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霧崎UMAの優真譚  作者: 尾高 太陽
File.5
19/73

貪欲 修正済み

霧崎UMAの優真譚を開いていただきありがとうございます。

突然ですが話の進行上、

File.0の削除と第13部から登場していた〈トリニティ・グリーン〉の名前を〈ラファエル・トリニティ〉へと変更させていただきました。

名前の変更という事もありご迷惑をおかけします。

File.0削除の件についてはFile.3以降問題なく読んで頂けると思います。


これからも霧崎UMAの優真譚をよろしくお願いします。

では第17部をお楽しみいただけると幸いです。

 ・ホリデイインホテル 403号室

「なんでぇ!?ユウマ君の言った通りにしたのにぃ!!私もジャッカロープと話したいぃ!!」

 そんな事を叫びながらクミはベットの上で駄々をこねた。


 昨日までと同じく、確かにあの部屋にはレオがいた。

 そしてクミは俺の言った通り、アフロのセリフに一言足して「助けて欲しい?YESなら音を一回、NOなら音を二回、何か他に伝えたい事があるなら音を三回鳴らして。」と口にした。

 だがまさか。

「何!?4回音を鳴らすって!!」

 どういう事だ?あの三択以外に答えはない。

 ならばクミと話したくなかったか……トウカかアフロでないといけないか。

「明日はもう一度自分も試してみます。」




 4日目

 ・某大学 事務室

 まずはここ3日と同じように監視カメラの機能を停止させる。

 なぜ俺達はここまで警戒するのか。もちろん、大学のセキュリティーに捕まらないためということもあるが、今回はラファエルに情報を残さないためという意味合いの方が強い。

 窓が開いていたことからも俺達が来ることは読まれているのだろう。問題はその目的がバレることだ。あえてレオを残すことで、今のところはラファエルの動きを封じているが……。

 俺達には目的がバレる痕跡を残さない侵入が必要なのだ。


「よおレオ。助けて欲しいか?助けて欲しければ返事をしろ。」

 昨日までは監視カメラを止めた時点でホテルに戻っていたが、今回はホテルに戻る前に第9研究室に行き、レオに話しかけた。




 ・某大学 外壁

「で、ダメだったと。」

「……全く返事がなかった。」

 一度ホテルに戻ってトウカを連れてきた俺は、トウカを抱えて外壁を上っていた。

 そして窓から部屋に入った後は、クミやアフロの時にもそうしたように、レオと話す人間を部屋に残して俺は廊下へと出る。

 するとトウカは「あんまり期待しないでくださいね?」と苦笑いを浮かべ、ゆっくりと扉を閉めた。


「久しいなトウカ。」

 廊下から中の様子をうかがっていると、扉を閉めるや否やレオの方から声をかけてきた。

「名前覚えててくれたんですね。」

 トウカはそう小さく笑いながらテーブルクロスをめくり、レオと顔を合わせた。

 まさかあちらから話しかけてくるとはな。しかしトウカも冷静に会話できている。

「レオ。私とは話すのになんでユウマ先輩とクミ先輩とは話さなかったんですか?」

 よし、違和感は少なく会話に入れた。

「あの毎日くる男と昨日きた女の事か……。あの2人は信用ならん。」

 つい5日前に会ったばかりの俺が信用されていないのはもっともだ。だが逆に言えば5日前にあったばかりのトウカとアフロは信用しているという事になる。トウカとアフロが特別信頼されているのか、俺とクミが特別信頼されていないのか……。

「なら私の事は信用してくれてるんですか?」

 するとレオは少し間を置いて「そうなるな。」と呟いた。

「ならあの2人は信用しても大丈夫です。信用してください。」

 確かにそれは言える言葉だ。

 だが……少し早い。

「それは出来ない。」

「って言うと思ってました。」

 ほう?。

「そんなの自分の目と他者、どっちを信用するかなんて決まってますからね。」

 そう。目の前で親が殺されて、その犯人は殺していないと親友に説得されても信用は出来ない。この目で見たのだ。他者の不確定な情報よりも己の中の真実の情報を信じるに決まっている。

「でもいつか分かると思いますよ?」

 なるほど。先の事を考えさせそこで俺達との関係が長期間とイメージさせる為か。

「……ふん。」

 トウカはフフッと笑うと目を閉じて呼吸を落ち着かせた。

「じゃあ本題です、なんでレオは捕まっているんです?」

「なら我を逃がしてくれ。」

「質問に答えてください。」


 現時点でレオと会話できたのはトウカとアフロの2人、もしくは俺とクミ以外。

 ここ3日でレオの中での順位は分かった。自ら助けを求められたトウカ、答えないといけない状況を作れば答えられアフロ、皮肉な返答をされたクミ、そして一度の返答もない俺の順だ。条件に関しては結局詳しくは分からないままだが……。

 そして俺達の中でレオよりも上に立って会話できるのは直接助けを求められたトウカのみ。レオから情報を引き出すにはトウカに任せるしかない。




 ユウマ先輩に頼まれた聞く内容は3つ。

 一つ。捕まえられた経緯。

 確かにこれは聞かないとダメだろう。捕まった理由によってはラファエルとの関わり方も変わる。


〈聞き出すためなら多少は強引にしていい。〉


 ユウマ先輩の許可はある。

「逃してくれれば話そう。」

 やけに逃げることを望むレオに向けて私はわざとらしくため息を吐く。

「今私とレオ、どっちが主導権を握っているかちゃんと考えてください。」

 そう威圧的に言うとレオは静かに舌打ちをした。

「これだから人間は………って?」

 そんなレオに向かって、私は思考を読んだように、笑みを浮かべてその言葉を口にする。ユウマ先輩がカマイタチから主導権を握った時のように。より不敵に……まるで全てを知っているかのように。

「っ!?」

 するとレオは動揺した様子トーンの上でがった声を漏らし、拘束するチェーンを鳴らせた。

「なんで捕まったんです?」

 よし、今ので完全に上に立てた。

「……フッ。リンゴか。」

 しかし、そう言ったレオの声はさっきの動揺が嘘のように静かな声だった。

「リンゴ?」

「……我の群れは密かに生きていた。獣からは逃げ、人は避けて。」

 獣と人……。

「そんな時奴が急に来たんだ、音も匂いも殺気も……何も感じさせずに。気付いたら私と奴の2人になっていた。いや私の体の……頭の中に奴が入ってきた。」

 頭の中に直接話しかけてきたように思わせる事は出来ない事もない。もしその方法でラファエルがユウマ先輩に何か言ったのだとすればユウマ先輩があんなに動揺したことも理解できる。

 でも、私がユウマ先輩に入れなかったのにラファエルに入れるわけが……。ラファエルは私以上の力を持っている?もしくはレオが嘘をついた?いやレオと私達は利害が一致しているはず。ラファエルの情報で嘘をつく理由はない。

「……そこでさらわれたんですか?」

「違う。そこで言われたのだ。」


〈私に協力しなさい。心で私を呼べばいかなる時も貴方を歓迎する。私はいつでも貴方以外を見ている。〉


 レオ以外を……。

「我は奴が抵抗してはいけない何かだと分かった。我以外、それは群れの事だ。自己犠牲とは全く虫唾が走る……が、我を差し出した方が群れの安全は守られる。」

「つまり群れを守るために自分から捕まったと。」

 これでジャッカロープを連れて帰るかの判断はできた。


 二つ。群れの居場所。

 群れの居場所が分からない事には助けるも連れ出すことすら出来ない。

「分かりました。以前の続きですがもし私達の国に来たいというのなら貴方の群れの居場所を教えてください。」

 この返答によっては私達は手出しできない。私達の部活、UMA研究部の活動方針は友達になる事だ。強制的に連れ帰っても友達になれるはずない。

「……あの飛行機とか言うでかい鳥達の下だ。」

 想像以上にあっさり……。

 ん?下?つまりは真上に飛んでいるのを見たってこと?

 と言っても飛行機の通るコースの下を全部探すなんて……。

「もう少し詳しく分からないんですか?周りに何かがあったとか。」


「それは貪欲ですよ。」


 !!?

 誰もいなかったはずの、いや誰もいなかった後ろから聞こえた声の方を向くと、そこには窓から差し込む冷たい月明かりに照らされたラファエルが立っていた。

「なんで!!」

「ここは私の研究室です。研究で残っていたんですよ。」

 笑みを浮かべてそんな事を抜かすラファエル。やはりここにレオを残していたのは罠だったのだろう。

「そうですか。勝手にすいませんでした。忘れ物をしてしまいまして。」

 速くなる鼓動と呼吸を抑え、私は冷静を装って形だけの言い訳を口にする。

 もしラファエルに見つかった際の対処。


 〈無理をしてでも逃げる。〉


 それがユウマ先輩からの指示だった。

「では忘れ物も見つかりましたし、おいとましますね!」

 ラファエルの返事を待たずに予備のリボンをポケットから出して見せると、ラファエルは「それは良かった。」と薄い笑みを浮かべた。

 これ以上の長居は嫌な予感がする……。

 ラファエルに会釈し、逃げるように部屋の扉を開くと、そこではユウマ先輩が待っていた。

「ユウマせーんぱい!」

 私の後ろに立つラファエルに気付いてくれる事を信じて私はユウマ先輩の顔を見つめる。すると会話を聞いていたのか、ユウマ先輩は「リボンはあった?」と違和感なく私に声をかけた。

「はい!!」

「じゃ……。」

 そしてユウマ先輩もラファエルに会釈すると、扉を閉めて部屋を後にした。


 私を抱えたユウマ先輩は廊下を駆け抜けて行く。

 まるで車かのような風を浴びる私はユウマ先輩の顔を見ることができなかった。

「すいません。引き出せませんでした。」

「いや、あの判断は正しかった。」

 やっぱり聴いていたらしい。

「でも群れの居場所も、それにラファエルの弱点も。」

 事務室に着くとユウマ先輩は私を下ろして機械をいじり始めた。

「レオの捕まった経緯を聞けただけで十分な収穫だよ。ラファエルの弱点はいわばオマケ。それに……ジャッカロープの群れの居場所もかなり絞れた。」

「どう言う事です?」

 情報といったら飛行機が通るって事ぐらいじゃ……。

「大きな鳥ってどう言う事だと思う?」

 ひたすら機械をいじり、私の方を見ずにユウマ先輩は会話を続ける。

「飛行機の事ですよね?」

 事実飛行機って言っていたわけだし……。

「そう。でもあんな空高く飛ぶ飛行機を見ただけで大きいって判断できるかな?」

「あ……。」

 そうか。私達は飛行機=大きいみたいなイメージがある。でもジャッカロープ達は自分の目で見たのが全て。なら飛行機を大きく感じるには離陸か着陸、低空飛行する時だけ。且つ人の少ないその条件を満たす場所。

「それにしても範囲は広いんじゃ……それに捕まったのがワイオミング州とは言ってませんし。」

「………。」

 監視カメラの操作を終えたのか、こちらを見たユウマ先輩は静かな笑みを浮かべていた。

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 見たところで大したことも無いですがもしよければ見てみて下さい(ほとんど呟かない笑)。

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