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【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
最終章
29/36

第29話 月の光の王子様

第7章



月の光の王子様


 私はランプを手に、日の落ちた森を歩いていた。

 おばあちゃんには話してこなかった。

 これは、私の問題だから、自分で答えを出さないといけない。


 月は真上。

 城のシルエットがくっきり浮き出ている。

 雑草が生い茂ったバラ園が、風に吹かれてさやさやと音を立てた。

 城の中は真っ暗だ。


 それでも、あなたがいることはわかっているから、怖くない。

 私は鉄の扉を開けた。


 大階段の窓から、月明かりが差し込んでいる。

 階段を見上げると、彼が立っていた。

 銀の刺繍が施された白いロングジャケットにマントを羽織っている。

 その背中に向かって、声を掛けた。


「こんばんはノア様」


 振り返ると、銀色の髪が揺れた。


「待っていたよ。リリー」


 音も立てずに階段を下りてくる。

「綺麗になったね。前髪がある方が可愛いよ」

「……似合うでしょ? 自分でワンピースも直したんです」

「うん、前よりずっといいよ」


 ……ノア様の笑顔に見とれてしまう。

 月の光で、きらきらと前髪が光っている。

 淡い紫色の瞳がまるで宝石。


「リリー? 用があるから来たんだろう?」

「えっ、はい」


 ……そうだ。

 目的を忘れてしまいそう。


「ペンダント、うまく出来ました」

 胸元のペンダントを指でつまむ。

「ほんとかい? 見せてごらん」

「はい、ノア様のおかげです……きゃっ!」


 彼の腕の中で、「よくがんばったね」とほめられた。





 抱き締められて思い知る。







 ……私、ノア様のことが好きだ……。


 あなたに愛されたい。

 このまま、いられたら。






 惚れ薬の行方を、まだ選べる。

 でも、勇気を出さなきゃ。

 とんと彼の胸をついて、体を離した。


「……ノア様に会いたくて」

「私も会いたかったよ」

「え?」

「君が置いていった、死ぬほどマズイ、オレンジジュースを飲んだよ」


 私はトレニアと一緒に作った惚れ薬を思い出した。


 飲んでくれたんだ。

 惚れ薬。


「死ぬかと思った」

「もう死んでるのに」

「……解っていたんだね」


 ノア様は口元に手を添えて、困ったように首をかしげた。

「……いろいろ思い出したよ」

「え……」

「同じものを飲んだことがある」

「ええ!?」

「……昔ね」


 だって、アレ、レシピ通りに作ってない……。

 そもそも、私の同じようなことをする人がいたことに、驚いてしまった。

 私は何を言えばいいか、迷って俯いた。


「リリー、ここで暮らさないか」




 その言葉に、はっと顔を上げ、彼を見た。



「永遠に二人だけで」






 さあ、と差し出された手を取りたくて。

 ……取れなくて。


 『いやなら断りなさい』、黒百合の言葉を思い出す。

 決心してきたはずなのに、この期に及んでまだ迷いそうになる。


「私にこんなことを言われたら、迷惑かい?」

「そんなこと……」


 一緒には、いられない。

 そのつもりで来たんだ、と首を横に振った。


「……うちにはおばあちゃんがいるから。ごめんなさい」


 ちゃんと断るのよ。 


「おばあちゃんを置いていけないよ。私は、ローズ・ロックの孫です」


 ノア様は、差し出した手を下ろした。

 彼は驚いた様子もなく、呟いた。

 君は、やっぱりローズの孫だったのか、と。


「気付いていたんでしょ?」

「……ああ。そっくりだからね」


 忘れていたと思っていたよ、ノア様は笑った。


「同じ惚れ薬を飲ませられるとはね」


 少し話さないか、とノア様は私の手を取った。

 その手は、とても白くて柔らかくて。

 月の光が、結晶になって、人になったみたい。


 きっと、昔。おばあちゃんも同じように思ったんだろう。


「ねえノア様、私も聞きたいことがあるの」

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