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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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収益

「さて、面会は終わりましたね。」

 その言葉にU.M.A研究部員は立ち上がると同時。


「オイッ!!」


 青年のような声が聞こえた後方を見ると、そこには黒い炎を纏う赤い目の犬。ブラックドックのキーがいた。

「面会など聞いてないぞ。」

「言ってないからな。それよりも他の奴らが怯える。その炎は消せ。」

 俺の後ろに隠れるように集まったカマイタチとジャッカロープの群れに気付くとキーは「失礼。」と、背中や尾に揺れる黒い炎を消した。

「しかしユウマ。なぜ私に教えなかった。」

「お前は不確定すぎる。詳しく知るまでは会わせないつもりだったんだ。」

 いつかはこうやって匂いを追ってくるとは思っていたが…。

「いやユウマ!せめてあらかじめ言っておいてくれ!突然空から巨大な物が降ってきたのだ!!アフロやトウカの匂いがあったから良かったものの。なければ危うく消していたぞ!」

 ………。

「アフロ先輩?確か〈隠密に〉ジャッカロープをナギの所へ届けるように言ったはずですが。」

「車じゃここまで来れないだろ?かと言ってぞろぞろと歩いて来る訳にも行かない。だから大炊御門社で開発中の超静音モーターヘリコプターで来たんだ。あぁ、勿論安全性は絶対だぜ!」

「と言っても結果見られたか否かです。それなら空港から行けるところまで車で行きそこから歩いた方がまだ見つかる確率は少なかったでしょう。」

「いやいや!見つかった訳じゃ」

「見つかっていない訳でもないでしょう?」

 するとアフロは木の根元にしゃがみ込み地面に〈の〉の字を書いた。


「あー、カマイタチとジャッカロープに聞いてほしい。…こいつはブラックドックのキーと言う。簡単に言うとお前達が人間に見つからないようにここ一帯を監視、護衛してくれるお前らと似た存在だ。」

 俺も詳しく分かっていないことをこいつらに教える訳にもいかず、最低限の情報だけを教える事にした。

 するとそれを聞いた群れはナギの演説程ではなかったが「おぉ!!」と声を上げる。


「では予定外でしたがブラックドックとの面会も終わりましたし、戻りましょうか。」

「「「むー。」」」

 声を揃えた3人は「前は観光できなかったんだし…」とでも思っているのだろう。

「………ナギ。悪いがいいか?」

「えぇ!!案内するわ!」




「おお!!何つーか神秘的だな!!」

 安直。

「水も綺麗ですし、ほら!真っ白な龍みたいな魚がいっぱい泳いでますよ!」

 それはホライモリだな。

「それ絶滅危惧種のヤツじゃね?」

 正解。


 そんなありきたりな会話をしながらカマイタチの家や、やはり洞窟とは思えない清流を見て回るアフロとトウカの後ろで俺は情報を集めて行く。


 他の奴には言っていないが初めてここに来た時以来、俺は情報を集めるために何度か1人でここに来ている。

 なぜ明るいのか、カマイタチの生態、生息している生物、水の安全性。

 そして、風の操る方法。

 明るい理由は地面壁天井を覆い尽くすヒカリゴケや十数種類の発光生物。そしてその光を反射しつつ、それ自体も強く発光しつづける結晶によるものだった。

 あれだけの水があれば苔や生物が育つのも納得だ。

 さらにこの洞窟にはその発光生物以外は先程のホライモリぐらいで、コウモリなどの生物がいなかった。つまり捕食される事が少ないためにも発光生物はここまで増えたのだろう。

 まあ、発光する結晶というのは納得し難いが……。

 結晶は地面深くまで根付いており、切り離された場所より上の結晶は光ることはなくなる。

 おそらくその最深部に光る理由があるのだろうが、試しに掘ってみたところ、そう簡単に掘れるような深さではなかったために今は少しづつ掘り進めている。


 そして風の操る方法だが…。


「おおい!!ユウマ君!!」

「………。」

「えっ…何でそんなに睨まれるんだ?」

 アフロのタイミングの悪さはもう神業の域だな。

 電話をしたら相手がいつも風呂中。みたいな事になりそうだ。

「いいえ。何です?」

 アフロは不敵な笑みを浮かべながら俺の肩に腕を回し、立ち止まる。

「どうせバカな事ですよ。」

 そうため息混じりに言ったトウカは「聞きたくもない」とでも言うかのように先に歩いて行った。

「あはは~。」

 そんなトウカに「ひどいなぁ。」と苦笑を浮かべていたアフロは数秒で消え、真剣な表情で小さく声を出した。

「例の件だが、マジでやるのか?」

「ええ。と言うかそれ以外に手に入れる方法があるとは思えません。」

「まあ………あの様子じゃあなぁ…。」

 そうアフロはため息をつく。

「ええ、なので早く戻ってクミ先輩とトウカちゃんに…。」

 あまり長く立ち止まっていると怪しまれる。

 俺がゆっくり歩くとそれにアフロも付いてきた。

「でも話すのは部室なんだろ?流石にリスクがありすぎねぇか?」

「まあ、リスクがない場所がある訳でもないですからね。」

 それに今回はラファエルの時のように1つの物を取り合う訳ではない。

 互いが小さいと判断した物を譲渡する事で、互いが大きいと判断した物を譲受するのだ。

 結局伝える意思、先にバレようとも問題はない。


 さて、そろそろ。

「クミ先輩!トウカちゃん!そろそろ帰りますよ!まだ人間に慣れていない者も居るんですから!」

 少し先の川で魚を眺めていたクミとトウカに声を張ってそう言う。

 2人は声を聴くとこちらに走ってきた。




 ・海星学園 高等部棟 生物室(U.M.A研究部室)

「さて、クミ先輩とトウカちゃんに次の行動について話します。」

 全ての扉、窓、カーテンを締め切り、俺達は机に座る。

「次…って。次に友達になるUMAですか?」

 トウカはどこから持って来たのか分からないクマの人形を抱いて首を傾げた。

「いや。次はUMAではなく物を手に入れる。」

「物って…買うって事ですか?ならアフロ先輩のお金で」

 トウカの視線を向けた先のアフロは首を横に振る。

「金じゃ無理だ。」

 それはいつものアフロではなく、冷たくまるで感情が無いかのような眼差しにトウカは思わず言葉が途切れた。

「それも含めて今から説明する。」

「そう。アメリカに行く前に俺とユウマ君は…。」




「………勝手に回想に入ろうとしないでください。」

「あれ?この流れちげえの?」

 ちげえ。

「もう、話す気も失せました…。」

 しかしクミカとトウカにも伝えなければならないか。

「簡潔に説明すると。この海星学園の裏山である六甲山を手に入れます。」

「六甲山……裏山を手に入れる、ですか。

 ピンと来ていないのかトウカはおうむ返しをした。

 そして。

「裏山を手に入れる!!?」

 やっと理解したようだ。

「ええ。これからも他のUMAが増えるならカマイタチの住処だけならいずれ溢れかえる。」

 量も、不安も、不満も。

「その為の土地……。」

 理由の納得もしたな。

「ちなみに海星学園が所有しているのは裏山の北側のみ。南側、つまり町側の山は買収済みです。」

 その証拠とばかりにアフロは紙の束を机の上においた。

 裏山の民家からダムまで。俺とアフロが集めたその全ての売約書とサイン。

 つまりそれは町側を買収したと言うことだ。

「………マジですか。」

 納得はしても信じきれていなかったのか唖然と口を開けたトウカが絞り出した言葉はその一言のみだった。

「本題はここからです。町側は比較的簡単に手に入れる事が出来ました。」

「途中ユウマくんが鬼に見えたがな。」

 黙れ。

「問題は学園側、つまり学園が所有している土地です。」

 もう考えるだけ無駄と気付いたのか、トウカは手に持っていた束を机に置き、俺の話を聞くことに専念した。

「でも、むしろ学生の私達の方が買いやすいんじゃ。」

 その言葉にアフロは首を横に降る。

「むしろ反対だ。ここは国に許可を得て動いている学園じゃない。国が動かしている学園だ。この土地の所有権を遡れば国が。もっと言えば国に重要な土地だ。どれだけ金を出しても個人に国会議事堂は売ってくれないだろ?」

「でも流石に何もない裏山なら…。」

「だから自分とアフロ先輩で学園長に交渉に行ったんだけど…。」

 するとアフロは大きくため息を吐いた。




 ・海星学園 特別棟 学園長室

「この学園は才能を伸ばす為なら何ごとも厭わず使用を認めている。」

 やはりそう簡単に売ってはくれないか。

「えぇ。ですが今回は長期にわたりあまりに独占的な土地の使用を求めます。ですが裏山は学園の生徒全員に使用権があるため独占はほぼ不可能でしょう。なので購入したいとこう申し出ているのです。」

「購入に必要な物は私が支払いましょう。もちろん海星学園から購入後も、土地を使用して稼いだ利益の一部を学園に寄付いたします。」

 俺の付き人のように振る舞うスーツを纏ったアフロはそんな堅苦しい言葉を使った。

「ほう?一部とは予想利益いくらの内の何%だい?」

 聞くと思っていた。

「予想利益は予想しにくく細かい数字は言えませんが……。相場でいうとこの山3つを数年で買えるかと。その内税金を除いた物から5%でいかがでしょう。」

 沈黙。

 思考する時間なのか、俺達を伺っているのか。

 しかし俺達は絶対に動かない。

「ふむ、実は土地を買いたいと言う者は数人いてね。それぞれが山を分ける事で交渉に来ている。もしその交渉を払いのけて売って欲しいと言うのなら1年の予想収益の10倍を先払いする事で手を打とう。」

「はあ!!?てか、収益!!?」

 恐らく素が出たのだろうアフロの声に学園長は口角を上げた。

「その交渉と言うのはいつ答えを出すおつもりで?」

「まだ詳しくは決めていないさ。」

「ではまた後日お話に来させていただきます。」

 アフロを連れて扉を開くと、学園長は少し張った声で「こちらの答えは変わらないよ。」と言葉を付け加えた。

「えぇ知っています。…こちらの方法は変わりますがね。」

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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