表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
第二章 森の城のノア様
4/36

第04話 森の城のノア様

 南の森に出て、バジルを摘み取った。ハーブ類は群生しているので、少し探せばすぐに見つかる。

 ついでに野いちごを取り、おやつにした。たくさん採ってケーキにしよう。

 トレニアもあまり学校には行っていない。昼間はだいたい一緒にすごしている。彼女は学校で習うようなレベルの魔法は、自由に使える。火を指先から出したり、擦り傷を治すくらいは造作もないことだ。

練習なんてしなくてもできる、と彼女は言うが、それができないから困っている。


 家に着くなり、トレニアが、

「ところで、リリーは好きな人いるの?」と笑った。

「えっ……」

「だって、こないだ、『惚れ薬あったら、あたしが使いたいよ!』って言ってたじゃない」

 ……私は。トレニアの洞察力をナメていた。

「いるんでしょ? 学校の子?」

「……違う」

「そう。誰?」

「そっ、それは言えない!」

「そう」

 ハーブを洗って、茎から葉をちぎる。

 バラの絞り汁を取るため、トレニアはバラの花びらをぷちぷちとちぎった。

「……」

「……聞かないの!?」

「ホラ、聞いて欲しいんじゃん。リリーは素直だね~」


 ……しまった。


■ 


「ノア様っていうんだけど」


 ラウネルの南の森には古城が点在する。

 この国が小さな領土を保っているのは、ほんの100年ほど前の統一戦争の歴史がある。

 その話は長くなるから省略するとして。

「このあたりは、当時の城がポツポツ残ってんだよね」


 ある日、木苺を取りに森に入って、迷子になった。

 夕暮れ時の、オレンジから紫色に染まる空が、森の間から見えた。村に着く前に日がとっぷり暮れて、さすがにまずいかな、と思い始めた頃に、古城にたどり着いた。

 村の方角を教えてもらおう。うまく行けば、空を飛んで村まで送ってもらえるかもしれない。もっとも、魔法を使える人がいればの話だが。

「すみませ~ん……。誰かいますか?」


 城を囲む、荒れ果てた庭から、灯りが見える方に進む。


「誰かいるのか?」

「キャッ!」


 背後から声をかけられ、あたしは飛び上がった。

 今、ここに誰もいなかったよ!


 おそるおそる振り返る。


「……これは、小さなお客さんだな。密偵ではないらしい」


 くす、と笑った、そのひとは、今まで見たことのないくらい柔らかそうな笑顔をしていた。

 夕暮れの闇に、白い上着が浮かび上がるように見える。

 光を放つかのような銀色の髪に釘付けになる。

「……」

「大丈夫? 具合悪いのかい」

「あ、あの、勝手に入ってすみません」

「いいよ。君は? どこから来たの?」

「ラウネルからです」


 うちの村には、こんな綺麗な人がいたかどうか。

 いや、いない。


「私の城になにか用かい?」

「森の中で迷ってしまって……、帰れなくて」

「……それは困ったね。私が送ろう」


 上着のデザインが、少し古風な気もしたけど、「ついておいで」と言われて、慌てて後を追う。



 この人、歩くの速い!


 暗くなった森の中を、ずんずんと進む。

「ああ、少し早かったね」


 そう言って、その人は私の手をつないでくれた。

「綺麗な赤毛だ。素敵だよ」

「あ、えっ……、あっ、ありがとうございます」


 細くてひんやりした指で、私の耳に花を飾ってくれた。

「……ありがとう、ございます」

「どういたしまして」

「私はリリー、リリー・ロックといいます。お名前を伺ってもいいですか?」

「私はノア。ラウネルの人間で私の名を知らない者がいたとはね」


 笑う時、口元に手をもっていく人なんだな……。

 余裕があるっていうか。


(綺麗な、ひと……)


 髪を耳にかける指の動きに、目を奪われた。

 村の近くまで来ると、その人は「今度は迷子にならないようにね」と言って、帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ