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1話

 白い町に探索しに出かける一人の若い少年がいた。

 少年の名はシロ。誰にもよばれることはなく、ただ白い町の生まれからしてシロと名乗っただけの名前だった。

『△×?○!☆△』

「うん、そうだよ。だから遅くなるから」

『◇○○!☆♯?』

「わかっているって」

 少年は明るく返事した。その声の主はどこの誰なのかわからないが、シロにはわかっているようだった。

(今日、行くのは東のほうまで行ってみようかな)

 東の方。白い町が点在する一方で、東の方には緑だけでなく紫、赤、白といった様々な色を持ち合わせた草木が広がる森がある。今日は、そこにいこうというのだ。

 シロはどこか楽しみそうでウキウキな気持ちで東の森へ駆け出していった。


 白い町の東にある大きな森。最初は気が付かなかった。

 朝方以外には濃い霧に覆われてしまい、立ち入ることさえ道が分からなくなってしまうほど恐ろしい森へと変貌する。この森へ立ち入るときは朝だけにしている。

 この森は晴れている間は美しいのだが、霧が生えると一層不気味に姿を変えることからして、シロはこの森に“キミヲヨブ”と名付けた。

 迷わせ、誘っているかのように霧を立ちこませる森。という意味をつけてこの名にした。

 この森は明るいうちであれば、キノコや木の実といった森に与えられた恩恵を受けることができる。また、食料関係もあってこの森に立ち入る理由でもある。

「今日は、木の実だけにしておこう」

 シロはそう決めた。

 この森にはなぜか木の実が年中とれるという不思議な木が存在する。その木から木の実をもらうというのだ。

 シロはその木に会いに駆け出す。

 その木はとても臆病で寝坊助、なによりも寝ることが好きで、寝ている間は実を作ってくれない。けれど、起きていれば、木の実を作ってくれる心優しい木なのである。


「キミさん! おはよう!!」

 キミさん。この名もシロが考えた名前である。木の実を落としてくれる優しい木という部分から名前をとった。シロはだれにそう呼んでもらうわけでもないのに、自分と対等のように接し、話しかける。

 そんな日常がシロの日常なのである。

『おおう、おはよう。おや、今日も木の実かい』

「そうだよ。今日のクロノは対峙しておくから」

『わかったよ。1時間後までには木の実を分けてあげるね。それまでにクロノを討滅しておいてね』

「うん、わかった」

 シロはそういうなり、キミさんよりも奥にある遺跡に向かって走り出した。

 この遺跡にはよくクロノが出現する。

 意図としてなのか偶然なのかはわからない。

 ただ、シロはクロノを倒すだけ。それで恩恵を受け取れるならいいと思っている。

”シロは目が覚めた時から優しいから。”


 黒い影が満ちるとき、その者は姿を現す。

 暗い闇の底から生れ落ち、自身が何者か理解する前に空腹で苦しむ。光に照らされた害虫を見かけるなり空腹となった自信を満たすために光に襲い掛かる。

 ガキンと剣同士が弾く音が鳴る。

 シロは70センチ程度の長さの剣を持ち構え、クロノに向かって切り込む。

 クロノは生まれたばかりの赤子のようなもの。抵抗することもできず、自身が何者でなぜそこにいるのかもわからず、シロの薙ぎ払う斬撃にその意味を問うことなく崩れ去る。

 崩れ去るとき、そのクロノはシロに聞こえているのかわからない。ただ一言だけ囁いた。その囁いた言葉はシロの口によって食われ、あとがたもなくなるほどかみ砕かれた。

 シロにとっての食事はクロノを喰うこと。クロノが唯一の食糧のようなもの。シロは常に空腹ではない。クロノと比べれば1週間は生きていけるだろう。

 だが、シロは食べれるときには食べる。クロノを倒す依頼があれば、倒し食う。シロはただ、生きるためにそのような行動に出ていた。

 シロもクロノも自身の価値や存在の意味も知らないまま、食うか食われるかの争い事だ。

 木の実はシロに従う忠誠心が好い使い魔用の食糧である。クロノと戦うほどの力はないが、シロにとって大切な友人でもあるからだ。

 クロノを討伐後、シロはキミさんに討伐したことを報告し、安全を交わした。

 キミさんからお礼をもらい、シロは一人で白い町に向かって走った。

「ばいばい」

 キミさんは手を振るほどの力も腕もない。心の底でサヨナラという意味を込めてシロの背中を見送った。


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