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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.3
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出会い 修正済み

 さて、そろそろか。

 開いていた本を閉じ、5階吹き抜けの図書室に備わった巨大な振り子時計を見ると6時25分になっていた。


 会いたくない……しかしあんなことをしてしまった以上行かない訳にはいかない。だが行きたくない、ならば居るか居ないかのギリギリに行くのがベストだろう。

 そんなことを考えながら、俺は理科第2準備室に向かうために立ち上がった。




 いつの間にか日は傾き、廊下から見えるグラウンドを赤く染めている。


 などと、校舎の影で全く赤く染められていないグラウンドを眺めながら数年前にプレイしたゲームのセリフを思い浮かべていると6時間目開始のチャイムが鳴り響いた。

 まったく。なんで理科第二準備室が旧校舎なんだ。

 いや、正しくは新校舎には第2準備室と言うものが存在しておらず。結果第2準備室の存在する旧校舎へと来るハメになっていたのだ。

 廊下を進みながら教室のクラスプレートを見ていくと、1クラスごとに部や同好会の名が書かれている。

 さて、こんなところに俺を呼びだしたバカ女はいるかな。


 1.言れた部屋に行くもバカ女がいなかった場合。

 次の日にでも「すいません!図書室で本を返していたら遅れてしまって。部屋に行ったんですけどもう先輩は帰ってたみたいで。」と言う。

 2.部屋に行くとバカ女が待っていた場合。

 その時も過程1と同じ理由で遅れたと言う。


 しかし、会いたくないのならば最初から部屋には行かず、後で1の言葉を言えばいいと思うだろう。なぜそれをしないか。それは事実が欲しいからだ。一応その部屋に行きました。一応急いで会いに来ました。その事実があれば良い。その事実さえあれば相手は責めるに責めれない。

 だが逆に事実が無ければ<壁に耳あり障子に目あり>、すぐにバレる。

 それにたとえ2だったとすれば「意味もなく残るのはよくない。」とでも言えば、話すのは10数分で終わるだろう。


「………。」

 準備室が廊下の1番奥とは。この旧校舎、絶対に設計をミスしている。

 そんなことを考えながら廊下を進んでいくと、理科第2準備室の一つ手前、クラスプレートには何も書かれていない教室から男女の話し声が聞こえてきた。

 歩みは止めずに扉の窓から中を覗くと、短いスカートを履いた小柄な金髪ツインテールの後ろ姿と三年生が付ける赤いネクタイのサングラスを付けたアフロの男が話していた。

「いくら?」

「だから!金じゃないんですってば!!何やらかしちゃってんですか!!責任取ってくださいよ!!」

「だから金は払うって言ってるだろ!?だから頼むよぉ。」

 修羅場か。


 特に気にも留めずその教室を通り過ぎ、理科第二準備室の防火扉のような扉の前に立つ。

「………。」

 俺は中にバカ女が居ないことを願いながら、その扉を引いた。

「ん?」

 しかしいくらドアノブを引こうとも扉は開かず。もちろん押してもみたが、扉の構造上引くしかない。

 もう帰ったか。

 望んでいた安堵とここまで来た手間を返せという徒労感を抱きながら、来た道を振り返る。

「………。」

 しかし、俺はその足を止めた。

 もう一度扉を引いてみよう、そんな事を考えてしまったのだ。

 扉に向き直り、再度ドアノブに手をかけゆっくり引くと、さっきまでの重さが嘘のように何の抵抗もなく扉が動いた。


 扉に隙間ができるなり、部屋の中から夏の蒸し暑い風が吹き抜けてきた。

 部屋では窓が全開にされ、目が痛いほどの夕日が差し込んでいる。そしてその部屋の中央奥に置かれた社長室のような机に、あのバカ……いや彼女が窓の外を眺めて座っていた。


 赤く長い髪は風になびき、窓の外を眺める瞳は夕日で輝く。

 その姿を、俺は綺麗だと思ってしまったのだ。

 彼女は俺に気付くと、慌てた様子で机の上にあった眼鏡を掛け。手を組んで両肘を机に乗せた。

 その姿は机の配置と合わせた様に社長のキャラで……。

「遅いよ、君。」

 そしてキャラに合わせた様に低い声だった。


 勘違いだった。

 このバカ女を綺麗だなんて思ってしまった自分が情けない。

 そんな反省をしている間も自慢げにでキャラを演じている姿はバカそのもので……。

「………。」

 とにかく今は予定通りに。

「……すいません遅れてしまい。図書室に寄っていて。」

 これで、何も言えまい。

「そっか……まぁいいや。」

 ほらな、バカほど扱いやすい物は無い。


「ところでご要件とは?」

 そう言いながら蒸し暑い部屋に入って扉を閉め、バカ女の座る机の前に立つ。

「そうだ!」

 するとバカ女はキャラを忘れて机の下に潜ると、頭をぶつけながら布の掛かった箱のような物を取り出してきた。

「これは?」

 答えを聞く前に布に手を伸ばすと、突然バカ女に手首を掴まれた。

「いい?今から見るものは絶対に他の人に言わないでね。」

 まるでさっきまでのバカが嘘のように真面目な表情を浮かべたバカ女は、そう言いながら俺の手首を掴む手に力を入れる。

「………。」

 俺はそんなバカが必死に隠す物が気になってしまった。

「分かりました。」

 合わせて真面目な顔を作るとバカ女はすんなりと手を離す。

「………。」

 布をめくると、それはペットショップでうさぎやモルモットが入っているような鉄製のケージだった。

 中には藁の床材が敷かれ、木の巣箱。水入れ。そして餌入れには生肉とレタスのような野菜が入っている。

 肉食か草食かどっちだ。

 見える範囲にはいない生物を見ようと巣箱を覗き込むと、突然カーテンレールの音ような声を出しながら高速の物が飛び出してきた。

  ガシャン!と音を立てながら鉄のケージに噛み付いた<それ>はジッと俺を見つめたままクネクネと動き、大きく開かれた口からは蛇のような二本の長い牙が飛び出していた。だがその蛇のような口に似合わず頭はトカゲのように丸みを帯び、体も短く太く。しかしそのトカゲのような形に反して体には手も足も生えてはいなかった。

「バ……先輩、足を切ったんですか?」

 するとバカ女は「違うよ!」と声を張った。

「そんな事する様に見える!?」

 バカならやりかねん。

「じゃあこれは?自分が知っている限りではこんな生物いませんよ?」

 <自分>か。こんな一人称、使うのは前の高校の受験以来だな。


 <自分の知っている限りの生物>それは公開されている生物の全てだ。

 今は簡潔に説明するが、俺は記憶力がいい。

 たまに本屋や図書館に行くと、そこでありとあらゆる本を立ち読みして知識を蓄える。

 絵本からマイナーな辞書まで、その全てを記憶する。もちろん図鑑、学会に提出されたばかりの生物もだ。

 しかし目の前にいる生物に似た種類は知らなかった。あえて言うならばアオジタトカゲに姿形は似ているが口内は青くなく、大体アオジタトカゲには足があり尖った牙は無い。


「ねぇ、これってさ」

 だが俺は見た事がある。

「アレみたいじゃない?」

 それは図鑑ではなく。

「体が太くて」

 UMA(未確認生物)辞典の。

「手足が無い。まるで」

「ツチノコ……。」

 そう呟くとバカ女は深く頷いた。


 ツチノコ。

 北海道や南西諸島以外の日本全国で目撃情報があるUMA(未確認生物)だ。

 手足の無いアオジタトカゲのような姿をしているために。野生化したアオジタトカゲの見間違えとも言われている。


 これにはたしかに足はない……。

「そうツチノコ。この間家の下に潜った時に怪我したこの子を見つけたの。」

「………。」


 なぜ女子高校生が家の下に潜って………。


「確かに条件はツチノコその物ですが……。」

「そう!完全にツチノコでしよ!?」

 条件だけ、だ。

「うんそう!ツチノコなの!だからね!?部活を作ろうと思うの!!」

 徐々にヒートアップしていたバカ女はとうとう訳のわからないことを言い放った。

「………はい?」

 ダメだ全く読めない。ツチノコからどうやって部活を作ろうという発想になる。

 まあ部活をやるのは勝手だが。

「それで?ツチノコも部活も自分に何の関係が?」

 するとバカ女は深く笑みを浮かべた。

「そう!ユウマ君には部員になって欲しいの!UMAと友達になるための部活!UMA研究部の!!」

 まあ、分かってはいた………俺がいればどんな問題児がいようと、どんな部活だろうと承諾されるからな。転校してきてすぐはよく誘われた。

「ですが部員が足りないのではないですか?確か部活動設立には5人必要だったはず。」

 するとバカ女は「大丈夫!私以外に3人はもう見つけてるから。」と親指を立てた。

 以外にやり手か。

「そうですか……。」

 バカ女は、未だツチノコが噛み付いたままのケージに布をかけると、それを持って廊下に出た。

「隣の部屋に待たせてるから行こっか。」

 隣の部屋?さっきのやつらか。このバカが、俺を修羅場に巻き込むな。ゲームの時間が減るだろ。

「行こっか!」

「あ……。」


 まさか隣の奴とは思っておらず、バカ女を追って廊下に出ると、隣の部屋に入って行くのが見えた。

「………。」

 別に逃げてもいいが胸のこともある。仕方なく開かれた扉から部屋を覗くと、さっきの金髪ツインテールがバカ女に抱きついていた。

「クミセンパァイ!!このクソアフロ野郎がぁ!!」

 口悪。

 やはり2人とも退学もしくはあのアフロだけが退学……。

 あのバカの名前はクミか。

「違うだろ!聞いてくれクミちゃん!悪いのはトウカちゃんもだ!」

 アフロの男は汗を流しながら必死に弁明していた。

 まあ双方に責任はあるだろうな。

 そして金髪ツインテールの名前はトウカか。

「2人共ちゃんと話して?」

 あのクミとやらも以外とリーダーシップはあるのか……。

 アフロはクミに迫ると、トウカを指差した。

「一緒に頼まれてた書類を作ってたらトウカちゃんが書類を破ったんだよ!」

「違いますよぉ!都合のいいように話してんじゃねぇこのクソアフロが。」

 本当に口が悪い。自分で言うのもなんだが、俺の素よりも口が悪い。

 トウカはアフロの手を払いのけると、今度はトウカがアフロを指差した。

「このアフロがジュースなんて溢すからですよ!しかもその上金を渡して私が破ったことにしようとしたんですよ!?」

「でもトウカちゃんだってジュースを飲んでたじゃないか!」

 するとトウカは自分の肩を抱え、嫌悪丸出しの顔をアフロに向ける。

「あの、さっきから下の名前で呼ぶのやめて貰っていいですか?やめてください、マジで………。」

「やめて!?その冷たい目!後こんな時だけ何で敬語!?こっちもトウカちゃんと仲良くしたくて話してるんだから!」

 アフロがオーバーリアクションで声を上げると、釣られるようにトウカも声を荒げた。

「こっち<も>って何ですか!<も>って!私はお断りです!ノーセンキューです!ファッ○ューです!」

「殺さないでくれる!?」

 そのやり取りはまさしく、<喧嘩するほど仲が良い>と言う言葉が似合うほどに息のあったもので、それをただ眺めるクミは小さく笑っていた。

 いや、そんなことよりも………。


 書類の話か。

 溜息をつくと3人の会話が止まり、俺に視線が集まった。

「クミ先輩……。」

 そう呟いたトウカは瞬き1つせずに目を開き、俺をジッと見つめる。

 変人レッテルか?それくらいなら気にしないぞ。

「誰ですかあのイケメン!!もしかして昼に言ってた新しい部員ですか!?日本人であんなに白髪の合う人はいませんよ!!」

 あ?

 そんなことを叫ぶトウカにアフロは小さく溜息を吐く。

「あんなイケメン野郎がトウカちゃんを選ぶとは思えんがな……。」

 ん?

「ユウマ君こっちに来なよ。」

 そう言ってクミは俺の腕を引いて教室に引き込むと、俺の横で星をイメージしたように手をヒラヒラと揺らした。

「新しい部員、霧崎 優真君でーす!」

 勝手に決めるな。まぁ例の件で俺に拒否権はないかのかもしれないが。

 するとアフロが俺の前に立ち、クミとトウカに向かって両手を広げた。

「反対だ!何が悲しくてハーレムを捨てなきゃいけないんだ!しかもこんなイケメンが入ってみろ!俺なんて一日中あいつの靴を舐めてないといけないじゃないか!」

 アフロの大声にトウカの冷たい視線が向いた。

「何言ってんですか。元からハーレムなんかじゃ無いでしょうが。それにあんなイケメンの靴を舐めれるのなら感謝して欲しいくらいです。」

 やめろ、俺はどこぞのアフロの唾液がついた靴を履く趣味はない。

「あのー、自分は別に入部する気は無いのですが。」

 まあ、一応拒否はしておくか。脅迫されたときは従うなり訴えるなり対処しよう。

 するとトウカは腕を組み、アフロに顎で指図しする。

「おいアフロ、ユウマ先輩を説得して来い。」

「ちょっと!?トウカちゃん!?俺先輩なんだけど!?」

 トウカは自分の口を手で押さえると、ワザとらしく驚いた顔を浮かべる。

「ウソ!?鳥の巣かと思ってました!」

「生物ですら!?せめて生物にして!?」

 やはり慣れているな。

 するとアフロは大きく溜息を吐き、気怠げに俺に近づいてきた。

「もういいや。あのイケメン坊主を入部させればいいんだろ?」

 アフロは俺の肩に腕を回すと、クミとトウカに背を向けてコソコソと話し出した。


「おぅおぅおぅ。どうせお前もクミちゃん目当てなんだろ!?ここだけの話な、クミちゃんってめっちゃくちゃバカなんだよ。だからさ君には部員として務まらないかなー、なんて。」

 いたな、中学の頃にこんな先輩。泣かして土下座させた。

 だが今は好都合。このアフロは俺が入部するのを反対している。ならこの波に乗って逃げるのがいいだろう。

「すいません自分には荷が重かったようです。」

 そう呟くとアフロは腕を組み「うんうん」と頷く。

「分かればいい。」

「この部は先輩がいてこそなんですね。」

 すると突然アフロは頷く首を止める。

「……今なんて?」

 社交辞令を聞き流すな。

「ですから、この部は先輩がいてこそなんですね、と。」

 アフロはさらに眉間にしわを寄せて俺に耳を向けると、人差し指を立てて「もう一回。」と繰り返す。

「この部は!」

 そう言いかけていると、アフロは言葉を遮って首を横に振った。

「そのあと。」

 あと?

「先輩がいてこ」

 するとアフロは立てた人差し指を俺の目の前に押し付けてきた。

「もう一回。」

 ……こいつ。いむもトウカにバカにされているのか知らないが、今とばかりに先輩気分を楽しむつもりか。


 ………仕方ない、これで話が済むのならいいだろう。

 最初で最期であろう先輩気分を楽しめ。

「先輩?」

「~~~!!」

 !!?

 するもアフロは喜んでいるのか苦しんでいるのか分からない表情を浮かべた。

「よーし!じゃあ最後だ!ユウマ君だったか?……はクミちゃんとトウカちゃん、どっちが好みだ?」

 そんな事を聞いて何になる。

「はい?」

 アフロは真剣な表情で腕を組んだ。

「いやな?この部の女子は美人美少女揃いだ、中身に難はあるが……。ユウマ君はどっちが好きなんだ?」

 そろそろ腹が立ってきた。

 次、意味の無い質問が来たらそのアフロに火種を入れてやる。

「容姿ではやはりクミ先輩が飛び抜けていますが。性格的に合いそうなのはトウカと言うあの子ですかね。」

 性格が近いからな。

「そうかぁ!」

 だからその喜びか苦しみか分からない顔をやめろ!

「よーし、ユウマ君!君の入部を歓迎するよ!」

 あ?

「今なんと?」

「だから!」

 アフロは両の手を広げると「ユウマ君!君をUMA研究部入部を部員全員で歓迎しよう!」と声を上げた。

 おかしい。どこで間違えた。先輩か先輩の所か。もっと早くにあのアフロを焚いておけばよかった。

 俺はクミとトウカの隣に戻ったアフロに向かって抗議する。

「いえ、ですから自分な入部はしないと。」

「ちなみにこの部の研究が成功した場合は10桁の報酬が入るぞ?」

 そう突然言い放ったアフロからは笑みが消えていた。

 ………。

 ほう。金で釣るか。

「根拠は?」

「詳しくは言えないが。今すぐにでも将来が約束される程度の金を手に入れる事ができる。だがその金を10倍にも100倍にもする方法があるんだよ。」

 3人に嘘をついた時の特徴は無い………。

 詳しくは言えない?俺が他言する可能性は無いと分かっているだろう。

 今すぐ手に入る金は、あのツチノコを学会に報告した時のことか?

 なら10倍100倍にする方法はなんだ………。

 しかしまあ……。

「入部しましょう。」


 言っていなかったが俺は金が大好きだ。

 金の為ならなんでも使う。

 結局この世は金だ。

 万が一、今の話が嘘なら社会的に殺そう。


「ところで、もう1人の部員は?」

 この部屋には俺を含め4人しかいない。あと1人の存在をクミに問いかけるとクミは俺のすぐそばの机を指差した。

「ずっとそこにいるよ?」

 その先に目を向けると、そこにはさっきのツチノコがいた。

「………。」

 蛇への対処法はあわてない事だ。

 見た目はトカゲでもあの歯がある。なら蛇の対処法が適切だろう。俺は噛まれないように素早く頭を掴み、ツチノコを持ち上げる。

 どうしてやろう。


「ちょっとあんた!離しなさいよ!!」


 ……誰だ。


  壮年期前半あたりの女の声の主を探すために3人を見ると3人共が俺の右手を。いや、手に持ったツチノコを見ていた。

「……まあ。お前しかいないな。」

 目を合わせるとツチノコはチロチロと舌を出した。

「あら、さっきもだけど私を見て驚かないなんて珍しい。嬉しいけどまずは離してくれる?」

 さて、本当にどうしてやろうか。トカゲは栄養が豊富らしいが……。

「あんた!今恐ろしい事を考えたね!」

 なぜ分かった。

 床に置くとツチノコは俺から逃げるようにニョロニョロとクミの体を這い上がり肩に登った。

「この子が4人目の部員、ツチノコちゃんでーす!」

 バカの最上級バカのバカだな。

 まあ金が入るなら気にしないが……。

「で、そのツチノコを学会に提出するんですか?」

「あんた絞め殺すわよ!」

 その短い胴でか。

「シャー!また変な事を考えたね!」

 なぜ分かる。ポーカーフェイスには自信があったのだが。あと一瞬蛇の片鱗出てたぞ?

「そのツチノコを学会に提出しないとなればUMA研究部では何を?」

「さっきも言ったけど私達UMA研究部はこのツチノコちゃん以外のUMAとも仲良くなって、私達人間と共存出来るような世界にしたいの。」

 俺の問いにそう答えながらクミはツチノコの頭を撫でた。

 そんな事も言えるのか………。だがバカだ。学生の小規模部活動で世界を変えられる訳がない。

 第1そんな事をしてどうやって金を稼ぐ。やはり間違えたか。

「その話には現実性が無さ過ぎます。そういう事なら入部の話は無かった事に。」

 学会に提出せずに将来が約束される金を手に入れるのは不可能だろう。

 嘘の特徴はなかったが相手が嘘をつくのに慣れているという可能性もある。

 そんな無駄な時間を過ごすくらいなら、クミの胸の件をバラせばいい。その後で教員を言いくるめる方がまだマシだ。

 そう言って部室を去ろうとした俺は「もし、さっき言った以外の数千万の資金があったとすれば?」と言うアフロの言葉に足を止めた。

「そんな金額がどこに?」

 振り返ると、アフロはサングラスを外して立っていた。

「俺は言っちゃなんだが自分の企業を持っていてな。俺個人の収入を株やらで増やした。」

 株……今度やってみるか。

「ですが金銭面的に余裕があっても学校からの信用。それ以前にUMA自体の存在が不確定過ぎます。それもUMAなのかまだ分かりませんし。」

 ツチノコを学会に提出してから退部すればいいと思っていたがしないとなると話が変わる。例えそのツチノコがUMAだとして、他にUMAがいるかも分からん。


「あんたらの言っているUMAって言うのは私みたいな人間に見つかっていない者の事だろう?それならその辺に山のようにいるよ?」

 ツチノコは言葉にしていない俺の疑問に答えた。

「例えば?」

 そう問うとツチノコは窓の外の山に目を移す。

「その山には九尾とカマイタチが住んでるし。山の向こうの川の<溜まり>に行けば人魚もいるねぇ。」

「それが事実だと言う証拠は?」

 流石に人外の嘘は見抜けないか……。

 するとクミは「本当だよ。」と口を開いた。

「私もツチノコちゃんに連れて行ってもらって何度かカマイタチちゃんは見かけてる。九尾ちゃんはまだだけど。人魚ちゃんの話ははじめて聞いた……。」

 クミはそう言うと「なんで教えてくれなかったの?」とツチノコに向けて頬を膨らませた。

 このバカは何かと<ちゃん>をつけるな。

 クミに嘘の特徴はない。そしてそれだけの金があるなら大体の事は出来る。現実性はありか………。


 しかし最後に1つの問題。

「分かりました。そう言う事なら協力しましょう。ですが最後に、この活動を部活として行うなら一番の問題が学校からの信用、どうするつもりで?」

 するとクミは「そのためにユウマ君を呼んだんだよ。」と不敵な笑みを浮かべた。

 まあ、そうだろうな。

霧崎UMAの優真譚を読んで頂きありがとうございます。

「UMAとか言ってるくせにツチノコと絡まないじゃん」と思った方もいらっしゃると思います。

UMAとは次章、次章から!!きちんと絡んで行きますので、これからもよろしくお願いします!!


 @ODAKA_TAIYO

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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