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【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
第三章 雨の古城
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第12話 約束

■ 約束


「私の……望み?」

 繰り返し問いかけられても、何もない。

 つまんない子だと思われるかな。

「リリー、ひとつだけ魔法を教えてあげよう」

「教えてもらったって使えない」

「まあ、そう言わずに、簡単な魔法だから、練習してごらん」


 どこからともなく、ノア様は石を取り出した。

 ゴツゴツした紫色の石だ。


「アメジストの原石さ。これをあげよう」

「私に?」

「ああ。これは、君のイメージ通りの形にすることができる。例えば、こんな風に」


 ノア様が握り締めて、また手を開くと。

 ただの石ころが、バラの形に変わった。


「わあ……!」

「心の中で想像して、そして命令するんだ。『変われ』って」

「呪文は?」

「そんなものはいらない。本当の魔法に長い呪文はいらないのさ。ただ、命令するだけでいい。さ、やってごらん」


 あたしは、ただの石ころに戻ったそれを握り締めて、ハートの形をイメージした。

 ……が、変化はない。


「……やっぱり」

「1回で諦めることないさ。1回でだめなら、100回やってごらん」

「今まで、何回練習しても、魔法は使えなかった」

「次はできるよ。チェーンだけつけてあげよう」


 ノア様は、すぐに、石ころにシルバーのチェーンをつけた。


「これで、あとは、石を好きな形に変えるだけでいい」

「本当に出来るの……?」

「私の言葉を疑っているようだね」





「じゃあ、信じられるように、今だけ見本だよ」


 もう一度、バラの形に変えてくれた。


「おかしい。なんで出来るの」

「これが魔法だよ。君には、こっちのほうが似合うかな」


 もう一度、軽く石を握りしめる。今度は、丸みを帯びたハート型になった。


「……かわいい」

「うまくできたら、またおいで」


 また?


「……それまで、来ちゃダメなの?」

「やるべき時にやるべきことをするのが、大切なんだよリリー」


 自分を信じることは、自分にしかできない。

 魔法を使うための最低条件だと彼は言った。


「君は原石。自分で磨くんだ」

「……」

「魔法は誰にでも使える。その力は誰にだってあるんだ」


 なりたい自分になるのに、努力を惜しんではいけないよと彼は微笑んだ。

 説教なんてまっぴらと思っていたけれど、この人は、真摯に私に向き合おうとしている。

「君にしかできないこと。君がやるべきことなんだ」


 私はうなづいて、指切りをした。

 二人だけの約束、と囁いた。

「……わかった。リリー、待ってる」

 ……誰かと指切りを約束するなんて、いつ以来だろう。


「ちゃんと練習するんだよ。ハート型になるまで、諦めちゃいけないよ」

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