第20話 決断
覚悟を決めるよ
「リリー、ものは相談なんだけど」
「……なに?」
「私の石化を解いてくれない?」
そりゃ、無理だよ。
「私には、そんな魔力ない」
「あるわよ。ユーレイのノアがハッキリ見えたんでしょう? 普通の人間には見えないわ。できるできる」
「でも、おばあちゃんが……怒るよきっと」
うーん、と考える振りをして、トレニアが言った。
「一回聞いてみたらどう? リリーのおばあちゃんだって、許してくれるかもしれない」「どうだか。第一、ノアのことはケロっと忘れて、他の男とくっついたんだから」
「……」
でも、だから私がここにいるのよね……。
「リリー、ひとりぼっちで閉じ込められてる私の気持ち、あなたならわかるでしよ?」
白い手を伸ばすと、彼女は私の髪を撫でた。
「ひとりぼっちって辛いわよね。話し相手もいなくて、時間をどうやって潰すかそればかり考えて」
「……」
「リリーには、私がいるわよ」
「アンタは黙ってなさい」
私には、彼女の言い分はわかる。私は学校に馴染めない。トレニア以外に友達はいない。私は、部屋でひとりきり。もっと魔法が使えたら。何か変わるのだろうか。少しは、自信を持てるようになるだろうか。
「待ちなよ! 彼女は精霊だ、制御できるとは思えない。私たちの手に負える相手じゃない」
その通りだね。トレニアはいつも正しい。
「リリー、あなたはどうしたい?」
「……」
「アナタの望みはなに?」
学校に行きたい? ドレスを着たい? ノア様のそばにいたい?
違う。
変わりたい。今の自分から。いつもすぐに諦めてしまう性格に、一番うんざりしているのは、私。こんな自分じゃダメだってことわかってる。『精霊』なら……。どうすればいいか、きっと教えてくれる。
「私を連れて行きなさい」
「私を守ってくれるなら」
「それがあなたの望みなら」
彼女の石化した部分に手を当てる。それだけで良かった。地上へ出ると、黒百合の女神は噴水を元通りに直した。
「……ねえ」
「トレニア? どうしたの?」
「リリーは、私より黒百合と一緒がいいんだね」
眉間にしわを寄せて、彼女をにらみつけた。初めてみる表情を前に、まずいと思ったが仕方ない。
「リリーに扱えるとは思えないわ」
「……私も、思ってないよ」
「なんで? 私、止めたよね」
「力の使い方を教えてくれたわ。……魔法を使えるようになるチャンスなの。彼女はきっと教えてくれる」
「私たち、一緒にやってきたよね? リリー、城に行ってから変わった」
なんでもできるトレニアには、きっと、わからない。
「……やるべき時に、やるべきことをするのが大切なんだって。ノア様が言ってたの。私も、変わりたい。なんでも自分でできるようになりたいんだよ。わかって」
いつまでも、へなちょこリリーじゃいられない。寂しさとか嫉妬とか、そういうものを隠してた。誰かと、いつも比べて。
強くなりたい。
「頑張らせて」
「……」
帰ろうとしたトレニアを、「待ちなさい」と黒百合が引き止めた。
「ガキと猫だけで帰すわけに行かないわ。ついてきなさい」




