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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.5
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ラチ

 ジャッカロープの群れはなぜ消えた。そしてラファエルもそれを知らなかった?

 アフロとトウカはどこへ行った?

 ラファエルは教授との待ち合わせ場所を知っていた?


 ジャッカロープの住処から出た俺はそんな疑問を抱えながらクミとホテルへと戻った。

「さっさと荷物をまとめますよ。ラファエルの指定の場所に向かいます。」


 ラファエルは群れを見ていたんじゃないのか?

 もし2人が群れを捕まえたのなら連絡をしてくるだろう、第一2人には日本へ連れ帰る方法はない。

 待ち合わせ場所を選んだのは偶然か?それとも知っていたのか?偶然ならなぜラファエルからも俺からも遠いアタリアを選んだ?知っていたのならどうやって知った?


「どうやって向かうの?」

「……この状況では少しばかり大きすぎたようですね。」

 クミの質問に答えるように、荷物を持った俺達の前に一台の大型トラックが止まった。

「この車は?」


 群れは他の誰かに捕まったのか?しかし住処に俺達以外の人間の痕跡はなかった。

 その誰かに2人は捕まった?黒い服の人達…一体誰だ。

 知っているのはクミ、トウカ、アフロ、教授。

 教授との電話を盗聴?いや、あの時周りには人も不審な機械もなかった。


 とりあえずトラックの荷台に乗り込み、クミの質問に答えた。

「群れを捕まえ検問をくくる為に、プロの運び屋を依頼していたんですが………。2人では15トントラックの荷台は広すぎますね。」


 群れから出て来たものだけを捕まえた?だとすると全てが巣から出てくるまで待っていたのか?

 もし黒い服の人達とやらがラファエルにとっても敵対関係ならラファエルと休戦できるだろうか。

 教授とグル?


「あとは10時間ほど時間があります。少し休まれてはどうですか?」


 様々な答えは出たが確証に至るだけの証拠もなく。結局考えるだけしかできなかった。


「もう夜ですよ。そろそろ寝てはどうです?」

 俺の言葉も聞かず約3時間動かなかったクミに忠告をする。

「んー、うん。そうだね。そうする。」

 やっと俺の言葉に耳を傾けたクミは隅に寝転がる。


 ………もしクミやアフロ、トウカがラファエルに情報を提供したのなら。

 2人は黒い服連れていか……付いて行った………?自主的に?

 まさかラファエルの傘下に潜り込んだ?いや、2人は自己的な行動はせず俺の作戦を実行するはず。

 止むを得ず付いて行くしかなかった?付いて行って教授との受け渡し場所を吐かされた。

 しかしトウカやアフロ、クミは受け渡し場所は知らない。

 例え俺に気付かれずに場所を調べてラファエルに提供したとしたならば、群れを俺達が連れていると思っている事はおかしい………。


 一体どうなっている。


 様々な可能性を想定して様々なパターンの作戦は作ったには作ったが………。

 もしこの作戦が上手く行かない。つまり想定の範囲外の事が起これば2人の救助は困難。

 全ての情報が絡まり、正しい線が見えなくなる。

「GPSは見れるようにしておいて欲しかったが。」

 問題はラファエルが黒い服の人達との関係……。

 敵対か、協力か、不干渉か、無関係か………。




 ・製紙工場最寄り国道

「クミ先輩。着きましたよ。」

「うん。」

 声をかけるとほぼ同時に寝ていたクミは上半身を起こした。

 寝起きがいいな。

「さて、依頼主に依頼内容の変更を交渉してくるので荷物を降ろしておいて貰えますか?」

 そう言うとクミは「分かった。」と返事をした。

「レオ君はどうする?」

「クミ先輩が背負っておいてください。」

 もしラファエルが群れの居場所を知っていた場合。群れを移動させるのにこのトラックは必要不可欠だ。

 トラックの窓をノックすると無表情の男が窓を開けた。

「なああんた。もうちょっと稼ぐ気は無いか?」




 月は傾き、あと数十分で空が明るくなり始めるだろう。

 そんな事も知らない月は高みの見物で俺達の事を照らしていた。


「さて、もう少しで付きますよ。」


 川に隣接した製紙工場の港。本来なら今のような人のいない時間に侵入し、ここで教授にジャッカロープを渡す予定だったが。

 まさかこんな事になるとは…。


 ラファエルから詳しい場所は指定されていないが恐らくは教授との待ち合わせ場所に待っていれば問題は………。

 いや。

「………待たれていたか。」

「ええ。待っていましたよ。」

 クミとレオにはあらかじめ言動に気を付けろと言っておいた。

 ここからは俺にとって初めての壁……敵との争いだ。

「「単刀直入に言う。」」

 偶然のラファエルとの同じ台詞。

 しかし互いに譲る事も、気にする事もなく、話し続ける。

「「レオを「返しなさい。」は返さない。」」


 重なる二つの言葉は互いに牽制し合い、読み合い、読まれまいとする。

 それが分かるのは恐らく似た存在だからなのだろう。

 今思えば少し会話しただけで似た存在と判断できたのだ。飛び抜けた能力を見たわけでもないと言うのに。


 しかし断言できる、ラファエルは俺に似た存在だと。


 ラファエルの言う事が全て事実だと言うのなら群れは互いに所有していない。

 そして俺がかけたカマ。

〈ジャッカロープの所有権はレオが持っている。自動的に俺の傘下にある。〉

 これを否定すれば群れはラファエル側にあり、対応しようとするならラファエルは嘘をついていない。

 が、これを俺が思いついている時点でラファエルも思いついているだろう。

 つまりこの質問自体は対応される。

「さて。一つ謝ります。ジャッカロープの群れ……僕達は保持していません。なので群れを僕達に譲渡して頂けませんか?」

 ならここからはカマをかけたりはせず単純に読むしかない。

「ではその質問に対して謝罪します。私は群れを所有していません。」

 もちろん嘘の様子はない。しかしこれが真実という証拠は無い。しかし真実では無いという証拠もない。

「ではトウカとアフロを返してください。」

「レオを渡しなさい。」

 ラファエルは俺の言葉には返答せず、言葉を押し付けてきた。

 やはり2人はラファエルの仲間に…?

「2人を渡すのが先だ。」

「レオを渡すのが先です。」

 全く…。


「「ラチがあかない。」」


「………ねぇ。なんでそんなにレオにこだわるの?」

 俺の後ろで荷物の山の隣に立っていたクミがそう言った。

 たしかにそれも一つの疑問だ。しかしいまはトウカとアフロを。

「別にレオ単体に固執しているわけではありません。もしレオがダメなのなら群れを渡して頂いてもいいですが。あぁ、あとあの2人ならこちらにはいませんよ?」

 そうラファエルは不敵な笑みを浮かべた。


 つまりレオと群れを近付ける事がマズイのか?

 それよりもレオか群れかを選ばせた?

 ならばラファエルは本当にどちらか一方だけで良いということになる。そしてレオを取りに来たのならそれはつまり本当に群れを持っていないという事になる。

 もちろん俺がむれを手に入れるためにレオを捨てると〈分かる〉からこそ。レオと群れを両方手に入れるための嘘の可能性もあるが。

 ダメだ。互いに読まれまいとするあまり話が進まない。

 一旦引くか?

 いや

「レオを渡さない限り逃がしませんよ。ねぇ?」

 そう言ってラファエルが微笑みかけたのはクミにだった。

 クミに?

「レオは渡しません。」

 割り込んでそう答えるとラファエルは肩をすくめた。


「よく考えてみてください。今は互いに群れを所有していないと言っています。では3つの可能性を考えましょう。1つ、私が群れを所有していた場合。貴方が私の元に来れば群れの安全は保障される。もちろん貴方の命も保障します。2つ、ユウマさんが群れを所有していた場合。貴方は彼について行くことが出来れば群れとも再会できる。ですが、それは私がここで止める。まあ3つ目に双方が所有していないという可能性もあるにはありますがほぼ無いと言って良いでしょう。さて貴方は希望に賭けるか、保険をかけるか、どちらにしますか?」


 もちろんこの言葉すらも真偽は分からない。

 だがもし、今の言葉が真実なら。

 群れは俺が持っていないのだからラファエルが持っているという事になる。

 しかしどの可能性であってもレオを渡す事だけはあってはならない。


「そんな事はさせ」

「分かった。」

 レオが俺の言葉を遮った。

「おいレオ!ラファエルの言葉に惑わされるな!何も可能性は3つだけじゃない!!」

「3つの可能性ではない証拠もない!!」

 ………少しでも可能性があるなら、無駄になるかもしれなくとも、犠牲になるのか。

「………クミ先輩。」

「ユウマ君!!」

 すると呼んだ理由が分かったのか背後のクミは俺の目を覚まさせるかのように強く俺の名前を呼んだ。

 振り返り、クミと目を合わせる。


 何としてもレオと群れは手に入れる。


 クミに俺の考えが伝わったのか。クミは一つのキャリーケースにレオの入ったペットバックを乗せラファエルに向かって転がした。

「第一、お前は知らないではないか………。」

 俺の横を通り過ぎる瞬間レオはそう呟いた。


 そうだ。俺は群れを知らない、居場所も所有者も。


 ~着信音~


 俺のポケットからなった着信の相手を確認すると、それはトウカだった。

「クミ先輩!トウカちゃんからの着信です!」

 その報告をするとクミの口角が上がった。

「もしもし。」

「あ、ユウマ先輩ですか?こっちは予定通り終わりましたよ!」

 応答ボタンを押すと電話の奥からは元気そうなトウカの声が聞こえてきた。

 予定通り?一体何を


「何を言っているんです?」


「………。」

 ………見えなかった?……この俺が?

 今の一瞬で俺の前にいたラファエルは俺の後ろのクミの隣まで行き、俺が手に持っていたはずのスマホを耳に当てていた。

「ん?この声……ラファエルですか?」

 超聴力で聴こえる電話の向こうのトウカの声は余裕そうにそう言った。

「予定とはなんです?」

 すると低い声でラファエルは疑問を口にした。

「答える義務はありませんが、あえて言うならジャッカロープはもうラファエル、貴方の物ではないと言う事です。」

 ジャッカロープをトウカ達が?

 レオにも聞こえたのかラファエルの手に持たれたペットバックの中から逃げ出そうと暴れていた。

「………そうですか。」

 ラファエルは目を合わせないままスマホをクミに渡すと

「やってくれますね…。」

 と呟いた。

「ユウマ君…がね。」

「そうですか…。」

 ラファエルはため息混じりにそう言うとレオを持ったまま関係のない場所に向かって歩き出した。

「僕自身少々納得しかねていますが、それとこれとは別。群れがラファエルの元にいないと言うのならレオを返して頂けますか?」

 簡単に逃がすと思うなよ。

 呼び止めるとラファエルは運ぶ足を止め、俺とクミに背を向けたまま「ほう。」と含み笑いで言った。

「貴方はレオと群れの両方を手に入れると?」

「あぁ。」

 ラファエルはフッと笑うと振り返り

「クミ…でしたか?先程群れを手に入れたのはユウマさんと言いましたね。」


「今度は見逃さなかったぞ。」

 一瞬にして…いや〈瞬き〉よりも早く。

 殺気をむき出しにしたラファエルが俺の目の前に来た。

「もしそれが本当なのなら…貴方は私に勝てるはずです。」

 さっきまでは、互いに読み読まれまいとしていたせいで相手を威圧する必要はなかった。

 する事に意味がないという事も知っていたから。

 しかし今からは違う。情報の正しい線が見えた今からは…。

 いかに自分が上に立ち、いかに相手を下に立たせるかだ。

 俺とラファエルは互いに威圧する笑みを浮かべた。

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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