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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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面会

「じゃあ暇つぶし程度の物語として聞いて。」

 ………つまり信じるなと。

「夢の中で私は別の存在なの。ううん。今の私が夢…?」

 多重人格?いや、存在と言ったか。ならば夢の中では全てが違う?身長、体重、性別、いや、人間ですらない?

 ………あり得ないな。

「でその話がどう繋がるんです?」

「いやぁそこから呼び出しがかかっちゃって…。」

 呼び出し………か。


 少しして機嫌を見るようにクミカが顔を覗き込んできた。

「あのー……ユウマ君?」

 そんなに俺の機嫌が気になるか?

 俺はクミに優しく笑みを向け。

 なら安心しろ…

「文字通り寝言は寝て言ってください。」

 機嫌以前の問題だ。




 ・海星学園 寮前

「では荷物を置いてきます。あとレオも預かりますね。」

 俺はレオを受け取りながら、手を差し出したクミカにクミカの荷物を預ける。

「じゃあ荷物を置いたらまたここで。」



 この部屋に帰ってくるのは18日ぶりだな。

 俺が学園に作らせた完全防音耐震防爆核シェルターにもなる地下室付きの特別室の鍵を開ける。

「………。」

 扉を開くと、まず玄関に置かれたジェラルミンケースに目が行った。

 コレと同じ働きをする物が欲しいのならわざわざ海外へ行かなくても良かったが………。

 ケースの中央。そこに描かれた、羽のない数本の矢が矢尻から矢先に向かって捻れ、最終的に大きな一本の矢になったマーク。

 それを見てもう一度コレの重要性を考えた。


「さてレオ。俺達の作戦は伝えたはずだが、なぜまだ一言も話さない?」

 俺とレオ以外誰もいないこの部屋で背中のレオへ話しかける。

 まあ。事実を確認するまでは………。と言ったところか。

 しかし俺の予想は外れ、ペットバック中から布を引っ掻く音がした。

「ん?」

 一度ペットバックを肩から下ろしネット部分から中を見ると俺の顔とバックの内側を交互に見るレオがいた。

 一応警戒しながら蓋を開き、俺はレオが話さなかった理由を理解した。

「…正しい選択だ。」

 蓋の内側には、蓋と同じ色を塗ったシート型の盗聴器が貼り付けられていた。

「あいつ………。」

 盗聴器を潰しながら、この後の仕事が終われば一度殴ることを決意した。



「すいません。準備に時間がかかってしまいました。」

 最低限の荷物とレオだけを持って外に出ると男子寮の前で同じく小さなバッグ持ったクミが待っていた。

「オッケー。じゃあ行こっか。」

 俺とクミは人の目の少ない場所まで行き、そこからは互いに合わせながら走った。




 ・海星学園 裏山 カマイタチの住処前

「とーちゃーく。」

 俺とクミの着地で砂埃が舞い、周囲の土に波紋型の模様を付ける。

 そしてすぐ洞窟へ入る準備を始めた。

「クミ先輩は暗視ゴーグル必要ですか?」

「要らないかな。」

 一応持ってきた暗視ゴーグルをしまいながら「隠さないようになりましたね。」と付け加えると「隠す必要がなくなったからね。」と笑みを浮かべた。


 洞窟へと入った俺とクミカは会話しながら人間対策に枝分かれした道を進んでいく。

「しかし大丈夫でしょうか。トウカちゃんとアフロ先輩だけでカマイタチとジャッカロープを面会させて。」

「そう指示したのはユウマくんなのに……。」

 流石に俺達が日本に帰るまで貿易船を止めるわけにも行かないからな。

「隠す場所があるわけでも無いですからね。」


「さて、どうやって降りる?」

 以前に苦労した縦穴を見下ろし、俺は耳をすます。

「……やはり。以前のような水の幕は無くなってますね。」

 そう、滝のような水のながれる音は聞こえたが、以前とは違いその水がぶつかる音が遠くなっていた。

「カラ君も私たちのためだけって言ってたしね。」

 さてどうしたものか。正直壁を走れば楽だが…。

「………行けますか?」

「余裕。」

 互いに顔を見ない会話を終え。

 俺とクミカは小さく笑みを浮かべて穴へと飛び込んだ。




 地下にもかかわらず木々が生い茂り、昼のように明るく。しかし地上よりも程よく温度の低い地下空洞の湖に2つの飛沫が上がった。


 今回は問題なく着地できたな。

 濡れて張り付く服を軽く手で絞りながら湖から上がり、周囲を見回す。

 今いる湖は以前と違い、縦穴の滝を塞きとめる風の膜が無いために滝からの大量の水が直接流れ込んでいた。

「誰もいませんね。」

「うん…。」


 周りに集中しても誰もいない事を確認し、とりあえず初めてナギと会った洞穴へと向かう事になった。


「あ、見て!」

 そうクミカの指差す一本の木。それは約10メートル程の木で青々と葉を茂らせていた。

「それがどうしたんです?」

「ここの洞窟……?ってかなり高さがないでしょ?最初は天井の凹凸に合わせて木を植えたか、それ以外の木を間引きしたと思ってたんだけど…。」

 その天井をよく見ると光を放つ苔の隙間から見える岩肌が、大きな爪で掻いたかのように削れていた。

 まさか…。

「掘った?」


「人間なんて殺しちまえ!!!」


「「っ!!」」

 遠くから響いてたきたその声に無駄な事を考えている暇などなかったのだと思い知らされる。

 やはりアフロとトウカに任せたのは間違いだったか。

 俺とクミカは何も言わず地面を蹴った。



「「トウカちゃん!!」」

 視界を遮る草を抜け、声の聞こえた場所に行くとトウカとアフロが木の根元に座っていた。

「ユウマ先輩!!クミ先輩!!」

 俺達の顔を見たトウカは笑顔を見せる。

「何で叫んだか知らないけどせめて俺の名前呼んでくんない?」

 アフロを無視して他を見ると一本の木の周辺でカマイタチとジャッカロープの混ざった群れは笑いあっていた。


 そして。

「何が平和だ!!人間が死なないせいでこちとら平和じゃねぇっつーの!!」

「間違いない!!」

「人間も生きてるなら生きてるらしく死と隣り合わせで生きろっての!!」

「自然では生まれて死んでを繰り返してバランスを取るんだよ!!」

「賢い人間様だ!分かった上で無視してんだぜ!きっと!!」

 日本語で人間の悪口で笑うカマイタチとジャッカロープに囲まれてトウカとアフロは汗を流していた。

「ん?人間?」

 群れの中からのその1つの言葉で群れは静まり、視線が集まる。

「って、ユウマかよ!!」

「てことは他の人間も大丈夫だな!」

「というか前にもここに来てたじゃねえか!」

「そうだったか?」

「「「ははははは!!!」」」

 そうカマイタチだけは安堵の笑いを浮かべたが、俺の事を見た事がないジャッカロープは殺気を放っていた。

「俺達の事はきちんと伝えておけよ。ついでに今回の事でお前が学んだ〈力の弱点〉もな。」

 そう声をかけてペットバックを下ろし、ファスナーを開ける。

「前者は了解するが、後者はユウマが言えた事か?」

 いつの間にかレオは俺の事をユウマと呼ぶ事にしたようだ。

「過去を咎めても何も出ないぞ。」

 レオは蓋を角で押し開け広い空間を味わうように身体を伸ばすとゆっくりと群れへと歩いて行った。

「「「「「レオ!!!」」」」」

 多数のジャッカロープから声が上がり、レオの元へと駆け寄ってくる。

「無事だったのか!!」

「いつの間にか消えたと思ったら!こんなところにいやがった!!」

 さて。これで十分だろう。

「レオ!!これで俺たちを信用できるな!!」

 少し離れた場所のレオに向かって威圧的に、しかし対等な立場として話しかける。

「今は信用はしてやる。」

 警戒は解かず、睨みつけるようにそう言ったレオの殺気に大多数が押しつぶされ押し黙った。

「それでいい、根拠もなく物を信じるな。」

「だからと言って全ては信じないがな。」

 正解だ。過去の情報は過去でしかない。状況は常に変わり、過去と違う行動をする。

 だからこそ。

「己だけを信じ、それ以外の全てを利用しろ。」

  そしてこうしてケージから出してから言おうと思っていた事を口にする。

「あと群れを保持やらと扱って悪かったな。」

  するとレオは「…ふん。」と鼻で笑った。



「レオちゃん以外の子もこれで私達の事を信用出来たと思う。もし気になる事とか文句があるならどれだけ小さな事でもいい。教えて欲しいの!」

 俺に変わりリーダーシップを取るクミは優しく、カラやナギ、レオ、その他のカマイタチとジャッカロープの顔を順に見て行く。

「な、なあ。」

 するとその中から震えた声が聞こえた。

 人間に恐怖し俺とレオに気圧され、しかしそれでも声を上げるだけの内容なのだ。聞く必要がある。

「人間に見つからず、自由に野を走れる場所をくれるってのは本当なのか?」

 クミカの奴、勝手にそんな約束をしたのか。

 早めに訂正しておかなければ。

「待て、その約束に俺は関与し」

「もちろん本当だよ。」

 俺の言葉を遮った言葉はジャッカロープ達に歓喜の声を上げさせた。

「ただしその場所を準備するにも時間がいる。だからナギちゃとカラ君?食料も私達が支給するから少しの間だけここにジャッカロープちゃん達を住ませてあげてくれない?」

 するとナギは頷くとトウカとアフロが根本にいる木の上に登った。

 そして群れに聞こえるように

「彼らは我らと同じく人間によって追い詰められた者達だ!そして我らと同じくその人間に助けを求めた者達だ。もしそれでも納得ならないのなら!!ユウマの友を持て成さずして何が友だ!!」

 友人か。俺からカマイタチに言ったが、不確定要素の概念だな…。

 ナギの言葉にカマイタチ達は鎌を掲げ声を上げた。

「おうよ!!人間に追われた者を助けるのは当たり前だがユウマの友となりゃむしろ助けに行くぜ!!」

「肉を食らう種でも無さそうだし。」

「それにいつかは我らも野へ行けるんだろう?」

「うん!!」

 満面の笑みだがしかしクミカよ。それだけの物を用意できるのか?

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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