2話
白い町に再びクロノが姿を現した。
クロノが徘徊するまえにシロは捕獲していた。
シロはクロノに興味を抱くことはなく、口にもって持っていき、ペロリと平らげてしまった。その豪快な食いっぷりにそれを見ていた使い魔がおいしそうに見つめていた。
「あれ? どうしたの」
おいしそうに食べ終わったシロに言葉は通じないけど、その味を自分も味わってみたいと感情で表現した。けれど、シロはそれに気づかず、「今日は西に行ってくるね」といいつけ、使い魔を連れずにそのまま外へ駆け出してしまった。
白い町には外からの攻撃に耐えるかのように防壁が白い町を覆うように造られている。
ただ、この防壁こそ何の意味で造られたのか理由はわからない。
なぜなら、クロノは防壁の中でも普通に出現するからである。この島にはモンスターという人間を襲うような狂暴はいない。そもそも、この島にはシロと使い魔が白い町に暮らしているだけである。
それ以外の場所でシロ以外の人を見かけたことはないのである。
そんなシロをいつも見ていた使い魔のリサは、シロに心配をしていた。
この島ではシロ以外に人型はいない。いるとすればクロノという影に生きるものだけである。
もし、シロに何かがあれば、我らの力で助けることができるのであろうか…。
「こんにちは~、イズミさん」
明るく声をかけたのは泉そのものにだ。この泉は遺跡からつながって流れてきた水によって注がれており、イズミ自体が減ることも枯れることもない。この水はどこから流れ、どうやって泉さんに生命を与えているのかは不明である。
「はいはい、こんにちはシロさん。今日は何の用事かい」
イズミは尋ねた。特に用事があった訳でなく、気軽に遊びに来て話しかけただけのシロだったが、『用事』という言葉にかけられたのなら、用事を言ってもかまわないのではないかと思った。
「あー…実はですね、イズミさんの水を少し分けてもらいませんか」
「え!?」
イズミさんの水をもらうとは生命であるイズミさんの命そのものをもらうという意味合いになる。これは、別の意味で捉えれば殺しにかかるような意味合いとなる。
特に用事もなかったわけだ。イズミさんはとても困った表情で「それは…う~ん」と、悩んでいるようだった。この水はどこからきてどこへ去っていくのかわからない。一滴だけなら大丈夫なのかどうか疑問だが、イズミさんは困り果てた顔で「シロさんの願いであってもそれはできかねません」と、丁重に断られた。
まあ、当たり前である。
「そうか…」
残念そうに落ち込むシロを見て、イズミさんは困ってしまう。イズミさん自身の命でもあるため、それをどんな理由であっても渡せないからである。だけど、落ち込むシロさんの様子を見て、意を決心した。
「ええっと…、ではでは、私の水を差し上げることはできませんが、代わりと言っては何ですが、この水が流れ落ちていく先であればかまいませんよ」
と、シロは再び顔を上げて喜びに満ちた明るい表情に変わった。
まあ、これで良かったのかわからないが、シロさんはイズミさんの指先の先にある水が流れている場所へ案内してもらい、そこでコップ一杯分の水をもらった。
結局、この日はこの体験だけで終わらせてしまったが、シロにとっては楽しい思い出となった。なによりもイズミさんとの交流も深まった。




