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【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
第二章 森の城のノア様
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第05話 惚れ薬完成

■ 惚れ薬完成……?



「……というわけなの」

「ふーん。ノアって……知らないなあ……?」

「でも、『ラウネルで私の名を知らないものがいたとは』って言ってたよ?」

「ふーん……?」


 まあ、いいか、とトレニアは首を、こきっと鳴らした。


「その人に、惚れ薬を飲まそう」


 いまなんて言った?

 

「えええ!?」

「そのつもりだったんでしょ?」

「そ、そんな恐れ多いよ!」

「表現オカシイって。いいじゃん、年上の彼氏~」

「ムリ! 絶対ムリ!!」

「じゃあ止めようか」


 トレニアはさっさと本と材料を片付け始めた。

 ハーブを皿にまとめて、「捨てていいよね」と笑う。

「ちょっと、待って!」

「止めるんでしょ?」

「ちょっと待とうよ」

 トレニアはニヤニヤ笑っている。

「イヤ、リリーが嫌ならいいのよ? 無理強いはよくない」

「そんなこと言わないでよっ」

「じゃあ決まりね。大丈夫だって、成功するとは限らないんだからさ」

「それも困る」


 話が決まると、私たちはもう一度材料をチェックした。


「だいたいあるかな」

「トレニア、桃の種がないよ.赤ワインも」

「うーん。赤ワインは、台所にあるやつ貰ってこよう。桃……。桃の種か」


 裏の畑に桃の木があることはある。

「まだ熟してないけどいいかなあ?」

「種の中身を使うんだし……。まあいいんじゃない……?」

「やめておこうか。ひとつ抜いても大丈夫だよ。たぶん」



 基本はすべての材料を分量通りに混ぜるだけのようだ。あとは、月夜の光に一晩あてて、太陽が昇らないうちに取り込む。

 

 一晩、眠らずに月の光にあてる。 

 うまくいくわけがない。

 でも、もし。惚れ薬が上手にできて、あの人に飲ませることができたら。


 この退屈な日々が、少しは変わるんだろうか。

 眠れない夜をやり過ごして、昼間はふらふらしているだけの毎日。


 翌朝、夜が明ける前に、部屋に取り込んだ。

 朝食もそこそこにトレニアが家にやってきた。


「できた」

「……じゃこうが入ってないよ?」

「バジル飾ってあるから大丈夫だよ」

「だから、何が大丈夫なのさトレニア」


 見た目だけなら、オレンジジュースだけど……。

 シナモンほかいろいろ、混ざりこんでいるので、味は期待できそうもない。


 じっと怪しい液体を見つめる。

「惚れ薬の味見ってのも、ヘンな話だね」

とトレニア。

「でも、味見もしないで他の人に飲ませるのもアレだよね」

「まあナンだね」

「飲んでみよう」

「……そうね……。よし、リリー、まかせた」

「まかせて。……って、トリニアも飲むのよ」



 ごく……。




 ……。

 …………。


「うぇぇぇぇぇぇ……!!」

「コリャヒドい!!」


 なんだこの味。


 サワヤカなオレンジジュースの甘さを、バラの苦みが鮮やかに消し去り、シナモンの風味がまったく噛み合わないハーモニーを奏でている。


「コレ、飲めたもんじゃないね」

「例え惚れ薬として成立してるとしても、百年の恋も冷めるよ」

「……冷めちゃ困るよね……」

 でもきっとこれは、惚れ薬として完成してるんだろう。

 そう思うことにする。

 これをどうやって飲ませるかが問題だ。


 トレニアが、「お礼を兼ねて『自分の家のオレンジです』って、惚れ薬を渡したらどうかな?」と提案した。

 あまりの不味さに、『どうしたら飲んでもらえるか』と検討したところ、

「塩をガッツリ入れた、しょっぱいミートパイを作って、『しょっぱい!!』となったところに、オレンジジュースを差し出そう」

という計画に落ち着いた。やはりトレニアは天才かも知れない。


 味がわからなくなるほど、塩を入れたパイを焼くなんて。

「絶対にうまくいくって思って行動しないと」

「……その通りね。よし、やろう」

 そんなわけで、見た目はおいしそうだが、塩辛いミートパイと、オレンジジュースとみせかけた惚れ薬を持ち、あたしたちは森を進んだ。


 ……ところが。

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