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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.6
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桁違い

「もう無理ですよぉぉぉお!!!」

 そう言って書類を投げ捨てたトウカは机に突っ伏した。

「冷房が効いてるだけマシだろ。」

 サングラスのうえからブルーライトライトカットのメガネというなんとも天然記念物な格好をしたアフロはタッチタイピングでキーボードを打ち続けていく。

 まあ確かに部活棟は冷房の効きが悪いからな。

「それに見ろよユウマ君なんてツチノコに二の腕噛まれてるんだぜ?」

 アフロはメガネを外し俺を指差す。

「え?なんで噛まれてるんです?」

 俺にも分からん。

「アメリカに連れて行ってくれなかったからだって。」

 ツチノコを撫でてなだめるクミカは小さくため息を吐いた。

「「「あぁ…。」」」

「あんふぁふぁひ!!わはひをほひへひふほわいいほひへ!へへへひふふひひははひほ!!」

「え?なんです?」

 トウカの疑問を聞いたアフロは脚を組んで口元に手をおいた。

「あんた達!!私を置いて行くのはいいとして!せめて自由にしなさいよ!!と言われてもやったのはユウマくんだしなぁ。」

「えい!!」

 最終的にクミカが力尽くでツチノコを外すとツチノコは順番に俺達の顔を見て行った。

 ついでに言うと出血した。

「クミは噛んだら怒るし、トウカは噛んだら可愛そうだし。アフロは噛みたくないからねぇ。」

 なるほど。

「おい待て。俺を噛みたくないのは百歩譲ってもういい。だがユウマ君!噛まれて血出てるのに頷いて納得するな!!」

 消去法は良い文化だ。


「まあ結局仕事はしないとだしね。」

 そのクミカの言葉にトウカはまた机に突っ伏した。

「まあ、本来ならもう1つ行程があったわけだし。」

「カラ達の事です?」

 トウカは机に顔を付けたまま声を篭らせた。


 そう、アメリカから帰ってきた俺達が静かな日々を過ごすはずだった夏休みに何故部室で作業をしているか。

 それは俺とクミが日本に戻ってきてからの事だ。




 ・神戸空港 出入り口

 日本に着き、空港を出ると朝日が昇っていた。

「ふあぁぁぁぁぁ………。」

「………なんというのか。」

「うん。肉体的にも精神的にも健康なのに…。」

「「………疲れた。」」


「と言っても今から仕事が山積みですよ。」

 俺とクミカはそれぞれでキャリーケースを引きながらモノレールに乗車する。

「でもラファエルがいないだけ…。」

 そうクミは無邪気で嫌味な笑みを浮かべた。

「マシなのは確かです。」

 この会話には俺でも笑みを浮かべてしまった。

「ところでさ。なんでこの空港にしたの?帰り遠くない?」

 行くときの空港でもいいがあの付近には海がないからな。

「万が一のことを考えてですよ。」



 あまり受け渡しの瞬間を人に見られたくない。

 最低限のリスクとモーションで受け取りたいからな。相手は潜水艇。リスクを下げるなら人の視線に入らない場所だ。

 モーションを減らすなら教授にレオを運ばせるよりも教授からレオを受け取った方が安全だろう。

 その条件を満たす場所。




 ・ポートアイランド 貿易船付き場横

「ちょ、ユウマくん受け取って………。」

 そう教授は船と港の隙間に止まった潜水艇からレオの入ったペットバックを押し上げる。

「バレるだろうが。」

「まあ周りの人にはバレない、けど…。」

 けど…?

「ユウマくん。南南西の団地、屋上。」

 ん?

「………ほう。」

 周りの人には…だな。

「まあここまでくればどちらにせよ同じでしょうね。レオはケースの中ですし。幸いあの角度では教授の顔も見えません。」

 港から手を伸ばしてペットバックを受け取るとクミカは大きく溜息を吐いた。

「また面倒事かぁ。」

 まあ。

「今の所は観察しているだけの様ですし。最悪自分が直接言いに行きますよ。」

「さすが首席様。」

 首席か…。

 ただの偶然で才能と判断されただけの異常。ただ偶然上手く働いているだけの異常。

 クミカの才能と判断されたものは何なのか。アフロはトウカは………。

「〈今は〉いいか。」

 受け取ったレオをクミカに渡す。

 そして小石を拾って、団地の屋上に向かって投球。

 風邪を切る石は数百メートル先のビルの屋上で俺達を観察する望遠鏡のレンズを撃ち割った。

「ナイッショー。……で、殺したの?」

 さあな。

「頭を撃ち抜かないように加減しましたが…。レンズが割れたので目に入れば………。」

 するとクミカは腕を組んで唸り声をあげた。

「んーーー………まあ監視してたんだしそれくらいの覚悟はあったんじゃない?知らないけど。」

「……無責任ですね。」

「関西人だし…。」

 偏見だな。よく聞く内容だが。



「ところでユウマ君って関西弁じゃないよね。」

 俺はクミカと自分のキャリーケースを、クミカはペットバックと荷物を持って出来るだけ人の眼の少ない道を通って駅へと向かっているとそんな質問が飛んできた、

「ええ。自分はテレビを見て日本語を覚えたので。」

「何その放任しすぎ主義。」

 それは放任主義に入るか?

「そう言うクミ先輩も関西弁ではないですよね。」



 駅に着きモノレールに乗ると駅員のアナウンスが流れ、ゆっくりと動き出した。

 通勤ラッシュで満員の車内で出来るだけ荷物が邪魔にならない様に、ペットバックを抱くクミが壁側そしてそれを俺がかばう様に隅に立った。

 俺達はそれ程童顔ではない。側から見ればただの旅行帰りのカップルだろう。

「で、関西弁だっけ?私は昔は日本にいなかったからね。ちょっとワケアリ。」

 〈ワケ〉。それが鬼才の俺を凌ぐ思考能力に繋がるのかもしれない。しかし、それを聞いたところで俺が手に入れられるものではないだろう。

 結果と過程の様に、1つの結果のうりょくへの過程ほうほうは1つではない。過程が電子レベルで無ければの話だが。



「のぉぉぉぉぉ………。」

 乗降者達に流され、降りる予定ではない駅で降りそうになったクミカの手首を掴む。

「まったく。何をしているんですか。」

「ごめんごめん。」

「今は貴方だけじゃないんですから。」

 下手にレオがバレるのは困る。


「「キャッ」」


 すると、そんな甲高い声が周囲から複数聞こえた。

 確かに乗った瞬間から俺達は注目されていた。注目されてはいたが殺気は向けられておらず無視をしていた。

 クミの容姿かと思っていたが………。


〈誰ですか!?あのイケメン!日本人であんなに白髪の合う人はいませんよ!!〉


 そんなトウカの言葉に俺は納得した。

 なるほど、俺もだったか………。

 しかし何故今悲鳴をあげた?

「ユウマ君?」

「どうかしましたか?」

「この状況。やっちゃったね。」

「………。」

 なるほど。

 容姿の整った2人。クミカをかばう様に立ち、今は手を繋ぎ、その上さっきの台詞。

 捉えようによっては夫が妊娠した妻への言葉にも取れる。

「これはやってしまいましたね。」

 俺達は苦笑いを浮かべ合いながら降車した。



「さて、ここからはタクシーで行きましょう。」

 俺とクミカは荷物をタクシーの荷台に乗せていく。

「いいの?常に人の多い所が良いからわざわざ電車でここまで来たのに。」

 そう。もしレオの受け渡し時の監視がこれから行動を起こすためのものなら。

 俺達を殺すか捉えるか…レオを奪うか。いずれにしても人の多い場所では難しい。

 だが。

「もし俺達を狙っているのなら、レオを受け取ってから駅へ向かう何処かで行動すると思いませんか?」

 もし狙っているのなら俺、クミカ、レオのいずれか…。その全てが揃い、わざわざ人の少ない港で受け取り、人目の少ない道を通ったにもかかわらず何もされなかった。

「たしかに……。」

 もちろんこれから先の場所で待ち伏せする作戦という可能性もあるが………。

 俺とクミカが座席に座るとドアが閉まる。

「今から言う通りに進んでください。」

 運転手は少し警戒しながらも「はい。」と答えた。

「もし待ち伏せならポイントは決めているはず。ならばそれを避ければいい。迂回し、狙いにくい場所を通り、狙いやすい場所を通る。」

 狙いにくい道を通ると相手が考えていればそこで待ち伏せされる。

 ならばその裏をかき馬鹿正直に行けばいい。

 最善ではない道は最善を知っている相手には読めない。

「なるほど。」

 そう笑みを浮かべたクミカは…。


「………。」

 10分もしないうちに眠りに落ちた。

「………おい。」




 その後無事に学園に着き。

 いくつもの枝分かれした、学生寮への道を歩いていた。

「あのー。ユウマ君?」

「特に気にしていませんよ。」

「何も言ってないんだけど。」

 さて、クミカをいじめるのもいいが。

「何故あのタイミングで寝たんです?それ程睡眠不足ではないはず。かと言って流石にあのタイミングで寝るほどクミカはバカじゃない。」

 はず……。

「〈今は〉って言ったら怒る?」

 〈今は〉という言葉に味をしめたのかクミカは苦笑いを浮かべた。

「どうせ学生寮まで歩いていては長いんです。暇つぶし程度に話してもいいのでは?」



 この学園は幼稚園から大学までが揃っている。

 その上、この学園は特殊すぎるが故に一般的な学園と比べて人数が桁違いにおかしい。

 まず幼等部。幼等部での入園志願者は10000。そして入園可能者は10000。確率は100%。

 と言っても入園試験前に市、県、国からの調査を受け、そこを通って初めて入園志願する権利を貰える。

 まあテストするのは国であり学園ではないため入園可能確率を100%と書ける。

 少しでも志願者を増やす為だろう。

 そして初等部は志願者……いや志願可能者が50000。その内の入園可能確率約50%。

 ここで人数が増えるのは義務教育だからだ。

 中等部。志願可能者25000人。入園可能確率約30%。

 そして高等部は志願可能者1000人と一気に落ち、入園可能者10%。

 大学では100人のうちの2人。2%にまで減る。

 つまりこの学園の最大人数は入学者と進学者合わせ約50305人。

 まあ今の時期だと35050人程か……。


 しかし学生総数51010人の学園など探せばいくらでもある。

 桁違いにおかしいのは人数ではなく人数の比率だ。

 先ほど言った通りにな。

 そしてその生徒に加え、教職員までが寮生活。

 それだけの人を納めるこの学園の敷地は約1000㎢ある。

 そんな学園で正門から最奥の学生寮に向かうのだ。

 話す時間くらいはある。

 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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