第36話 願い事、たくさん
最終回です。
私は学校に行くことにした。
ワンピースを一枚縫って、それを着て、ノア様がくれたペンダントをつけた。
「リリーが学校に来た!」
懐かしい、いじめッ子のクラスメート。
ほんの数日、学校に行ってなかっただけなのに。
リリーのくせに、ペンダントなんてつけてるわ、とケタケタと笑う。
……うるさい。
「うるさいわよ?」
「なんですって!? リリーのくせに……!」
変われ、と小さく呪文を唱える。
そうよ、私は女神の力を使えるようになった。
その辺に生えている草を大きく成長させて、足に絡ませた。
「きゃああああああああ!?」
「私が、今、首を絞めたらどうなると思う?」
「や、やめてよ! お願いよリリー!!」
「どうしようかな。日光浴でもしてたら。気持ちいいわよきっと」
朝のなごやかな校庭が凍り付いた。
そろそろ可哀想かな。
「黒百合、もういいよ」
「ええ」
力を解放すると、すぐに草は元のサイズに戻った。
「なによ……! リリーのくせに」
「そうよ。私は友達とか精霊とか、誰かいないとなにもできない。出来そこないのへなちょこリリー。でもね。今は精霊を従えてるのよ?」
「あんたなんか……!」
「なに?」
すごまれても、たいして怖くなかった。
私は何を怖がって、傷付いていたのかしら……?
黒百合の女神に初めて出会った時とか、ノア様の城に夜中に行った時の方が……よっぽど怖かったわ。
私は、彼女の胸元をわしづかみにした。
そうよ。
ウジウジしてた自分からは、卒業。
「今度、私を馬鹿にしたら、こんなものじゃすまさないから」
「……」
「引きちぎって、庭に撒いてあげるわ。アリに食われて、一かけらだって残らないわ」
このくらいのインパクトがないとね~、と黒百合とネタ合わせをしてきた通りに、わざと冷たく言って、私は手を離した。へたりこんだ相手を見下ろして微笑む。
「へなちょこリリーは終わりよ」
……なんか、違わないかなあ……?
授業が終わると、黒百合の女神は庭で待っていてくれた。
「じゃあ私は帰るわね」
「え、どうして?」
「お前は私なしでもやっていける。やっていかなくちゃいけない」
人と上手くやる方法と、ケンカする方法を学びなさい。
ヤラレル前にヤレ。
「それが女神の言うことなの?」
「それが世界よ。戦いたくなくても、戦わないといけない時が来るわ。自分を大切にするためにもね」
何かをしようとする時に、邪魔する者がどういうわけが現れる。でも負けちゃいけない。
あきらめてはいけない。
望めばすべてを変えられる。
人には誰にでもその力があり、使われるのを待っている。
世界を作れる、その力を。
「自分の思うままに生きなさい」
いちいち守ってなんかやらない。
そこまで優しくはない、私は星の欠片。
「まあ、困った時は呼びなさい」
そういうと、一面に、白い百合の花が咲いた。
きっと咲けるわ。こんな風にね。
それまで、退屈しのぎに見守っていてあげましょう。
「私、退屈はキライなのよ」
じゃあまたね、と彼女は風のように消えてしまった。
■
なにか欲しかったわけじゃない。
そりゃ、ノア様と一緒にいたかった。本当は。
でも、ノア様は、ひとつだけ魔法を教えてくれた。
「変われ」
自分自身。
すぐに諦めてしまう自分。
努力もしないで投げ出してしまう性格。
そんな自分がイヤだった。
でも変え方が解らなかった。
彼が教えてくれたことは、そんな私自身の変え方だった。
私はまだ、ほうきで飛べない。別にそれでも困らない。
どこにだって歩いていける。
よく考えたら、惚れ薬も作れるし、魔法も多少使えるようになった。
真面目に学校に行くようになり、服の縫い方を基本から習い始めた。
私は夢の続きを縫い始めた。
もう、自分をへなちょこだなんて、絶対に思わない。
素敵な王子様を見つけて、一緒に踊るの。
自分で縫ったドレスを着て。
アメジストのペンダントをつけて。
きっともうすぐ。
……いや。
すぐに叶うわ。
「あたしはリリー」
完
初めて、リリーのアイディアを出したのが、2006年、下書きを始めたのが2008年の11月ごろ、野いちごで完結させたのが2009年4月27日。でもこれ、まだ1部なんです。
もともと書きたかった2部の話が長くなり過ぎたので、先に主人公リリーと黒百合の物語を1部としてまとめたものになります。2部のアイディアがまとまったので、小説家になろう
アップしたのが、今年の2月なので、ずいぶんとリリーには長く付き合ってもらっています。
小学生~中学生向けで、当時はガラケーで書いていたので、文が細切れにように感じますね。
原文はあまり変更せずに、今の小中学生にも届いてほしいという思いで更新しました。
ブックマーク、感想をいただき、更新ごとに楽しみにしているとのお声をいただき、本当に感謝しております。ありがとうございました!
2部は、4年後のリリーの物語になります。
少しずつ更新いたしますので、お付き合いいただければと思います。
読み終わった後に、少しでも元気が出る物語を書いていくつもりです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
2017/5/7
水樹みねあ




