元
「あ、ここで回想に入るんですね。」
「あんのクソババア!!収益の10倍なんて無理だろ!!」
そう声を荒げてアフロは机を叩いた。
「時間をかければ可能でしょう。ただ今回ばかりは時間がない。」
俺達よりも早く交渉に行った奴らがいる。
「元から売る気は無かった。」
「やっぱそうなるかぁ…。」
アフロは背もたれに身を任せ目を片手で覆った。
「え?でもさっき生徒には売ってくれないって言ってませんでした?他の人にも売らないんじゃ…。」
「それは個にだよ。交渉相手は集団。」
いくら4人いるとしても1つの部活。それが全てを買い、利益の5%を払うと言っても利益が下がれば終わり。同じ値段で買い戻したとすれば結果は小遣い程度。
その上何かしらの残骸を残すような事があればそれの片付けもしなければならない。そうなれば学園に入る金はむしろマイナスになる。
ならば集団と言えど個々の集まりに売れば、1つが利益を上げられずとも他の利益がある。そして1つを買い戻したとしても、波に乗った他がその土地を買う確率は高い。
明らかに集団に売った方が学園がプラスになる可能性は高い。
第一交渉相手は………。
「恐らくアフロ先輩が町側の土地を買って工事をした事から何かしら大きな行動をすると分かったのでしょう。」
だからもし買い戻す事があれば何かしらの残骸を残す可能性があると判断された。
「と言うか大炊御門建設工事再開したそうですね。こんな山奥にいったい何を立てるんです?」
「それはまた今度…。今は学園側の土地の件を。」
意気揚々と話そうとしたアフロを遮って話を続ける。
「あの土地を買います。」
「「「………ん?」」」
今まで黙っていたクミですら首を傾げた。
「え?ちょっと待ってくださいね?確か買えないんじゃ…。」
「別に買えない訳じゃねえ。時間が無いから事実上買えないだけだ。まあそれだけの金があればもっと広い別の山を買うがな。」
ヤケになったのかアフロはそう言い捨てた。
「って事はそれだけのお金を短期間で用意するって事ですか?」
勝手に完結したようだが違う。
「アフロ先輩。ずっと前に言った国を動かす金の話ですが。」
途中で察したのかアフロは「まさか!」と目を見開いた。
「国を動かす時です。」
「だが最初に学園長に交渉に行ったってことは本当は今のタイミングじゃなかったんじゃ………分かってたのか?」
ご名答。
「俺は交渉するだけと聞いてたんだがなぁ…。」
ため息混じりにアフロは笑う。
「一度で説明するほうが楽かと思いまして。」
「めんどくさかっただけじゃねぇか。」
否定はしない。
「まあ、元からこんなはした金で売ってもらえるとは思っていませんでしたよ。」
「はしっ…?」
その言葉にトウカが唸る。
クミカとトウカにも説明をしなければならない。
「さて。もし海星学園が私有地なら〈売らない〉と言われておしまいでしたね。」
それ以上は金を積むしかない。
「ですが。アフロ先輩が言っていたでしょう。ここは…。」
「国有地?………でも結局個人には売ってくれない事に変わりはないんじゃ。」
そうトウカは呟く。
「いえ。もし私有地なら交渉には私有者しかありません。ですが国ならば、交渉相手は学園だけではない。」
すると意味に気付いたトウカは「あっ!」と声を出した。
「そっか!いくら学園長が売らないって言っても元を辿れば土地を持っているのは国、なら交渉相手は学園長だけじゃない!!」
解説どうも。
「ただ簡単には行きませんよ?少なからず金銭面での余裕を作るために交渉するのであって、それ以外の面では学園から買うとは比になりません。」
その言葉に3人は怯えた。これから来るであろう想像してもしきれない困難に目を伏せ、恐怖し、拳を震わせ。
る事などなく。
一般的な学生からかけ離れたここ数日の生活で慣れたのか。それどころか、まるで何かを求めるかのように。
クミカ、トウカ、アフロは……。
深い笑みを浮かべた。
そして冒頭のような3日の準備期間を経て。
・国会議事堂前
チラホラとテレビのカメラや観光客、少数のデモ団体が見える中で俺以外はマスクと帽子で顔を隠す。
「さて。まずはイージーレベルを行きましょうか。」
クミカ、トウカ、アフロは背に背負っていたバックから拡声器を取り出し「あーあー。」とテストをする。
「コレがイージーとは。俺は直談判に行くだけと聞いてたんだがなぁ。」
「と言うか普通に取り押さえられませんかね?
トウカの呟きを聞いてクミカは大きく息を吸う。
「我々は救世主である!!」
続いてアフロ。
「しかし過去の救世主はなんと可愛そうなのだろう。」
トウカ。
「誰よりも正しく生きたにもかかわらず報酬は選べない。」
そして俺。
「ならば我々は救世主とは名乗らない!我々は報酬を求める商人である!交渉に来た!!」
いつもより力強く扉を開けられたと思えば、そこには政府の中でも力の持つ面々が汗を流していた。
「総理!!門前に商人を名乗る4人の少年少女が!!」
「そんなもの放っておくかさっさと追い払え。」
まったく。面倒な事を増やしよる。
「それが…!その中の1人が恐らくですが大炊御門社の会長!大炊御門 亜風呂です!!」
「何ぃ!?」
大炊御門社。確かネスト社会長の息子が企業している…。
そんな者がふざけるだろうか…否。
「また、話の内容が救ってやるから報酬を寄越せと言う物でして!」
「他の3人はどんな者だ!」
「会長を含む3人は帽子にマスクと覆面をしていますが2人は少女かと。そしてもう1人は覆面なしの白髪赤眼の顔立ちの整った少年です。」
「………。」
他に目を向けると、奴を知っている数人は会長など関係ないとでも言うかのように顔を青くし、冷や汗を流す者ばかりだった。
「本物だ!」
誰かが放った言葉に頭の中が白くなる。
誰も扱いきれない。権力、軍事力、知力、その全てにおいて75億人を凌駕する化け物………。
「今すぐここに呼べ!!」
「と、言うと思ってな。」
その場の全員が同じ方向を見ると、そこにはマスクをした見知らぬ少女二人と同じくマスクとサングラスをしたアフロ男。
あのアフロは確かに大炊御門の…。
そして。奴がそこにいた。
「よぉ。助けに来てやったぞ。」
「お、おいユウマ君!流石に勝手に入っちゃ!」
会長らしき男は怯えた様子でそう言い。
「でも警備員さんを切り抜けたあとは迎えてくれる感じでしたよ?」
金髪ツインテールの少女は緊張する様子も見せなかった。
「気絶させたからな!!」
「おお、テレビでよく見る人達だ。」
もう1人の少女は部屋に押しかけた者達の顔をみてそう呟いた。
だが奴らは放置だ。
それよりも………。
奴を見ると思わず体がこわばってしまう。
ここは出来るだけ穏便に…。
「何の用かね?」
「欲しい物があってな。それに見合った事をするからそれをくれ。」
欲しい物…。
今回は私達が頼まれる側という事か。
ならば。今回は私達に主導権がある!
奴は敵に回れば勝ち目はないが、上手く操れば………。
「ここで話すのもなんだな。部屋を用意しろ。主要人物を出来るだけ集めてな。」
奴の言葉を聞いて私の隣に立つ秘書に目を向けて頷くと、秘書は頭を下げ廊下へと消えた。
「こちらへ。」
秘書が詳しい事を知った者を全てに声をかけ会議室へと集めた。
部屋は暗くされ、私の後ろのスクリーンには単純な映像が流れる。
「早速だが本題だ。政治が堕ち、借金が増え、他国に操られ、脅威に晒されるこの国の、リーダー諸君。俺達が一つ何かを解決してやる。」
どこからどこまでが一つなのか。
「そのかわり我々か望む報酬はとある土地。もしかすればこの中にはもう知っているものがいるかもしれないなぁ。」
そう奴は不敵な笑みを浮かべた。
「その前に一つ聞かせろ。一つとはどこからどこまでが一つなのだ?」
そう1人が唱えると奴は両手のひらを上に向け首を振った。
「それはお前らが判断すればいい。国を滅ぼせばいいのか、一歩歩けばいいのか。」
つまり今回は本当に我々に主導権を渡した?
「なるほど。それは私達に言っているのか?それとも誰か1人に言っているのか?」
今度は別の1人がそう言った。
「結果を約束するならどちらでもいいさ。なんなら嫌いなアイツの嫁を寝取れって言うのもいいぞ?」
コイツは!!!
常に私達を見下し、舐め腐る。にも関わらず私達の遥か先を歩く。
今の言葉のせいで半数以上が呑まれた。
頭に私情を思い浮かべてしまったのだ。
呑まれなかった者は即座にそれに気付き、呑まれてしまった者を退出させる。
その途中、金髪ツインテールの少女が奴に耳打ちをしていた。つまり何らかの事を今奴に伝えなければいけなかった…。
他の奴らも油断はならないな。
そう再確認をして、私は奴に目を向けた。
あまりの強力さに監視下に入れようと世界中から送り込んだ自衛隊、軍などの全てにおいて奴に触れる事すら出来ず。世界が共通して認めた脅威。
霧崎 優真。
我が国の最高機密文書にはこう書かれている。
こちらからは関わらず〈尻尾を切ってでも逃げろ〉と。
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見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。
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