奥を。アフロ先輩はその手前の奴を。」
「分かった。」
「10秒後に発射で。」
スコープに映し出されている秒刻みの時計を見て、ここに来てからもう8時間経っていることに気付く。
「合わせてください。3…2…1。」
トウカのカウントダウン後にガンッという音がさっきまで俺達がいたコンテナの上から聞こえた。
「2人やりました。」
トウカの報告に俺とクミはコンテナにゆっくりと登り上で倒れていた2人の男を拘束した。
「後4人………来ました!ユウマ先輩から南側の海、明かりのない真っ黒な船です!」
来たか。今回の密輸相手〈コーンスネイル〉。
2日前
「まあ仕事は結局全部やるんでどれでもいいですが。このタランチュラとコーンスネイルって何です?」
ーーーーーーーーーー
国内組織と海外組織の密輸の阻止及びその密輸物の回収。
国内組織タランチュラと国外組織コーンスネイルの密輸を阻止し、密輸物を全て回収する事。
ーーーーーーーーーー
「タランチュラは確かうちの国の良いとは言えない組織だよな?」
アフロの言うとおりだ。薬物や銃、依頼が来ればテロやスパイもやるという犯罪組織。
「このコーンスネイルは確か最近海外で活発化している同じく犯罪組織です。訳はイモガイ。猛毒の貝ですね。」
そう説明するとガブリエルは小さくうなずいてスマホを机の上に置いた。
「これを。」
4人で覗き込むように画面を見るとクミカが首を傾げる。
「これは海外の新聞?」
その中には殺人や薬物、中には人身売買の文字まで書かれていた。
そしてそのほぼ全てに共通しているもの。
「コーンスネイルと断言されていない?」
クミカの呟きにトウカとアフロが新聞を見直す。
「本当だ。全部、疑いか可能性だけ………。」
「でもこれだけ違うな…って!ちょうど俺たちがアメリカを出た頃の事件だぞ!ええっと?スーパーの裏で発砲音。放心状態の男3人が見つかる。3人はコーンスネイルと関係する組織の者と判明。3人は白い悪魔を見たと供述?」
「………。」
「ちなみにこれがコーンスネイルの紋章のような物です。」
そう言ってガブリエルは机の上のスマホの操作した。
それは羽のない銛のような数本の矢が矢尻から矢先に向かって捻れ、最終的に大きな一本の矢になったマークだった。
「で、今回はこの2つの組織の密輸を阻止しろと?」
「いえ、密輸自体はそれ程問題ではありません。ただ密輸される物が問題だそうです。」
「おっと、ガブリエルさんはただの伝言訳でしたね。」
力が抜けたようにため息をついたトウカはスマホを手に取る。
「密輸する物が猛毒の矢なら、それを刺されたタランチュラ。もっと言えば日本もヤバイって事ですね。」
無力的にそう言ったトウカの目はどこか殺気が混じっていた。
「おい!コーンスネイルは今は放置だ、先に残りの4人をやるぞ!」
「分かってますよ!それよりもあの一組だけ動き回ってるんです!先にあれをやりますよ。」
「分かった………。ん?これ動いてる対象狙えなくねぇか?ロックオンしても標的が動いたら計算して撃ってもそこにはもう標的いないだろ。」
全く。昼の間に練習しておけばよかったものを。
「一応銃口に付いた別のカメラがその対象を追って計算してくれますが人の行動は計算出来ないのでどうしても球が当たるまでの8秒間停止する必要はあります…。」
「8秒………あいつら歩き回ってるのにか?」
分かっている。だから……撃たない。
「待ち伏せします。標的が来るであろう場所を狙って撃てる状況にしておけばそこに標的が来る8秒前に撃てばいい。」
幸い相手は同じ速度で歩いているしコンテナのお陰で行動も予測しやすい。
パパァン!!とタイミングのズレた2つの銃声が響いた。
「1人逃した!」
マズイな。両方なら大きな混乱も起きなかったが…。
「もう1人は死角に入られました!」
「場所は?」
マイクが拾うギリギリの声で言う。
「…ユウマ先輩から北へコンテナ6列挟んだ道です!」
「こっちでやるから残りの2人まかせた。」
「…スマンユウマくん。」とトーンの低い声を聞いて俺は左、クミカは右の道へと走った。
「3.2」
そこまでカウントしたところでユウマ先輩とクミ先輩のマイクから銃声が聞こえ、それと同時にユウマ先輩のマイクとの接続が切れた。
「!?………2.1。」
ここで慌てては全てが水の泡となる。
アフロもそれは分かっているのか呼吸を乱しながらもスコープから目を離さず引き金を引いた。
伝えられた道へ勢いよく出ると。
「お前だな。」
まるで俺が来ることを知っていたかのように銃口を向けられ、引き金が引かれた。
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