借り
・国会議事堂 廊下
「さて、作戦を繰り返しますよ。」
「っておい!!散々バカな事を叫んだ後は衛視を気絶させて侵入!!?こんなの聞いてないぞ!!」
言ってないからな。
「まず交渉しますが上手くいかないでしょう。なので出来るだけ人を減らしたら、プレッシャーをかけて契約を結びます。」
「てか俺の話無視?…てかそれだけ!?」
「あぁ。トウカちゃんは相手の感情を逐一報告してください。嘘なら一回。動揺は二回。それ以外の異常は耳打ち。三つ以外は無視でいいです。」
「………いやそれだけ!?」
・国会議事堂 会議室
「うわぁ。あんな下品なユウマ君始めて見た。」
「なんかユウマ君て場所と人ごとにキャラ違うよな。」
「………わーわー。聞こえなーい。ユウマ先輩があんな事言うはずがなーい。」
3人とも聞こえているぞ。あとトウカは耳を塞がずに人の感情を見ろ!!
全く。
残り人数は7人か。まだ多いな。
さてトウカの情報だと向かって右前の女が〈寝取る〉と言う言葉に嫌悪する様に反応したらしいが。
俺はその女の後ろに立つ。
「ところであんた。もしかして浮気された事があるのか?」
すると女は「えっ!?な、ないです!」と勢いよく振り返る。
確認をトウカに見ると小さく一度頷いた。
俺は女の耳元に口を近づけ、そっと囁く。
「もし傷付いているなら俺が話に乗りますよ。もし良ければパートナーへの〈やり返し〉しませんか?」
こんなものかな。
すると女は冷静を装っているがよく見ると耳が赤くなっていた。
方向性の違う唐突な攻撃で隙をつくり、復讐心を利用して心を揺らす。
トウカの情報を集めて作った攻撃は想像以上に上手くいった。
すると総理の秘書らしき女が今の女を退出させた。
残り6人。
まだ多いが、そろそろ総理が動くだろう。
「さて、次は…。」
「いい加減ふざけ過ぎだ。」
やはりな。
「とある土地が欲しいと言ったな。一体何処の土地だ。」
ここは最低限の言葉で考える時間を与える。
「海星学園の裏山。」
………。
「「「「「「………。」」」」」」
トウカが俺の裾を二度と引く。
動揺。
やはりあそこで何かをしようとしていたのか。
学園長の話。〈実は土地を買いたいと言う者は数人いてね。〉学園長は生徒ではなく者と言った。
つまり学生ではない誰か。学園に利益を上げる事の出来る誰か達。
ゴリ押しはゲームプレイヤーとしてはあまり好まないが…。そろそろ潰すか。
俺は総理の後ろへと立つ。しかし依然と前を向いたままの総理。
流石はこの国のリーダーだ。
そして俺はもう一度耳元に口を近づけ、しかしさっきとは違い、囁くのではなく小声で。
「さて。契約は結ぶのか?そうだな…あの隕石の借りを返してもらおうか。………どうする?借りを返すという形で山を渡すか。裏山を渡すに見合った仕事をさせて山を渡すか。選ばせてやる。」
奴は主導権など渡していなかった!!元から渡すつもりなどなかった!!与えられたのは選択権。結果は同じの、方法の選択。勿論断る事もできるが………。
断れば何かあると勝手に思い込むだろう。
いや、断らせないが。
カラとナギ、キー、ラファエルに向けた物と似た。しかし普通の人間なら動けなくなるレベルの殺気を総理に向けた。
おまけに不敵な笑みもサービスしておくか。
「っ!!!」
心拍が上がり、呼吸が浅く早くなる。
周囲の者も同じく奴の殺気に飲まれまいと耐えているがそれ故に他者を助ける余裕など無い。
6人の内3人がやられた。
トカゲの尻尾は使い捨て。しかし今回は尻尾ではなくを斬ればもう生えないであろう足。
かと言ってこのまま逃げようとすれば全てを潰される可能性がある。
ならば…。
「私の方から口を出して見るが、海星学園の裏山は少々難しいかもしれない。別の土地ではダメなのか?」
そう来ると分かっていたが。
そうやって注意をそらさせたりするから裏山が重要だとバレるんだ。
第1いくら国が動いているといえど、何故多忙なはずのお前があそこを売るのが難しいと知っている。
「ダメだ。」
やはり奴はあの場所の事を知っている?
いや、しかしそれは宇宙局の限られた数名と各国首脳、その秘書のみが知っている事。
データも完全に独立させ、それぞれがランダムに決めた10桁のパスワードを全て打ち込まなければ開けない。
ただの偶然?
いや、今は経緯を考えても意味はない。
「分かった。今ここにいない者にも連絡をして判断する。少し席を外してくれ。」
「おっと。わざわざここに来た意味は分かるな?」
学園への交渉はもうしたのか。
廊下に出るとそこには壁にもたれかかったり廊下にしゃがみ込んだりする途中退出者がいた。
ユウマ先輩は意図的にこの状況を作ったのだろうか。
「ふんふふん。」
「ユウマ君の鼻歌なんて初めて聞いたな。よほど上手く行きそうなのか?」
「「………。」」
あの殺気と不敵な笑みは数度見ている私やアフロ。クミ先輩ですら顔を引きつらせた。
しかし、アフロは気付いていないが私はあの殺気なんかよりも。今ああして私達に背を向けて窓の外を眺めながら今まで見せた事のない不敵な…いいやユウマ先輩にとってはこれが普通なのかもしれない。
でも私は、窓に反射した殺気は纏わずむしろ感情なく、まるで悪魔のようにただ笑っているユウマ先輩が
「最近は辞めていた趣味も中々悪くないなと…思いまして。」
ひたすらに恐ろしい。
「どうぞ。」
総理の秘書らしき女が扉を開くと、少し前とは違い、堂々と再奥に座る総理がいた。
立て直したか。
他の者はいなくなり、部屋にいるのは総理とその秘書、U.M.A研究部員のみになった。
「さて。関係者に連絡をしたところ、見合う仕事をすれば土地を売っても良いとのことだ。」
売る、か…。
「買うだけなら学園で出来る。……いくらだ。」
「それは仕事に見合った分だけ引かれると思ってくれ。」
引かれるという事は元の値段は変わらないという事か。
「分かった。仕事とやらは何をすれば良い?」
「それはいくつかあるうちを選ばせてやる。複数選んでも構わん。」
ばせてやる…?
「あまりなめるなよ。」
立て直したついでに俺達から主導権を握るつもりか?
いくら選択権を与えたとしても俺が主導権を握っている事に変わりはない。
「まあいい。全ての仕事を聞かせろ。」
総理は鼻で笑うと壁にさまざまな写真や書類の映像を映した。
「一つ。指定の国内での不可解事件の解決、マイナス10万。二つ。指定の全世界での不可解事件の解決、マイナス15万。三つ。特殊指定危険人物と指定されたブラックリスター無力化、平均マイナス300万。四つ。」
クミカやトウカのモチベーションを上げる為に町側を買ったと言ったが、実際買ったのは町側のほんの一部分のみ。
実際山を買うにはアフロの全財産を使おうとも全く足りない。
もし全財産で収めるのなら。
学園長の求む値段の千分の一にしなければならない。
果てしなく程遠く。狙いとは違いタダでは手に入らなかった。その上値段を下げるにも減額式。
「世界で起きている指定の戦争の終戦、マイナス。」
俺から主導権を握ろうとするにも雑すぎだ。
「まて…。その減額は後だ。まず俺の借しを返していくらだ。」
トウカが二度裾を引いた。
そしてクミカ、トウカ、アフロに合図をすると3人は戸惑いながらも部屋を出ていく。
「いくらだ?」
「………借りを全て返して。…ほぼゼロだ。」
よほど言いたく無かったのか。ゼロにしてはいけなかったのか。
「「「ゼロ!!?」」」
総理が言い放った言葉に3人は閉まりかかっていた扉を勢いよく開ける。のを俺は力ずくで防いだ。
3人に聞かれたのは面倒だがこの際もういい。
「なら黒騎士と宝石の件を抜けばいくらだ。」
「………数億だ。」
十分。
「ならばその借りを今返せ。そして残りをゼロにするだけの仕事をくればいい。内容は選ばないが期間的、現実的に可能な物のみだ。後日連絡をくれればいい。
有無は言わせない。
今の俺が放てる最大の殺気を放ち。部屋を出た。
「さて。マスクはつけましたか?帰りますよ。」
帰りは俺もマスクを付け。国会議事堂を出る頃には門の前にSNSで最初の演説が拡散されたのか若者の数が増えていた。
さらにはテレビのカメラもこちらを向き、取材者が走ってきた。
「先程入っていった方々ですよね?衛視の方に暴力を振るったと聞きましたが!?」
「そちらの方は大炊御門社の会長ではないですか?」
「はいそうです。」
そうトウカが答えると周囲は「おおっ!」と声を上げた。
「うぉい!!何ありもしねぇ事を言ってくれてんの!?これ放送されて大炊御門社さんに訴えられたらどうすんの!!?」
作戦通り違うと言う演技をしているな。
こいつらの質問にもひとつくらいなら答えてもいいだろう。
立ち止まるとマイクを近づけられた。
「暴力を振るった?…いいですか?犯罪は訴えられなければ犯罪ではないんですよ?」
周囲の人々が硬直し静まり返るとほぼ同時に前の道路に黒塗りの車が止まった。
「行きますよ!!」
その俺の言葉にU.M.A研究部員は全力で走り、車に乗り込んだ。
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見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
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