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【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
第四章 黒百合の女神
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第22話 古い約束

誤解されがちな彼女の話。


 二人を送って、家に帰るとおばあちゃんは先に部屋に引っ込んでしまっていた。

 もうすぐ夜が明ける。


「ベッドで寝てね」

「あんたは?」

「私はソファで寝るからいいよ。あなたはまだおばあちゃんの精霊だし、私なんかが扱える精霊じゃないんでしょ? ちょっと狭いかもしれないけど」

「……そう。ありがとうね」

「いいえ」


 黒百合がベッドに入ると、私は練習を再開した。

 明日の朝になったら、きっと魔法は解けてしまうだろう。コツを忘れないうちに……。


 1回やってだめなら、100回やればいい。

 諦めないって約束したから。


 ちゃんとできるようになったら……ノア様にきっと会いに行こう。




 床に座り込んで練習するリリーを、ベッドから薄目を開けてみていた。


(熱心な子ねえ……)


 もともと精霊なので、眠らなくても支障ない。

 しばらくすると、リリーは疲れてしまい、気絶するように眠ってしまった。


 ソファに寝かせて、毛布をかけてやる。


(根性はローズにそっくりね)


 どうしたものだろうと、寝顔を見ながらつぶやく。ローズは私を許さないだろう。

 それは、別に構わない。


 リリーはまだ子供だ。私と契約をするのは、幼過ぎる。かといって、ノアの頼みを無視するわけにもいかない。


 人間に肩入れするのも、面倒なことね……。

 ノアとの約束を今更ながら面倒だと後悔する。


 ああ、面倒なことになった。


 最後のノアの姿を思い出す。








『黒百合、ローズのことは頼んだよ』

『イヤよ、あんな女の面倒を見るなんて』

『そんなこと言わないでおくれ』



 お願い、というように首をかしげて微笑む。



『長き時を生きる、あなたのような精霊にはわからないかもしれない。私たち人間は、千年の誓いを立てることはできない……。だから、自分ができることをするんだ』

『死ぬことが自分にできることなの? それは無責任なんじゃないの』

『また隣国が攻めてきたら、ローズも無事じゃすまないからね』

『自分の命を犠牲にして、他人の幸せを願うの? どうして』

『彼女の幸せが私の望み。私とローズ、そして女神よ、あなたと出会えたこともなにかの縁だ』



 ぎゅっと強く両手を握り、ノアはやはり微笑んでいた。




『頼んだよ黒百合。あなたの力を正しく使っておくれ』




 思い出せば、同情した私が悪かったのか。

 人間たちの争いに手を貸した私が。


 

 どうして、争うのか。


 どうして生まれた土地で満足して、与えられたものに満足して暮らせないのか。


 どうして他のひとを求めるのか。




 


 リリーの机の上に本があった。

 しおりを挟んだページには、惚れ薬のレシピが載っている。


(これは……)


 見たことがある、そのページ。そう、それは私が教えてやったものだ。


(ローズったら、書き残しておいたのね)


 なんて、よく似た祖母と孫だろう。

 ノアが引っ掛かる理由がわかった気がした。





 もう一度、会ったら……ノアはこの子を連れ去ってしまうのではないか。

 もし、そんなことになったら。





 ローズは泣くだろうか。


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