第13話 夢の中
……ふわふわする。
ほうきに乗って飛んでる。
私……空を飛んでいた。
いつから魔法が使えるようになったんだろう。
「そうか夢か……」
そうでもなきゃ、私が飛べるはずないもの。
夢の中とはいえ、頬で風を受けるのは気持ちいい。
眼下に、城が見えてきた。
あのバラ園だ。
私がよく似た子が泣いている。
長い赤毛。黒いワンピースを着ている。
『ノア様……どうして』
真ん中に深い穴が掘られている。
その中に眠っているのは……。
ノア様。
「どうして!?」
私は空から、ノア様に土がかけられているのを見ていた。
体が、すーっと、城から離れた。
■
あれは、ラウネルの村。
激しい怒鳴り声が聞こえた。あの女の子と、知らない美女。
『黒百合、あんたどうして、どうしてあんなことを言ったのよ!!』
『私は、お前の望む答えを教えてやっただけ。敵を国に侵入させないためにどうすればいいか、と』
『ノア様を人柱にするなんて……!』
『あの子が望んだことよ。希望者を人柱にするのが最も良い。そうすれば、この森を迷いの森に変えて、侵入者から国を守れる』
彼の、望み?
『ノア様は、この国の将来に必要な人なんだ』
『ノアが人柱にならなければ、明日にでもこの国は滅びる』
長い黒髪の美女は、薄ら笑いを浮かべている。
『ローズ。私が決めたことだ』
あの女の子の前に、音もなくノア様が現れた。
ローズ?
『でも、ノア様、あなたが死んだら……』
『この国を守るんだ。君にしか頼めない。黒百合の女神の守護を持つ君にしか』
……あの黒髪の美女のことらしい。
『君にしかできないこと。君がやるべきことなんだ』
私の命を使って、この国を守れと彼は繰り返し説得している。
『永遠の闇なんてない。肉体が滅びても、必ずめぐり合える』
『そんな保障どこにもない、私は嫌よ、どうして死なないといけないの』
『私は世界中で君だけを守りたい』
彼らの会話が遠くなり、私はまたバラ園に戻ってきた。
『黒百合の女神。私の力で戦を終わらせる』
『本当にいいんだね』
『戦いを終わらせるんだ』
黒い髪の美女。
黒百合と呼ばれていた。
……やめて。
やめてよ。
お願い、ノア様を殺さないで!
『私の力によって、ノア、あなたの魂はこの城に留まり、永遠にラウネルを守る森となる』
「やめてーーーーーー!!」
■
私の声は届かない。
彼が倒れ、泣き叫ぶ少女の声が、途切れて消えた。




