空港 修正済み
・ホリデイインホテル 廊下
「分かった。もういつでもいいんだな?ああ分かってる。また電話する。」
これで連れて帰る事は出来る。問題はラファエルだ。
レオ以外を見ている。か、それがいずれの方法でも逃げる事は出来るはずだ。
だがもし、万が一。ラファエルが俺に匹敵する存在ならば。絶対に逃がしてくれないだろう。
「あれ?誰と電話してたの?」
廊下で電話を終えると俺達の部屋の中からクミが顔を覗かせた。
「……教授です。」
「結局お使いってなんだったの?」
「今更ですが、あの時に言った送迎というのは言葉足らずでした。教授にはジャッカロープを連れ帰る道を作って貰っていたんです。その代わりに、特産品のお土産を頼まれまして。」
そう、それがクミには無かった思考。レオ達と友達になったとして、飛行機で帰ればどうやってもジャッカロープの存在が目についてしまう。それを避けた帰り道を教授に頼んでいたのだ。
「……へぇ。どんな道?」
「さあ?自分も聞いていません。ただ、正当な手段ではないでしょうね。」
するとクミは薄い笑みを浮かべ、「信用してるんだね。」と一言呟く。
「まぁいいや!じゃあ皆んなで銃撃つゲームしてるから早く戻ってきてね!」
そしてそう言い残すと、クミは部屋の中へと消えていった。
「えぇ……。」
「では行きましょう。」
「「「ふぁぁぁあ。」」」
カーテンを開けると、クミ、トウカ、アフロの3人は大きなあくびをしながら目を覚ました。
そしてゆっくりと体を起こした3人は服を着替えて荷物を背負ったものの、その目は半分閉じ、髪の毛は跳ねさせている。
「夜中までゲームしてるからですよ。」
3人が揃いもそろって眠たそうにしている理由、それはショートスリーパーも持っていないくせに3時間しか寝ていないからだ。
夜大学に忍び込むまでの間の何をするでもない時間を、俺達は各々で過ごしていた。ラファエルに備えて、行動範囲はこのホテル内に制限したが、部屋でゲームをするなり、ホテルのプールで泳ぐなり、暇つぶしに困ることはなかった。
が、それにも飽きたアフロが「UMA研究部でもノートパソコンがあったら便利だからな!ある程度のスペックは積んであるから勝手に使ってくれ!」と、全員分のノートパソコンを通販で買ったのだ。まさかアカウントやパスワードまで勝手にさせるとは思わなかったが……。
そのノートパソコンで、夜中までオンラインゲームして騒いだ結果がこれだ。
「ユウマ、先輩だって……やってたのに。なんでそんなに、元気なん、です………か。」
眠たそうに言ったトウカに心の中でショートスリーパーだからだと答え、俺は自分の荷物の背負う。
「ってトウカちゃん?」
するとトウカは放り投げた服が地面に落ちた時のように、その存在の輪郭があやふやに思えるほど力なく、荷物を背負ったままベットに倒れこんだ。
……。
「こりゃあ、寝てるな。」
「寝てるね。」
倒れたトウカを覗き込んだクミとアフロの2人のその言葉を聞いて、俺は1人溜息を吐く。
ダメか。
「ねえユウマ君。昨日の疲れもあるし探すのは午後からでもいいんじゃない?」
そんなクミの提案にアフロは「というかまだ朝の5時だしな。」とアクビ交じりに言った。
昨日の疲れの理由はお前らがいつの間にか買ったパソコンでのゲームだがな。
「はぁ、仕方ないで」
「おっし。」
「お休み。」
「すね。」
俺が言い終わる前にベットに倒れ込んだ2人は、一瞬のうちに眠りについたのだった。
「………。」
「ん?ふぁぁぁ~。」
アフロの買ったノートパソコンのゲームで世界チャンピオンを虐めていると、あくびをしながらクミが目を覚ました。
「早いお目覚めですね。」
「んー?私あんまり寝なくてもいい体質だから。」
……睡眠時間は夜も含めて5時間30分。ショートスリーパーと言うほどでもないな。
「アフロ君達は……。」
「まだ寝てますよ。」
返事を聞いてトウカとアフロに目を向けたクミは「みたいだね。」と小さく笑った。
「昨日のゲーム?」
するとクミは俺の操作する画面を覗き込んできた。
「ええ。圧倒はしているのですが、完封とまでいかず……。」
機器のスペックということもあるのだろうが、それよりも相手の細かな動きが読み切れない。
「ユウマ君はそういうの苦手そうだもんね~。」
俺の何を知っている。
「……というと?」
プレイを続けながら視線を向けると、クミはどこか遠い目をして、笑みを浮かべていた。
「ユウマ君は相手の事を分かり切ってないんだよ。どこかで自分の事を基準にしてる。相手も最善に近い手を打つと考えて、それに勝る最善の手を打つ。確かにユウマ君は相手を圧倒できる程の最善の手を打てる。だから相手に考える余裕のあるゲームでは負けがない。だって相手はユウマ君の考えた最善の手に近い手を打つから。でもそれみたいな銃撃戦のゲームだと反射神経とかでは負けてないけど相手の動きが読めない。だって相手はユウマ君がみたいな一瞬で考えた最善の手じゃなくて咄嗟の行動、つまり最善の手じゃない。だから最善を知っているユウマ君は最善じゃない相手を読みきれない。」
「……ふっ。」
戯言だな。そもそもクミは相手に考える余裕のあるゲームでの俺の勝敗を見たことがないだろう。それに「最善の手」は「最善ではない手」に勝る。
その証拠である画面に映し出されたWIN‼︎の文字を確認して、俺はノートパソコンを閉じた。
「トウカちゃん。アフロ先輩。起きてください。」
もう5度目になる声をかけながら2人の肩を揺する。
今日に限ったことではないが、こいつらは当たり前のように一緒に寝ているな……。いつもゲームをしている途中で3人が寝るせいで、わざわざ2部屋取った意味がない。
「あぁんユウマせんぱぁい。」
やっと目を覚ましたトウカは、起きるなり寝ぼけた様子を装い、わざとらしく俺の腕に抱きついてきた。
「あぁんユウマくぅん。」
そして同じくトウカと反対側の腕に抱きついてきたアフロを俺は振り払い、その手で作った拳を額にぶつける。
「痛ぇ!!」
グッドモーニング。
「すいません。無性に殴りたくなりました。」
アフロは勢いよく体を起こすと、頭をさすりながら笑みを浮かべた。
「流石のユウマ君も女には弱いってか?」
ははは。面白い冗談だ。
「目が……怖いぞ?」
「はぁ……。」
出発前に疲れそうだ。
「行きますよ。」
3人は外着のまま寝ていたため、涎を拭き、髪を整えるとすぐに準備が整った。
睡眠不足が解消された様子の3人は、呼び掛けに軽く返事をすると、俺に続いて部屋を後にする。
「でもよう。なんで空港なんだ?飛行機の下とは聞いたが、動物を探すなら航路の下の森とかじゃねぇのか?」
ホテルの廊下を歩いていると、俺の少し後ろを歩いていたアフロが疑問を口にした。
情報が少なければその方法で探すしかなかったな。だが今回は違う。
「昨日までに手に入れた情報は伝えましたよ?中でもレオの言葉は一字一句違わずに。」
歩みを進めながらヒントを口にすると、3人は分かりやすく首を傾げた。
「〈あの飛行機とか言うでかい鳥達の下だ。〉と。レオは〈達〉と言ったんです。ということはつまり集団。でも飛行機は飛ぶ時には単体。もちろん戦闘機になれば集団で飛行しますが、それほど頻繁に飛ばないものを目印にはしないでしょう。」
わざわざ足を止めて説明したにも関わらず、アフロはさらに首を傾げ続けていた。
「でもそうなったら空港の下……地下にならねえか?」
そこに気付けたのなら十分だ。
「それが巣がなのか、巣の入り口なのかは分かりませんが。おそらくそうでしょうね。保護区などが近ければ自然も多く食事も安定し、且つ人に近いですが見つかりません。灯台下暗しでしょう。」
すると「なるほど。」とトウカが感心の声をあげる。
「確かに、新種の生物を探すのに空港の地下を探す人なんてそうそういませんもんね。」
「でもなんで近く(とかい)の空港を探すの?」
しかしその答えに対して、クミはさらなる疑問を口にする。その疑問はトウカとアフロにとっても疑問だったのか、答えを求める視線が俺に集まった。
俺は3人に背を向け、止めていた足を進めながらその疑問への答えを口にする。
「単純に大学に近いというのと、小さいですけど近くに保護区があって自然があるということ、そして空港での動き方をある程度知っておかないとですからね。」
「「「へ~。」」」
そんな3人の相づちは俺の眉間に皺を寄せさせた。
・ララミー・リジョーナル空港
空港の周辺と空港内を見て回った俺達は、空港内の椅子で栄養食ブロックをかじりながら、情報を整理していた。
「空港の地下に住むのであれば大体二択ですね。」
空港の下水道か、滑走路を含めた地中に穴を掘ったか。可能性としてはどちらも否定しきれないが、問題は
「でもそんなのどうやって探すんだ?」
そこだ。
「今回は軽く調べただけですが、もし本格的に滑走路の地中や下水道を調べるのであればアポは必須でしょうね。……と言っても正規の手順ではまず取れないでしょうが。」
肩をすくめながらそう言うと、3人は眉をひそめて唸り声をあげる。
「忍び込むとか?」
クミが笑顔を浮かべてそう提案すると、トウカも「私もそれがいいと思います。」と笑みを浮かべて賛同した。
「怖い。女子2人が怖い!」
その女子2人に俺も同意だ。効率的なのはやはり忍び込む事だろう。
だが俺1人ならともかく、大人数になると見つかる可能性が高い。もちろん見つかればゲームオーバー。昨晩のゲームのように復活はなく。こちらは4人に対してあちらは数十~数百人。警察などの救援しだいではさらに増える。おまけに俺達は逃げるのみ。そんな勝利確率の低いゲームをやろうとする女子2人は、きっと大学に忍び込んだせいで恐怖が麻痺しているのだろう。
その感覚は油断を生む。だからこそ慎重に考える必要がある。
「どうやって忍び込みましょうか。」
「ユウマくんもそっちサイドかよ!!」
俺が笑みを浮かべて答えると、アフロは呆れた様子で声を荒げた。
「冗談です。わざわざそんな危険を冒す必要はありません。」
そう訂正を口にすると、アフロは口を開いたまま小首を傾げさせる。
「ではジャッカロープ達はどうやって生きていると思いますか?」
「そりゃ空港の地下で生きてるんじゃねえのか?」
「もちろんそうですが、その穴の中に死ぬまでいると?」
「いや、そうは思わねぇけどよ。ならなんだ?ジャッカロープが出てくるのを待つって言うのか?」
分かっているのならわざわざ説明させるな。
「ええそうです。いくら空港というヒントを得たと言えど、可能性とその範囲は膨大です。それをしらみつぶしに探すのは現実的ではありません。」
すると「可能性?」とトウカが疑問を口にした。
「住むのであれば空港の下水道か、滑走路を含めた地中に穴を掘ったかの二択。これはレオの言葉をそのまま受け取った場合の範囲です。例えば滑走路の地中に穴を掘っていた場合、滑走路の下から飛行機を見ることは難しいでしょう。」
「滑走路に穴が空いてたらすぐに気づかれますからね。」
トウカの言葉に頷き、そこから導き出される答えを続ける。
「つまり、滑走路周辺だが人目のつかない場所に巣への入り口、もしくは地上の様子を窺える場所があるということです。では、その巣への入り口、もしくは地上の様子を窺える場所が滑走路周辺にあるだけで、巣が空港から離れた場所にあるとしたら?」
その答えを聞いた3人は小さく頷きながらも、やはり納得しきれない様子で首を傾げさせる。
「でもそれだと空港の地下に住んでるとは言えなくねぇか?」
「ですが空港の地下に住んでいないとも言い切れません。」
俺の反論に疑問の主であるアフロは「分かったよ。」としぶしぶの様子で納得した。
「まぁどうやって探すにせよ、行き詰ってたのは確かだからな。ユウマ君に任せる。」
忍び込むのことにも文句を言って、ジャッカロープが出てくるのを待つことにも納得しないのならば、なにか別の案を出すんだな。
「それに勝算がないわけではありません。」
静かに俺を見る3人に向けて、俺は口角を上げて見せた。
「で、ウイスキーの入った皿を監視するのが勝算だと。」
夜にも関わらずサングラスをかけたままのアフロは、カマイタチを探しに行った際に使用した暗視ゴーグルを覗きながら呟いた。
「現状説明感謝します。」
この行動の理由としては、ジャッカロープの好物とされているウイスキーを空港周辺の人目がない場所に置いておき、ジャッカロープをおびき出しているのだ。
「でもユウマ先輩。本当にジャッカロープはウイスキーが好きなんですか?」
そのトウカの質問には肩をすくめて答える。
「事前情報がない以上、伝説に頼るしかない。それに伝承のはずだったジャッカロープが実在していたのなら、この伝説にも多少は信じる価値がある。」
それよりも問題はジャッカロープのベースであろうウサギとパーツであろう鹿は双方とも薄明薄暮性のため、ジャッカロープもそうだと考えられること。明け方ならまだしも、人目がまだある夕方は監視することが難しい。もちろん空港に忍び込むのとは違い、禁止された行為ではないが、空港の周辺を徘徊していれば不審者であることに違いはない。もし通報でもされて騒ぎになればジャッカロープを探すどころではなくなる。
そのため俺達は昼にウイスキーを置いておき、夜から明け方にかけて監視をすることにした。もし夕方にジャッカロープが来ていた場合だが、そこは俺の能力でカバーするしかない。
「さて、そろそろ切り上げましょうか。」
そう指示を出して片づけを始めると、見つからないように身を低くしたままのアフロは、ゴーグルを片手に俺を見上げた。
「まだ3時だぞ?ジャッカロープが出てくるのは明け方なんだろ?」
「えぇ。ですが今回は空港での動き方をある程度知ることが目的。ここは本命ではありません。」
・ホリデイインホテル 403号室
「計画はメッセージグループに送っておいたので後で確認しておいてください。」
ホテルに戻った俺達は、移動をする準備を進めていた。
「結構ユウマ先輩頼りですけど大丈夫です?」
すでに準備終えていたトウカはベッドに腰かけてスマホを眺めている。
「トウカちゃんが思ってるほど負担じゃないよ。」
3人には安全な仕事を振り分けた。やはり俺だけで計画を行うほうが効率、安全共に良い。だが問題は行動中3人がどうしても俺と離れてしまう事。ラファエルの事を考えるとあまり離れたくはないが、こればかりは仕方がない。
「お互いの状況はGPSを使って確認し合います。」
そう言って、部屋に備えられた小さな机に3本のペンを置く。すると計画を読み込んでいたトウカ、そして荷物を片付けていた途中のクミとアフロもその手を止めて、ペンの周りに集まってきた。
「「「ペン?」」」
「銃器メーカーから販売されているタクティカルペンにGPSを仕込んだものです。」
ペンを手に取って眺める3人に向けて「GPSは専用のアプリが必要なので後でインストールして、連携しておいてください。」と付け加えると、3人は早々にスマホを操作し始める。
少ししてそれぞれが操作を終えると、クミは腰元、トウカは肩掛けのバッグ、アフロはシャツの胸ポケットにペンをしまった。
「さて、そろそろ行きますよ。」
そう言って荷物を手に持つと、未だ荷物を片づけ終えていなかったクミとアフロは「「ちょっと待って!」」と俺を制止して片付けを急いだのだった。
わざわざ〈後で〉と言ってやったにも関わらず、先にペンの準備をするからだ。移動途中にすればいいものを……。
「そういえば、よくホテル取れましたよね。」
チェックアウトを終え、キャリーケースを引いて道を歩いていると、トウカがアフロに向かってそう言った。
「私達が泊まっていたホテル以外でも、ほとんどのホテルでチェックインに年齢制限があるはずじゃ?」
トウカの言いたいことは分かる。本来であれば、保護者の同意書もない行き当たりばったりの未成年の俺達が泊まれるホテルなど無いに等しい。これも俺が今回ジャッカロープを探すこと肯定的ではなかった理由の一つだ。
とは言っても、来てしまった以上俺がどうにかするしかないと考えていたが、アフロは大した支障もなくスムーズにチェックインの手続きを済ませたのだ。
もちろん、警戒されやすい海外からの旅行者である以上、身分を確認されないはずはない。
疑問の答えを待つトウカの視線に、アフロは「まぁ、俺が本気を出したらこんなもんよ!」と懐から出したブラックカードを見せたのだった。
まぁアフロは得意げ笑っているが、実際はブラックカードの肩書を使った単なるごり押しだ。
「ところで何時の便に乗るんだ?」
すると、片手でブラックカードをしまいながらアフロは小首を傾げた。
「はい?」
「今から別の空港に行くんだろ?」
「それはそうですが。飛行機には乗りませんよ。」
アフロの疑問に答えてやると、俺の後ろを歩くトウカとアフロの足が止まる。すると薄々勘付いたのか、トウカは「待ってください。どういうことですか?」と不安そうな声をあげた。
「タクシーで向かいます。」
質問に俺が答えるとトウカとアフロの顔は徐々に青ざめていく。
「「どこまで?」」
「ジャクソンホール空港。アメリカに到着した時の空港です。」
そう言うや否や、回れ右をして逃げ出そうとしたトウカとアフロの首根っこを俺とクミでそれぞれ掴んで阻止すると、2人はジタバタと暴れ始めた。
「待ってください!!車はやっぱりやめといた方がいいと思います!何となくですけど次は心が死ぬ気がします!!」
「嫌だ……日本と違って景色が変わらないんだよ。広がる限りの地平線!!嫌だぁぁぁぁぁ!!!」
そう叫びながら涙を流す2人は本気で泣いていた。
「別に嫌がらせでタクシーを使うわけではありません。実際飛行機を使った方が早いので自分も航空券を買おうと思ったのですが、エコノミーはすでに売り切れていたんです。」
「ま、待て!当日キャンセルがあるだろ!それに最悪エコノミーじゃなくても!」
逃げられないと悟ったのか、暴れることは辞め、俺に向かって講義するアフロに、俺は視線を送る。
「無駄遣いは悪手ですよ。」
その言葉の意味を唯一知るアフロは、眉をひそめながらも、あきらめて肩を落とした。
「わぁったよ……。」
すると隣でその様子を見ていたトウカは、突然味方ではなくなったアフロに悪態をつきながら抵抗を続ける。
「待ってください!!せめてキャンセルの確認だけでもしましょう!飛行機を使った方が早いって言ってましたよね!?」
……これ以上は時間の無駄か。
「はぁ……。分かりました。アフロ先輩、6時発の便があったはずです。確認してもらえますか?」
「ユウマくん!」
「ユウマ先輩!」
俺が折れると、トウカとアフロは歓喜の表情を浮かべ、互いに笑い合う。
「よっしゃ!じゃあもっかい俺の本気を見せてやる!直接交渉した方が効果あるだろうから行ってくるぜ!」
そう言ってアフロが空港の方へと走り出していくと、「私も行ってきます!」と言い残してトウカも走り出したのだった。
「あの2人ってあんなに仲良かったっけ?」
肩を並べて走る2人の後ろ姿を眺めてクミはそう呟いた。
「余程車が嫌だったようですね。トウカちゃん、普段はあんなに毛嫌いしてるアフロ先輩と笑いあってますよ。」
数十メートル先で走る2人は、恋人と言っても違和感が無いほどに側から見ると仲がよさげだ。
「あ、トウカちゃんがアフロ君殴った。」
「我に返りましたね。」
・飛行機内
「「エデン……。」」
まさかファーストクラスを取るとは……。
忠告したにも関わらず言うことを聞かなかったアフロに視線を送ると、アフロは「トウカちゃんには勝てなかったんだよ。」と気まずそうに視線をそらした。
トウカを行かせたのは間違いだったか。
・ジャクソンホール空港 出入り口
「いやぁ……腰が痛く無い!」
「素敵な旅でしたね!」
余韻に浸る2人は置いて、俺とクミは話を進める。
「この後はどうするの?」
「ホテルに荷物を預けたら、昼の内にウイスキーを仕掛けておいて、空港周辺の下見。その後は夜に備えて休んでおきましょう。」
ホテルは機内で予約した。1部屋になってしまったが……まぁ結局2部屋取るだけ無駄だろう。
「りょうかーい!……ふふ。」
どこに笑う要素があった?
「どうしました?」
すると微笑むクミは未だ余韻に浸るトウカとアフロに視線を向ける。
「なんだか楽しいな!って。」
楽しい……楽しい、か。
「……そうですね。」
・エルク・ルフィージュ・インホテル5号室
「意外と警備は薄かったな。」
そう言いながらアフロがベッドに倒れこむと、その隣のベッドにクミとトウカも同じく倒れこんだ。
今回はあくまで下見。下見に大きな結果は求めていない。
だが……。
「「「広かったぁぁぁ………。」」」
そう、ベッドに顔をうずめる3人が叫んだ感想とは違うが、探索範囲が広かったのだ。
もちろん空港という場所を調べる以上、その対象が広大なことは分かっていたが、もう少し絞り込めると考えていた。ジャッカロープは空港近辺の人間に見つからない、もしくは見つかっても未知の種だと気付かれないか、逃げ切れる場所にいる。つまりそれ以外の場所は
除外できる、はずだった。だが実際には除外できる場所が少なすぎたのだ。そうなれば、除外するのではなく選抜するしかない。
俺はジャッカロープがいる可能性のある場所の中で、より可能性が高い場所を数か所選び、そこにウイスキーを仕掛けた。もしそこがダメならば、いよいよしらみつぶしに探すしかなくなる。
俺は中身の減ったウイスキーの瓶を眺めながら、そんな思考を巡らせ続けた。
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