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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.3
3/73

公欠 修正済み

 ・海星学園 裏山 合宿棟 グラウンド

 蝉の鳴き声が響き渡るここには数年間人が来なかったのだろう。

 木製の平屋の壁には植物のツタが広がり、運動部の合宿で使ったであろうグラウンドには雑草が生い茂っている。

 そんな場所にいつもなら授業を受けている日時に、いつもなら授業を受けているはずのUMA研究部員が私服で揃っていた。


「な、なあユウマ君よお。なんでこんなところに来たんだ?」

 見た目だけは強面な、サングラスをかけたアフロは震えた声でそう問いかけてきた。

「ここは海星学園の合宿棟です。海星学園の部活動で使用して問題が?」

 そしてツチノコとクミが言うにカマイタチや九尾のいる山だ。人気も少なく探索にはちょうどいい。

「昨日は結局具体的な目標を決めれませんでしたからね。クミ先輩とツチノコが出会ったことがあると言ったカマイタチが最も可能性があると判断しました。」


 カマイタチ

 日本に伝えられている、イタチの前足から鎌のようなものが生えた姿をした妖怪の一種である。

 つむじ風と共に現れ、人を切りつけると言われている。

 これに出会うと刃物で切られたような鋭い傷を受けるが、痛みはなく、血も出ないと言われている。


「でもユウマ先輩。わざわざ授業サボらなくてもよかったんじゃないですか?」

 するとそう言いながら、金髪のツインテールを揺らす小柄な体が俺の前に飛び出してきた。

 サボる?

 そして、すこし心配そうに眉をひそめるトウカに俺は笑いかける。

「この霧崎優真が何もしてないと?」

 するとトウカとアフロは首を傾げた。

 自画自賛だが俺がそんな抜かりをするはずがない。

 ちなみにクミ、もといあのバカはさっきから行方不明だ。

「昨日、皆さんと解散した後、職員に掛け合って皆さんの申請をしておきました。期間限定的な自分へ付き添いの公欠として。」

 もちろんその申請は通ったのは言うまでもない。クミの思惑通り、俺の名を出すとすぐ認可されるからな。

「ユウマクゥン!!」

 2人の疑問に答えると、突然アフロが抱きつこうとしてきた。

「やめてください気持ちわ……臭……照れ臭いですアフロ先輩。」

 飛んできたアフロの肩を押して距離をとっていると、アフロは俺の肩を強く掴み、激しく揺さぶってくる。

「今気持ち悪いって言った!?今臭いって言った!?おい!言いかけただろ!?」

 ソンナコトハナイ。

 そんなことをしていると、少し離れた場所からトウカの声が聞こえてきた。

 俺はアフロに揺さぶられながら声の方向を見ると……。


「クーミーセーンーパーイー!ダメです!それはマズイです!サイズ的にも角度的にもマズイですってばー!!」


 合宿棟の床下に入ろうとして、今にもスカートの中が見えそうなクミをトウカ必死に止めていた。

「ツチノコちゃんは入れたよ!」

「約80倍の差があるんですから!!」

 ツチノコはアオジタトカゲ予測するに約600グラム。80倍というのが重さで計算するに48kgってところか。

 そもそも山に行くとは伝えていたはずだが、何故スカートで来た。


「ところでアフロ先輩とトウカちゃんはカマイタチに会った事はあるんですか?」

 そう問うと、揺さぶるのをやめて俺の隣に立ったアフロと少し離れた場所でクミを引っ張るトウカは顔を合わせて苦笑いを浮かべた。

「いやー、それが俺とトウカちゃんが行った時は会えなくてね。」

「名前で呼ばないで下さい!」

 アフロが答えるとトウカは俺達に聞こえるように張った声でツッコミを入れた。

 やはりバカの幻覚だったんじゃないのか?


「まあ皆さんが気にしていた問題も解決したようですし、合宿棟の準備をしましょうか。」

「あれのどこが解決したんだよ!!」

 俺の言葉にそう反発したアフロは未だに床下に潜り込もうとしているクミを指差した。

「あんな問題は四捨五入で0です。」

 そう言って合宿棟内に入っていくと、背後に立つアフロは「はあ!?」と声を上げた。

「……やっぱ天才の考える事は分からんなぁ。」

 その考えには同意だ。バカの考える事は分からない。あと悪いな、俺は天才ではなく

「<鬼才>だ。」

「ん?なんか言ったか?」




 ・海星学園裏山 合宿棟 教室

 こんなところか。

 合宿棟の二部屋を完璧に掃除し終える頃には夕方になり、外ではヒグラシが鳴いていた。

 日光が入らなくなり暗くなった教室で、今までは付けていなかった電気のスイッチを押してみるが、明かりはつかなかった。

 ところで奴らはどこに……。

 部屋に荷物を置くなりどこかへ行ってしまった3人の事を考えながら、俺が持ってきたランプを天井にかけていると、教室の外から話し声が聞こえてきた。


「いやぁ惜しかったなぁ、もう少しだったんだが。」

「チッ、あの時アフロが失敗しなければ。」

「トウカちゃんも失敗したじゃねぇか!」

「だから私に任せておけば説得できたものを。」

「殺されかけてたじゃねぇか!」

「まあまあ、明日はユウマ君も入れればぜったい行けると思わない?」


 そして、頭の上にツチノコを乗せたクミとツインテールの片方が解けたトウカ、アフロに枝と葉を絡ませたアフロは楽しげに話しながら、掃除したばかりの部屋に全身泥だらけかつ土足で入ってきた。

 ………。

「よしバカども表出ろ。」

「……ん!?」

 おっと危ない、本心を言わずにはいれなかった。

「ですから、靴は脱いで大まかな汚れを落としてから入ってください。」

 すると暗くなっているにも関わらずサングラスをつけたままのアフロは首を傾げた。

「そんな長いセリフだったか?」

「そんな長いセリフでした。」




 現在女子2人が入浴中だ。

 合宿棟ゆえに風呂はあったが水もガスも通っておらず、水は川から汲み、石の貯めたペットボトルを沈めてカサ増しした。もちろん山奥の清流、水は綺麗だが一応念には念を入れて、飲料水用に持ってきていた簡易浄水器を無理やり使って濾過。その上水を沸かすための湯沸かし器を合宿棟にあったガラクタから作った。

「なあユウマ君……風呂に」

「行きません。」

 しかし男風呂と女風呂を分ける壁が壊れており、男女交代で入る事になったのだが、あれだけの準備をしたにも関わらず俺は何故か2番風呂なのだった。


「ところで自分が掃除している間、皆さんは何してたんですか?」

 床に座り、そんな会話をしながら俺は盤面の角に白の駒を置く。

「あぁクソ!角取られた!……ん?さっきか?さっきはカマイタチを探してたんだよ。」

 なるほど、俺が掃除し、飯を用意し、湯を張っている間にぬけぬけと部活動に勤しんでいたわけか。

 するとアフロは一番数が取れ、そして確実に負ける場所に駒を置いた。

「見つかったんですか?」

 そして次のターンで俺は取られた駒よりも多く取り返すとアフロは「なんでだ!!」と床を叩く。

「……ん?カマイタチか?見つけたぜ?」

 ん?

「………見つけたんですか?」

 そう問い直すと、アフロは「ここだ!!」と自信満々に駒を置く。

「ああ見つけたさ。でもすばしっこくてな、ツチノコは説得するとか言って殺されかけるし。」

 そんなアフロの説明を聞きながら、俺はアフロの置いた駒を使いアフロに駒を取れないようにさせる。

「なんでだ!!!」

 叫ぶアフロに小さくため息を吐いていると、俺の後ろの壁の穴から何かが入ってきたのを感じた。

 まあ野生動物なら、人がいると気付けばどこかにいくだろう。


「下手くそだなぁ。ほら、そこを取れば角を取れる。」


「あ?おお!!本当だ!!」

 最初から置けたんだが………。

「「ん?」」


 さて、今の現状をおさらいしよう。

 女子は入浴中。

 アフロをオセロでイジメてストレス発散していると、アフロに最善の手を教えるカマイタチが盤の横に座っていた。

「捕獲。」

第2部読んでいただきありがとうございます!

「File.3になってる!!」と思った方もいると思います!

ですが間違いではありません!!

いつかFile.1と2の投稿をしていきます!!


 @ODAKA_TAIYO

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 ↑もし直接行きたい方がいればこちらからどうぞ!↑

 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

 最新話を投稿した時は呟きます!

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